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<現地報告>ワシントンDC
環境法・政策奮闘記(6)

池田こみち 
環境総合研究所副所長
3 July 2010
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載金

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米国連邦最高裁判所訪問記

 一週間お疲れさまでした。最終日も無事に終わりました。

 今朝(金曜)も九時にEPAを訪問、総合的な質疑応答とともにNY市ハドソン川流域で発生した電池工場による大規模なカドミウム汚染現場のSUPER FUNDによる浄化修復の事例について学びました。

 質疑ではブッシュ政権のもとで中止された石油業界と化学業界へのファンドのための課税がオバマ政権のもとで再開される見通しがどうかという点に関心が集まりました。

 今日紹介されたSUPER FUND関連の事例は150年前に遡る米軍へ補給する武器(大砲、弾丸等)の鋳造工場ならびに大規模な電池の製造を行ってきた施設からの深刻な土壌および底質のカドミウム汚染で最大濃度は30%にも及んだと言います。

 この地域は米軍施設の歴史保全地区であるとともにハドソン川につらなる湿地はには希少種のチョウザメも生息する自然環境保全地域(サンクチュアリ)に指定されていることから湿地の水を一旦吐き出し汚染された底質を除去して非汚染土壌に入れ換え水性植物を植え直すという大規模な浄化作業が行われました。

 流域の高級住宅に住む住民からは全量撤去封じ込め等の要望も出されましたが、湿地の生態系や景観の再生修復が自然保護団体NGOから強く求められ、膨大な時間と費用をかけて浄化と自然の回復を行ったものです。

 費用はすべて米軍が負担しました。最終段階で電池を製造していたのは民間企業でしたが、すべてが軍需であったために軍、すなわち国の負担となったわけです。

 SUPER FUNDのもとでのNPL(National Priority List)からの指定も外れ今では浄化された土地として一部は売りに出されています。農地などには不適ですが住宅地などの利用には問題ないとのことです。こうして浄化された土地が売れれば税収にも繋がるし、経済の活性化の点からも好ましいことですとし、土地購入者には政府の保証も付くとのことです。

 個別規制法が制定される前に生じたこうした汚染地域を回復浄化するための制度としてSUPER FUNDの制度化が強く求められたという背景があります。

 ということで午前中で公式な調査はすべて終了し、午後からはそれぞれが関心のある博物館を訪問するなどして過ごしました。

 最終日(金曜日)の午前中EPA での質疑応答と事例紹介が終わった後、WalkerさんがEPAのパブリックヒアリングの部屋を見せてくれました。そのとき、演題に立ってみた私と坂本さんの写真です。


EPAの公聴会室にて(池田こみち)
撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10


EPAの公聴会室にて(坂本博之弁護士)
撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10

 私は坂本弁護士らと一緒にホロコースト博物館を訪問、三時間以上かけてじっくり見学しました。二度目の訪問でしたがこの間のAV技術の進歩に伴って展示はかなり充実したものとなっていました。

 独立記念日を前にワシントンDCの街は日本のお盆のお祭り前のような人出と賑わいで盛り上がっています。ともあれ無事に視察を終了できてホットしています。

 池田こみち ワシントンDC

つづく