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※ 独立系メディア E-wave Tokyo 有害 年度末には様々な報告書が発表となる。その中に私たちが永年注目している重要な報告書のひとつ、「水産物中のダイオキシン類の実態調査結果」がある。3月末に発表されたのは平成25年度調査のまとめである。 独立系メディアでは継続的に関連の論考を掲載している。
註:以下にあるERIは株式会社環境総合研究所(東京都目黒区)を指す。 【結果の概要】 ここでは、最新のデータをもとに日頃口にしている魚介類のダイオキシン類濃度について概観してみたい。 まず、平成25年度に測定された4種各30匹合計120匹のデータを以下に示す。 図1−タチウオ 出典:水産庁報道発表資料よりERI作成 図2−ホッケ 出典:水産庁報道発表資料よりERI作成 図3−ブリ(天然) 出典:水産庁報道発表資料よりERI作成 図4−ブリ(養殖) 出典:水産庁報道発表資料よりERI作成 上記の概要は以下の表の通りである。 図5−結果概要表 出典:水産庁報道発表資料より抜粋 図6−海域区分図 出典:水産庁報道発表資料より抜粋 上記より明らかになったことは; @タチウオは、大阪湾のものが極端に高濃度となっていること、 Aホッケは北陸沖が高いこと、 Bブリはタチウオやホッケに比べて脂肪分が高いこともあり、全体的に濃度が 高いが、天然ブリでは、地域にばらつきがある中でも山陰沖がやや高く、 養殖ブリでは、はっきりと海域によって濃度が分かれたことである。すなわち、 調査対象となった海域の中で、瀬戸内海南部、四国南部、九州北西部が 他の海域に比べて高いことである。 養殖ブリが海域によって大きく差が出た背景には、飼料の成分、すなわち、鰯などの生餌の捕獲場所、魚粉等の配合飼料の成分等による差が大きいと考えられる。 【結果の評価】 平成25年度の4種120匹の調査結果について、米国環境保護庁(EPA)が定めている ダイオキシン類についての魚類摂取制限指針(下図参照)に照らしてみる。 再度、先に示した図1〜4を見て頂きたい。図中1.2pg-TEQ/gで太線を引いているように、同指針では、1.2pg-TEQ/gを超えた魚は1ヶ月に1度も食べてはいけないとしている。ちなみにEPAの指針はダイオキシン類以外の有害物質についても、摂取制限指針を示している。 図7−米国環境保護庁(EPA)の魚類摂取指針 出典:Guidance for Assessing Chemical Contaminant Data for Use in Fish Advisories Volume 2 Risk Assessment and Fish Consumption Limits Third Edition PP.145 そうしてみると、大阪湾のタチウオ、北陸沖や北海道沖日本海側のホッケは1.2pg-TEQ/gを超過している。ブリに至っては天然は全滅、養殖も九州南部沖が1.2pg-TEQ/gでそれ以外はすべて超過している有様で、妊産婦や乳幼児が高頻度に食べることは好ましくないと言える。 水産庁のこの種の調査が本格的に始まったのは平成10年以降のことであるが、対象魚種や対象海域、調査個体数も毎年変わるため、継続的にデータをフォローできない点が問題となっている。 平成11年当時、高濃度であることが分かったコノシロ、スズキなどについてみると、以下の通りである。 図8−平成23年度 コノシロ 出典:水産庁報道発表資料よりERI作成 図9−平成24年度 スズキ 出典:水産庁報道発表資料よりERI作成 コノシロは、東京湾、伊勢・三河湾、大阪湾が高いが、大阪湾が中でも高濃度となっている。一方、スズキは東京湾、大阪湾が高く、ここでも大阪湾の汚染が際立っていることが分かる。 【所見】 これらのことから、大阪湾の魚介類は総じて高いことを知識として知っておくことが大切であるとともに、ブリなどの油脂類の多い大型魚については、総じてダイオキシン類の濃度が高いことから、産地に気をつけたり、乳幼児には与えないような注意も必要であろう。 こうした情報は、食の安全性の観点から分かりやすく解説されて提供されるべきであるが、行政は年度末にこっそり公表しているだけで多くの人が気がつかない。メディアも報じない。 繰り返し指摘しているが、日本でこそ、魚介類のダイオキシン類摂取の指針を早急に制定する必要がある。放射性物質による魚介類の汚染への関心が高まっているが、同時にダイオキシン類や重金属類も発がん性物質であり、消費者として関心をもって見る必要がある。 |