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春の福島歴史・文化短訪

A福島市の花見山

青山貞一 池田こみち
掲載月日:2012年5月4日
 独立系メディア E−wave Tokyo


 2012年のGW中の5月1日〜3日、今年に入ってはじめて福島県内の放射線測定調査を敢行した。 放射線測定の前後、合間の限られて時間ではあったが、福島県内の歴史、文化を探訪した。

 昨年12月末は、会津若松、西会津、南会津の放射線測定を行い、会津若松では若松城、茶室麟閣を探訪した。 今回は、@三春町の滝桜、A福島市の花見山公園、B会津若松市の飯盛山(白虎隊自刃の地)、C福島県立博物館、D下郷町の大内宿の5カ所である。

●福島市の花見山公園

 5月2日、二カ所目は、放射線測定で訪問した福島市渡利地区にある花見山である。花見山公園は、福島県福島市にある花卉園芸農家の私有地の名称である。

 福島市の県庁や市役所などがある中心市街地から南東、阿武隈川右岸の渡利地区の丘陵地中腹に位置している。

 所有者が公園として市民に無料開放しており、特に春の花見シーズンには、多くの観光客を集めている。当園周辺の農家も花卉園芸を行っており、地区一帯で花が咲き誇るため、「花見山」は地区全体の総称としても使用されている。

 花見山公園については、青山淑子(青山貞一の妻)が友人と数年前に花見に出かけており、何度となくそのすばらしさについて聞いていた。

 花見山に桜の開花時期に行けば、下の写真にあるように里山一面に桜が咲き乱れる、桃源郷のようなすばらしい自然景観が堪能できる。


福島市の花見山公園一帯 撮影:青山淑子 Nikon CoolPix 


福島市の花見山公園にて 提供:青山淑子 


福島市の花見山公園にて 提供:青山淑子 


福島市の花見山公園の桜
出典:Wikipedia


福島市の花見山公園にて 提供:青山淑子


福島市の花見山公園一帯 撮影:青山淑子 Nikon CoolPix 


福島市の花見山公園から見た福島市街の信夫山
出典:Wikipedia

 しかし、残念ながらも2012年5月2日は、この花見山公園も三春滝桜同様、すでに開花が終わっていた。花見山は下の写真のように一面がみどり(葉桜)だった!


福島市の花見山地区一帯
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2012.5.2

◆花見山公園

 福島盆地の東縁を形成する阿武隈高地に、阿武隈川支流のくるみ川が形成した小規模な谷底平野があり、くるみ川本流とその支流の鈴ヶ入川に挟まれて樹枝状丘陵が張り出している。その丘陵先端部の標高約110mから約180mに花見山公園は位置する。

 集落がある谷底平野に立つと、くるみ川流出部の殿上山(春日山)も含め周囲はぐるりと丘陵に囲まれ、その到る所で花卉園芸が営まれている。


撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2012.5.2

 春には、切花出荷用の東海桜を初め、梅、桃、ソメイヨシノ、レンギョウ、ボケ、サンシュユ、モクレンそしてツバキ等が当園のみならず地区一帯に咲き誇る。そのさまを写真家の秋山庄太郎は「福島に桃源郷あり」と形容し、毎年訪れた。春以外ではロウバイも冬季に見頃を迎える。

 観光客の増加により、4月初旬から下旬まで一般車両の進入規制が行われるようになり、一般車両駐車場とを結ぶシャトルバスのバス停および観光バス駐車場が設置された。

 観光バス駐車場周辺にはシーズン中に出店も設置される。観光バス駐車場と当園との間は約800m(徒歩10分)あり、ウォーキングトレイル事業によって地区内に遊歩道が整備され、地区内を流れる川の護岸工事も行われた。

出典:Wikipedia

 とはいえ、今回の主目的は福島市渡利地区の空間放射線量の測定にあるので、花見山公園の各所で放射線量の測定を行った。


花見山公園は桜の名所、すばらしい里山景観だが放射線量は高い
撮影:池田こみち Nikon CoolPix S8 2012.5.2


花見山公園は桜の名所だが庭園風景も秀逸だ
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2012.5.2


福島市の花見山地区にて 撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2012.5.2


福島市の花見山地区にて 撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2012.5.2


福島市の花見山地区にて 撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2012.5.2


◆東日本大震災・福島第一原発事故と花見山公園

 2011年(平成23年)3月6日(日)には3,500人以上の観光客が訪れ、花見シーズンは順調に始まったが、3月11日(金)に東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生。

 花見山公園では一部の斜面が崩れただけで大きな被害はなかったが、同地震に伴う津波で福島第一原子力発電所事故が発生し、3月12日に1号機で水素爆発が起きると3月13日(日)の観光客数は100人以下に落ち込んだ。

 さらに3月15日早朝に2号機と4号機で爆発が起きると、直線距離で約60km離れた福島市にも影響が及び、環境放射線量は同日夕方から著しく増加して18時から19時台に24μGy/hに達し、その後減衰した。

 3月27日(日)の観光客数も285人と、例年と比べて著明に少なくなった。一方で、震災によるイベント自粛の趨勢もあり、花見山観光振興協議会はシャトルバスの運行やボランティアによるガイド、ポスター掲示などの中止を決定した。

 4月6日、福島県が実施した調査で、渡利地区の環境放射線量が4〜5μSv/hと高いことが判明し、当地区が放射能汚染の「ホットスポット」として徐々に報道されるようになった。

 地震・津波の被災地以外でも花見を自粛すべきという意見と、花見での飲食が被災地の復興支援になるという意見がマスメディアを通じて紹介される中、サクラの満開が近付くと観光客が集まりだし、4月16日(土)には約7,500人、翌17日(日)には1万2千人が来園。

 シャトルバス運行中止の影響で420台分の駐車場は午前中で満車になり、駐車待ちの車列により最大5kmに達する渋滞が発生する事態となった。予想外の事態に、被災者や避難者の支援のためのボランティア活動をしていた「NPO花見山を守る会」は、その合間を縫って4月19日に花見山の除染作業を実施し、観光客の被曝を少しでも減らす努力をした。結果的に花見シーズンの観光客数は、昨年の1/3以下とはいえ、9万4000人にのぼった。

参考:Wikipedia

●花見山公園の放射線量

 福島市は福島第一原発から60km以上離れているにもかかわらず、地形、気象、地表面状況などの関係から空間放射線量が依然として高い。

 以下に示す放射線の濃度分布図は今回の調査データをもどに解析して作成したものであるが、とりわけ花見山がある地区(地図中下の黄色、橙色、赤色、紫色)の放射線量は高い。

 下図は地上1mの高さで測定した値をもとに解析しているが、地表面(地面から5cm)で測定すると、1mの値より1.5倍から2倍近く高かった。


図1  スプライン補間法による福島市中心部の放射線濃度分布の分析結果
    下の高濃度(紫、赤、橙)が渡利地区の弁天山、浜見山地区 
    単位:μSv/h
    現地測定:青山貞一、池田こみちが2012年5月2日に現地測定
    解析:青山貞一、鷹取敦、環境総合研究所Super Geigerで解析

◆花見山公園の放射線量測定値 2012年5月2日 曇り、小雨

 地上1mで 1.20〜1.50μSv/h、
 地表面 で 2.02〜2.60μSv/h

 測定:青山貞一、池田こみち 環境総合研究所

 
つづく