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2010年4月10日(土) 14:00〜16:30 東京都西東京市で「生ごみで花いっぱいの街作り〜生ごみ100%資源化をめざすプロジェクト発足会〜」が開催された。池田、鷹取が参加したので以下にメモをもとに概要を紹介したい。 生ごみ100%資源化をめざすプロジェクト 発足記念講演会参加記 環境総合研究所 池田こみち 鷹取 敦 東京では好天に恵まれた土曜日、最後の桜が楽しめる日和だったが、私たちは標記講演会に参加しすっかり元気になって帰ってきた。 ごみは出るから処分する、そのために何はともあれ、「燃える」か「燃えないか」で分ける、といった前世紀的な考え方から脱し、脱焼却に向かう大きな弾みとなる集会だったからである。 私たちが日々「有り難がって?」出しているごみの多くは資源である。しかも大都市では50〜60%が生ごみで、れっきとした有機資源であり、その成分の90%が水であるにもかかわらず、800℃〜1000℃の高温で化石燃料をつっこんで燃やし煙と灰にしている。 いかにも馬鹿げた話であり、そのために膨大な税金が煙と灰になっている。いよいよ生ごみをしっかりと資源化していく時が来たのである。今まで焼却炉や溶融炉にばかりつっこんできた技術開発、人材、などを今後は生ごみの資源化、活用に向けていくべきである。 あまり知られていないが、お隣の韓国ではすでにとっくから生ごみを分別資源化している。その割合は焼却されているごみの割合よりも多い。しかし、最近では日本のプラントメーカーの売り込みが激しく、焼却炉がじわじわ増えて来つつあるとのこと。 国の補助金も日本と同様にあるようで先が思いやられる。しかし増えているとはいっても2割を超える程度の量であって、大半を燃やしている日本とは比べものにはならないほど少ない。 なんとか、日本の轍を踏まないように韓国の市民にはがんばってもらいたいと思う。焼却すれば灰が残り、その処理でまた悪循環のように施設や技術に依存して行かざるを得なくなることを肝に銘じておく必要があるからだ。 一方、お二人目の講演者、戸田市の吉田さんからは、行政の担当者、市長がその気になれば、税金を浪費せず、頭を使ってコスト意識を持って市民に喜ばれてビジョンのある廃棄物政策が実現できるという実践例のお話を頂いた。戸田市民になりたいくらいの気分だった。 まさに私たちが何年も前から紹介しているカナダのノバスコシア州と同じ考え方である。地域の経済、雇用の創出に寄与してこそ意味のある廃棄物政策の推進、それが市役所職員に問われているのである。是非、多くの自治体で参考にしていただきたい。 なお、参加者数は約80名である。 ■司会:塩沢加奈子 ■呼びかけ団体からの挨拶:坪井照子(ごみ問題5市連絡会) ごみは減量されてきてはいるが、未だに生ごみの50%が可燃ごみに入っている。次に手を付けるべきは生ごみ。微生物でごみを無くす、あるいはもっといいシステムができないか考えていこうというのがこのプロジェクトの目的。戸田市の吉田さんの話、韓国の話、みなさんの意見をうかがいながら、元気を出してヒントをいただいて頑張っていきたい。 ■司会: 西東京市長からメッセージをいただいているのでご紹介したい。「生ごみ100%資源化を目指すプロジェクト発足会の開催に際し心からお慶びを申し上げます。市民の皆様の力により今後生ごみで花いっぱいのまちづくりが推進されることを心より期待しお祝いの言葉とさせていただきます。 平成22年4月8日西東京市長 坂口光治」 ■プロジェクトの経過報告:青木泰 なぜ戸田市の吉田さんに生ごみで花いっぱいの街作りのお話しをいただくのか、韓国の生ごみの事情を鄭さんにお話しいただくのか説明したい。 今回の呼びかけのきっかけは大きく3つある。 西東京は柳泉園組合でごみを燃やしている。柳泉園組合では廃プラのリサイクルに取り組みはじめたため、燃やされているごみの60%は生ごみとなった。私たち自身は十数年前から焼却炉建設反対に取り組み、建設後はプラスチックを燃やさないように、ごみの減量化を図るように取り組んできた。今度はいよいよ生ごみを資源化しよう、そうすれば焼却施設でも燃やすものが無くなってくるという段階になった。 もう1つは小金井の二枚橋組合で4年前に焼却施設を閉鎖した。焼却施設の閉鎖はいいことだが、ごみを燃やすのをやめたわけではない。焼却施設を建てるのには周辺の住民同意、アセス、都市計画決定等であと10年はかかると言われている。 