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瓦礫の広域処理への反発は
NIMBYか!?

池田こみち  
環境総合研究所副所長

掲載月日:2012年2月7日
 独立系メディア E−wave


 2012年2月5日(日)の深夜、偶然、BS日テレで『日本社会の向かうべき道〜大震災からの復興をめざして〜』をテーマにしたをパネルディスカッションの番組にチャンネルをあわせた。

 円ドルの為替レートがまもなく50円/ドルまで高騰するという持論を展開している浜矩子氏の基調講演が終わったあとのパネルディスカッションだ。この講演会、シンポジウムそのものは、2011年の秋頃に行われたものらしいが。

 パネリストは、浜矩子(同志社大学院教授)、植田和弘(京都大学院教授)、広井良典(千葉大学教授)、大塚耕平(民主党参院議員)の面々である。

 コーディネータのNHK解説委員今井純子さんが最初に指名したのが大塚耕平氏。

 眠くなりかけていたが、大塚氏の言葉を聞いて眠気が吹っ飛んだというより、怒りがこみ上げて目が覚めてしまった。なんと、「日本には今、“NIMBY Syndrome”が蔓延しておりそこからの脱却が必要だ」と切り出したのだ。つまり、瓦礫の受入を各地で拒否していることをさしてのことだ。それに答えて、浜矩子氏は、「まったく仰るとおり。私は、NIMBYのNをY、P、Wと置き換えて、Yes in my backyard, Please in my backyard, Welcome in my backyard こそ大切で、一日一回実践すべきだと思う」と発言。

 浜氏は、この間、一貫して1ドル50円時代の到来を主張し続ける独自の分析力、経済見通しが他の経済学者とは一線を画す人物だが、この発言は頂けない。災害廃棄物の広域処理が各地で地元の受入拒否にあって進まない現状を批判しているのだとしたら、とんでもない不見識と言われても仕方がない。

 福島県内の瓦礫だけでなく、岩手、宮城の災害瓦礫であれ、それを東京など首都圏ばかりでなくさらには関西地方の自治体まで広域で処理しようとすることの必要性、環境的・経済的・社会的妥当性、さらに、そのことを決定したプロセスの正当性のいずれの観点から見ても、合理性がないのであり、トップダウンで受入を一方的に強要される地元が反発するのは当然のことであり、権利なのだ。

 大塚氏は民主党政権の下で進めている政策だからそれを是としているのかもしれないが意思決定手続きですら自民党時代以上に正当性のないもので、政策を無理強いするのはやめてほしい。また、浜氏については、専門外のことについて、安易な発言はやめてほしい。

 災害瓦礫の広域処理に伴う環境面からの問題点をどれほど理解しての発言なの か、ウケを狙うのもよいが、影響力のある方の発言はそれだけが一人歩きして 問題をさらに混乱させることにもなりかねない。

<私たちの分析と提案>
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