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昨年秋、中央大学の研究所で開催された講演会によばれたとき、私の後に講演された朝日新聞 元経済部長で「東電帝国―その失敗の本質」(文春新書)の著者でもある志村 嘉一郎 氏は東京電力が多額の交際費などの資金でマスコミ、大学研究者等を接待漬けとしている実態を赤裸々に話されていた。 ◆中央大学研究所:公開講演会 3.11複合災害と日本の課題 講演の段階でもかなり個別具体に記者にいかに接待したか、大学研究者に研究費を寄付していたかを話していた。 講演会終了後、大学近くで食事した際は、講演会で話されなかったすさまじい実態を話され、その場に居合わせた私や法学部教授ら一同は本当に仰天させられた。私もあちこちでこの種の話は聞くが、それらは伝聞に次ぐ伝聞であり、志村氏のように現場に居合わせた大新聞の部長の口から出た話は格段にリアリティがあるからだ。 後日、大学の同僚に話したら、志村さんの東電帝国を読むと、どうみても虎穴にいらずんば孤児を得ずのたとえの通り、志村さんはかなり電力業界に足を踏み込んでしまったところもあるようだが、朝日新聞退任後、東電や電気事業者だけでなく、日本のメディア、マスコミが如何に広告費だけでなく、巨額の営業、接待費によって報道がゆがめられて来たかを辛辣に世に問うたわけでり、立派だと思う。 私は仮に志村氏が、虎穴にいらずんば虎児を得ずで虎穴に入って行き、彼自身がかなり東電の接待などを受けていたとしても、事故後、記者、デスク、部長時代に書けなかった実態を赤裸々に暴露することはジャーナリストとしてよいことだと思っている。 志村氏はいつでも呼ばれれば知っていることを何でもお話ししたいと言っていたこともあり、そのうちぜひ、お話を伺いたいと思っていた。 志村氏は講演会の冒頭、興味深いことを話してくれた。それは3.11により福島第一原発事故が起きたあと、東電帝国のエッセンスを朝日新聞の私の主張的な欄に投稿したが、朝日新聞社から掲載を断られたいきさつについてである。 周知のように、朝日新聞に限らず新聞、テレビなどの大メディアは、福島原発事故が起きる前までは、個々の電力会社、電事連、原子力産業会議などの電力業界社から多額の広告収入を得ていた。 その結果、たとえば諸外国で深刻な原発事故やイギリスの核廃棄物再処理工場事故で大量のプルトニウムが海に流出した際に、地元英国のマスコミはもとより、欧米のマスコミが一面トップでそれを報じたにもかかわらず、日本では通信社がベタ記事でほんのちょっと報じただけだった。 スウェーデンの原発が事故を起こした際も、欧米のメディアは結構大きく報じていたが、日本のマスコミはまったく報じていなかった。 ..... ところで、今年に入って飯田哲也さんが言う原子力村あるいは私たちが言うところの政官業学報ペンタゴンのなかでの個別具体の金銭授受が日本のマスコミを賑わすことになってきた。
上記の記事を見ると、もらって何が悪いかと開き直っているふしがあり、あきれてものが言えない。 私も大学人だが、今回の話は、研究費を企業一般からもらう話とは全く違う。仮に委員就任前であれ、その種の委員会にかかわることがあり得る教授は、審査対象となる関連企業からのいかなる献金を受けてはならないだろう。
HIV事件がきっかけとなり文部科学省の科学研究費を受ける大学研究者等に対し、やっと「利益相反」に関わる情報が公開されるようになってきた。これは医療、医学、薬学分野で問題が発生したのがきっかけだが、原発分野でも同じである。 研究費をもらう電力会社、原発関連メーカーから研究費や補助、助成金を得ている研究者が原発関連の審議、審査、委員会、検討会などに関与するのは明らかに大問題である。 私の手元にも、かなり以前だが「利益相反」関連確認調査書が来ていたが、たとえばある都市再開発業者から研究費補助を受けている研究者が、その業者が事業者となって建築される高層ビルの環境アセスメントの審査委員になっていたら、どうみてもおかしいわけだ。 しかし、文部科学省などがこんな基本的なことを従来、研究者にまともに問うていなかったことも大問題である。 そもそも、委員あるいは委員長就任以前のことだというがおかしい。委員を任命する側は、過去に関連業界からいかなる理由があれ資金供与を受けている研究者は、委員を任命してはいけない。 たとえば、私が日隅一雄弁護士と共著でだした「審議会革命〜英国の公職任命コミッショナー制度に学ぶ」では、利益相反問題を中心に、独立行政法人の所長や幹部、国の委員会などの委員の専任に際し、コミッショナーが徹底的にその人物の素性を調査し、情報をすべて公表している。 以下はその任命手順である。 1 公職任命コミッショナー(Commissioner for Public Appointments) 審議会、諮問委員会、特殊法人などの公的機関の代表者や役員を大臣が任命する際、選任が実力本位で公正に行われるように監督する職務を行う。 2 コミッショナーの下での公職選任手順 (1)公募 (2)確定した採用基準に沿った人選 (3)公募から面接までの全てのプロセスへの「独立した査定者」 ※(第三者)の関与(※コミッショナーなどによって厳正に公募採用され、必要な訓練を受けた人) (4)主要な手続きの全てを記録に残し、情報公開・監査に堪える公明さを確保する。 (5)通算任期など長期化防止策 (6)任命手続き終了後、手続きが適正であったかチェックする「独立した監査者」(第三者)による監査 日本はどうだろう。 この種の委員選任はほとんどすべて官僚など行政機関、それも事業を推進する省庁の官僚の裁量で選定している。国会承認の場合でも、形だけとなってきた。 英国であれば絶対、今委員となっている研究者の大部分は委員に選任されないだろう! こんな甘い倫理観の研究者とそれを選ぶ官僚が跋扈している限り、いくら委員会の所管を環境省に移してもまったく状況は変わらないと断言できる。しかも、500人規模とか言っているが、この種の問題を改革せず、焼け太り的に人員を増やしても意味がないし税金の無駄遣いである! 以下は、審議会革命の青山貞一のあとがきである。
◆NPJ編集長 日隅一雄:連続対談企画〜無制限10本勝負 |