10年間は他の市町村にお願いすることになる。最初は15市ぐらいで引き受けたが全部断った。八王子、多摩川、三鷹と三多摩を漂流している。小金井は60%が生ごみ。これを全部資源化すれば燃やすことはなくて、国分寺市とどうさらに資源化を進めるか、というところに来ている。生ごみの都市部における資源化を今考えなければならない。 三つ目は立川市の問題。立川市が今の焼却炉を建てる時に小平の周辺住民と15年間経った後は他で焼却するという約束をしていた。その期限が3年前の年末に来たが、立川が他に頼んだら断られた。当然といえば当然。 つまり、都市部は今まで通りにごみを燃やすことが段々出来なくなってきているということ。だから市民団体として生ごみの資源化を考えていこうじゃないかということ。 それではなぜ「生ごみ資源化100%」と言うことにしたか。100%なんて無理という意見もあった。せめて「目指す」と入れたらどうかという意見もある。どの自治体に生ごみの堆肥化、資源化に取り組んでいますかと聞くと、取り組んでいますと回答され場合が多い。しかしこれは市民が生ごみ処理機を購入するのに補助を出したりという取り組みが多い。 しかし、一番大事なのは行政による分別収集。韓国はこれをきちんとやっている。こういう取り組みをしない限りダメ。だから私たちは「生ごみ100%」を目指すものとしてであれ、掲げていこうということ。 日本は生ごみを90%以上燃やしている。日本には焼却施設が世界の三分の二、約1400施設ある。生ごみは90%以上水なので、プラがリサイクルされると 焼却施設ではほとんど水を燃やしていることになるので助燃剤が必要であり、温 暖化、ヒートアイランドに大きな影響がある。 それでは本当に生ごみ100%資源化ができるのか。地方の取り組みをみると 3つの問題を解決して取り組んでいることがわかる。 (1)分別に市民が協力してくれるか。 たとえば栃木県の野木町では15年間分別をしている。新聞紙2枚に生ごみを入れて紙袋に入れて出している。 (2)臭いの問題。 以前は発酵に失敗して周辺で臭いが大変だったことがあるのは事実。水分を調整したり、外に空気を出さない処理装置が開発された。 (3)地元の農家が使ってくれるか。 狭山市がアイディアを出して解決した。市内で一次発酵させて、山梨県にある堆肥化メーカーに運び堆肥となったものを狭山市に「佐山有機」として戻す。そうすると農家が断る理由がなくなる。 一番のポイントは職員に核となってやる人がいるかどうかが重要。いろいろ探してみたところ、戸田市の吉田さんがまさにそういう職員だった。今日はそういう事例をたっぷり聞いていただきたい。 都市部で成功した事例については、韓国の例があった。今日はそこも聞いてい ただきたい。 ■鄭智允(ジョン・ジエン)地方自治総合研究所・特別研究員 早稲田大学の博士課程で7年間に渡り、地方自治、環境政策、ごみ問題について研究。 韓国の生ごみ処理の事情について紹介したい。今日は20分程度なので、概要を説明したい。 韓国がどんな国かについて。たまに大学で話をすると、韓国がどんな国か知らない学生がいる。日本の隣。日本国内より近い場合もある。大韓民国。南と北に分かれている。小さい国。首都はソウル。広域市が6つ。主なところは釜山。私のふるさと。日本の都道府県にあたるのが道。 島が特別自治道がある。日本でいう市町村レベルがない。道レベルでいろんなことができる。軍事、外交以外は道に権限が委譲されて自分たちでできる。成功すれば他の地域に広めていこうと考えているよう。面積は日本の約1/4くらい。とても小さいとも言える。 韓国にいたときは日本がこんなに大きいとは知らなかった。人口は4800万人程度。人口密度はとても高い。その1/4が首都圏に集まっている。 韓国の廃棄物の定義は基本的には日本とほとんど変わらない。生活廃棄物(日本で言う一般廃棄物)と事業者廃棄物(日本で言う産業廃棄物)に分かれている。韓国で現在、大きな問題になっているのは事業者廃棄物。量が多く、建設廃棄物が膨大でそれに取り組もうとしている。生活廃棄物で出来ることは既にかなりやっている。他には指定廃棄物(日本で言う特定管理廃棄物)。 どのくらい発生しているか。生活廃棄物はほとんど増えていない。産業廃棄物は増えている。これを減らさない限り廃棄物全体の量は減らない。ただし生活廃棄物に問題が無いわけではない。 処理をどうやっているのか。「再活用」が増えている(全体の半分以上)。生ごみを減らしている、有料制(袋を買わなければならない)を国全体で導入。