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本連載のAでは、原廃棄物処分場の範囲、深さ、容量についての問題点を指摘した。 Bでは、20年余にわたって埋め立てられてきた廃棄物による処分場内の汚染がどのような状況となっているか、これまでの調査結果からダイオキシン類にターゲットを絞って見てみることとする。 (3)現処分場の中はどの程度の汚染状況か 美馬市の拝原地区、吉野川の河川敷は、昭和40年代半ば頃から川砂利を採取する場所として民間業者が採石事業を行っていた場所である。 格好の素堀の穴があるということから、昭和49年から平成9年まで周辺市町村の一般廃棄物が埋め立てられてきたばかりでなく、当時の自治体の焼却炉の規模が小さかったことから焼却灰も大量に持ち込まれていた。 そればかりか、管轄区域内の病院・医院のいわゆる医療系産業廃棄物や夜陰に乗じて四国各地から民間事業者の産業廃棄物も大量に持ち込まれ、野焼きされ次々と埋め立てられていったことが関係者のヒアリングや地元住民の話から明らかになっている。 例えば、スリッパや合成皮革の靴類などのメーカーの廃材(塩ビを含むプラスチック材料等)も大量に持ち込まれていたようだ。当時は、こうしたプラスチック類が野焼きされ、真っ赤な炎と煙が遠くからでも目撃され、地元消防が何回も出動する騒ぎもあったという。 昭和61年 野焼きの状況 昭和63年 ごみの状況 平成元年 野焼きの状況 平成元年 野焼きの状況2 出典:昭和61年頃から平成元年の頃の現場写真@〜C (地元住民からの要求に対して美馬環境整備組合が提供したもの) 掘り出された点滴の袋 (池田撮影:2010年11月7日 第3回検討委員会の現場視察時) 平成18年度の調査結果を基本としているが、全体で2haにも及ぶ処分場内に最大20mの深さまで廃棄物が埋まっている可能性があるエリアに対する分析サンプルとしては数が少なく、ごく一部の状況を示すに過ぎないと見るのが妥当である。 【1】廃棄物層 埋め立てられた廃棄物の組成は、生活系廃棄物が大部分とされ、平成18年度調査では、下図のとおり、焼却残渣はわずか0.05%に過ぎない。 ごみの組成(平成18年度調査) 出典:拝原最終処分場適正処理検討委員会報告書 平成18年度美馬市より 池田作成 第4回検討委員会において配布された資料では、可燃ごみ88.48%、不燃ごみ4.18%、鉄0.34%、河川堆積物7%とされている。しかし、先の写真からも明らかなようにプラスチック類の野焼きや焼却灰の搬入が多かったと言われているにもかかわらず、組成には焼却灰などは明示的に含まれていない。 18年度に実施した調査によると、ダイオキシン類の濃度は極めて高く、処分場内4箇所の試掘地点での測定結果は、最高値がC地点:2500pg-TEQ/g、その他、A地点:500pg、B地点:270pg、D地点:67pgとなっている。同族体パターンはPCDFが右肩下がりの焼却由来の特徴を示している。その他には、鉛とホウ素が基準値を超えて微量溶出している程度となっている。 廃棄物処分場埋立廃棄物層のダイオキシン類同族体パターン構成比比較 出典:拝原最終処分場適正処理検討委員会報告書 平成18年度美馬市より池田作成 【2】廃棄物層内保有水(2検体) ダイオキシン類が1.4〜1.5pg-TEQ/L検出されているが、その他は、大腸菌郡数がやや高い以外は特段の汚染が認められていない。 【3】隣接池の水質と底質(3検体) 河川の砂利採掘によって出来た穴に水が溜まり池となったわけだが、その池の底に大量のごみを押し込んできたということがデータからも明らかである。 池の水からは1pgを超えるダイオキシンは検出されなかったが、深層の水からは4.2pg-TEQ/Lが検出されている。 報告書では、排水基準の10pg-TEQ/Lで評価されているが、今では、鯉やブラックバスなどもいて休みの日には釣り人もきている「隣接池」なのだから、本来は環境基準である1.0pg-TEQ/Lで評価するのが妥当ではないかと思う。 一方、底質のダイオキシン類は最大510pg-TEQ/g、その後の調査でも底質の環境基準値である150pg-TEQ/gを超える濃度が検出されている。しかし、事務局が提出した資料は、土壌の基準値である1000pg-TEQ/gで評価され、その点を指摘したところ、「最終的には水を抜くので土壌と同じである」と委員長がコメントされた。 隣接池の様子 隣接池の様子(底質で510pg) 出典:隣接池の写真(池田撮影)2枚 上記のダイオキシン類の測定結果を見ると、当時、処分場に廃棄物を搬入していた関係者の証言が裏付けられている。 すなわち、塩ビを多く含むプラスチック類を野焼きした灰をそのまま埋め立て、さらに、一般廃棄物焼却炉(当時はまだ排ガス処理装置も不十分)の焼却灰を大量に持ち込んでいたことから、処分場内には常に高濃度のダイオキシンを含む灰が拡散し、地下水などで洗われ、廃棄物層を浸透して隣接池にも浸出していたことがうかがえる。 灰は土壌より比重が重いため、池では底部の深いところに沈積している可能性も高い。 総じて、当該処分場の廃棄物は極めて嫌気的に密封された状態となっているため、廃棄物の分解はほとんど進んでおらず、段ボールや食品容器、点滴の袋などもほぼそのままの状態で掘り出されている。 また、廃棄物層には大量の生ごみも持ち込まれていることから、孔内発生ガス調査ではメタンが最大29%、硫化水素が最大16ppm検出され、なおかつ孔内の温度も深くなるほど高温となるなど、深層ほど安定化が進んでいないことが明らかとなっている。 汚染物質はダイオキシン類だけではないため、今後も慎重に現処分場の汚染実態を把握していく必要があるが、高濃度のダイオキシンを含む灰混じりの安定化していない廃棄物を吉野川に接した水田に新設する管理型処分場に移設することが果たして物理的、化学的かつ経済的、社会的に正当化されるのかどうか、慎重な議論が必要であることは言を待たない。 @で述べたように、既に吉野川への汚染の流出が認められる状況であるからである。 つづく |