「埋め立て」(全体の25%以下)は場所がもう無い。住民の反対がものすごいので新しく埋め立て地を作るのは難しい。一番私が心配なのは「焼却」(埋め立てより少ない)が増えていること。簡単に燃やすという発想になり、農作物を作ってくれた方に対する尊敬が薄れてくる。 日本と韓国の比較。韓国は1996年がピークだったが有料制を導入して減ってきた。その後、徐々にまた増えている。市民団体は次になにかしなければとの意識を持っている。一方日本は2000年をピークにして下がってはいるが、一人あたりは1.1kg/人・日。韓国より日本が100gくらい多い。 本日の課題である生ごみ。2007年をみると約3割くらいが生ごみ。韓国も何もしなかった時の生ごみは6割ぐらいだった。つまり何かすれば半分くらいには減らせると考えていいのでは。 韓国も1999年は生ごみ(全体の6割)をほとんど埋め立てていた。食べ物なのだから別の目的に「再活用」するようになった。当時3割ぐらいが現在は9割まで上がっている。よく質問されるが、韓国政府が出している数字信用できるか、堆肥化、飼料化が何割か等。どう考えるか。私個人としては何もやらないより、やっているこということがまず評価できる。やったからには100%やらなければならないという簡単なことではない。10年、20年かけて徐々に上げていくべき。飼料化何%、堆肥化何%という数字が出てこないのは残念だが、政府が出している数値としてはそのとおりなのだろうと理解して欲しい。 なぜ韓国はこういう政策ができたのか。埋め立て地がもう無くなり減らすしかない。中央政府レベルから始まった。有料化を実施した。当時の234の市町村で1995年にはじめた。7月には7つの省庁があつまって生ごみ管理協議体という組織を作った。2002年の日韓共催のワールドカップの時にはレストラン等で、規制をかけるか自主的な取り組みかでもめたが自主的な協約で行った。 日本と違うのは中央政府から始まったこと。今は地方自治制度を導入したが、以前は軍事独裁だった。民主化されたのが1986年、地方自治が1991年、地方選挙が1995年。本当の地方自治は1995年はじまった。未だに中央政府の力が強い。大統領制なので中央政府が環境政策に力を入れるといえば、官庁が動く。 ソウルに人口が集まっているのでゴミが沢山発生し、埋め立て地がいっぱいになり80年代にはゴミ戦争。新しい埋め立て地を作って1991年から埋め立てることに。周辺の住民は受け入れはするものの、臭いや蝿の問題があるので、せめて生ごみだけは除いてくれと言った。とても激しく反発し、ソウルのある区からのごみ運搬車両を追い返した。3日間止まるとその地域のごみ収集が完全に麻痺する。 これが一番、生ごみ堆肥化へのきっかけとして大きかった。市民団体は全国で生ごみ埋め立て禁止しようと国に提案し、中央政府もやむを得ず2005年に生ごみの直接埋め立てを禁止。乾燥したり何か手を加えてから埋め立てることになった。つまり1つのアクターが作ったのではなくて、市民団体、住民運動、中央政府がやってきたということ。みんなで力を合わせてやることが一番大事。 資源化率9割ということだが、堆肥化、飼料化の数値をみると、飼料化は3割程度。残りは堆肥化ということになるが、どういったルートでどこで売っているのか配っているのか誰も分からない。これを市民団体がモニタリング作業を今行って調べている。監視していくことが市民団体、住民団体の役割。これが韓国の今後の課題。大きな団体が2つあり、モニタリングを行っている。 ■質疑 Q:西東京市でも二年前からごみの有料化を実施している。韓国の方法は具体的には? A:韓国を民主化したのは市民団体。政府は市民団体の言うことを無視できない。市民団体が何度も要望し、国が1995年に始めた。袋1枚あたり日本円で50〜100円ぐらいで額は自治体が設定できる。有料化で一時期は量が減ったが、その後リバウンドした。そのため今後は生ごみを減らす取り組みを始めた。課題はいろいろあると思う。 Q:飼料化について A:韓国の料理は塩分、油分が多い。塩分を少なくしないと使えない。現在は主に豚の飼料となっており鶏でも使っている。牛に使うためには塩分をさらに下げなければならない。そのまま与えるのではなくて加工して使っている。加工するために248カ所の施設をお金を出して建てた。 Q:生ごみの集め方について A:市町村毎に異なる。ソウル、釜山では週一回で決まったごみ袋(釜山では青)に入れて出し、戸別収集、マンションは共同。持って行かれないと家の前にいつまでも残ることになる。 つづく |