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参議院議員選挙結果をどう読む その1
青山貞一

掲載日:2004.7.12〜7.20

結果速報

 2004年7月11日に行われ即日開票された参議院議員選挙結果は、直前の予測を反映し、自民党は改選前議席(51議席)を下回る49議席となった。 

 他方、これも事前の予測通り、民主党が大幅に議席を増やした。民主党は単独で50議席を獲得したが、別途当選した無所属議員5名のうちの4名が民主党の推薦であることから、実質的に54議席を獲得したことになる。
 
 もともと都市部で強いのが民主党だ。しかし、後述するように参議院議員では依然として実質的に憲法違反となっている「一票の格差」を考慮すれば、さらに国民の総意は反自民に向かっていることは明らかである。

 国民が自民党に愛想をつかせている実態を無視し、国民の判断をまともに受け止めず、反省もしないとすれば、自民党の長期低落は不可避である。

参議院議員選挙結果一覧 
 (以下は、最後の1議席決定前の執筆です。最終的に公明党が10→11となりました。)

    自民 民主 公明 共産 社民 みどり 諸派 無所属 合計
当選者数 49 50 11 4 2 0 0 5 121
改選議席 50 38 10 15 2 1 0 4 124(欠員2)
新勢力 115 82 24 9 5 0 0 7 242
選挙前勢力 116 70 23 20 5 1 0 6 245(欠員2)
出典:朝日新聞速報 2004.7.12早朝

さらに広がった一票の格差

 周知のように、最高裁判所が参議院議員選挙における一票の格差を実質的に違法であると判決をしている。にもかかわらず、国会がそれを是正していない現実は、きわめて重大である。

  ※ 20001年の参院選で東京、鳥取両選挙区間で議員1人当たりの
    有権者数が5.06倍となったことから、首都圏の弁護士らが選挙無
    効の確認を求めて提訴。最高裁は1月に定数配分を合憲とする判
    決を下したが、裁判官15人のうち6人が「違憲」の反対意見を述べ、
    合憲とした裁判官9人のうち4人も「格差是正の措置を取らずに漫
    然といまの状況が続いたまま次の選挙が行われれば、違憲判断を
    する余地がある」と抜本改革を求めていた。 (出典:朝日新聞)


 現在、参議院における一票の格差は最大で5倍を超えている。今回の選挙前には参議院では議員一人あたりの有権者数は、東京都の選挙区で 1,216,607人なのに対し、島根県の選挙区 で 242,448人と、実に一票の格差= 5.02倍 にも達している。

 他方、衆議院議員では、人口最小区の高知1区と最多区の兵庫6区との格差は従来の2.628倍から2.124倍に縮小している。衆議院では2002年7月18日、5増5減の公職選挙法改正案が衆議院を通過したからだ。衆議院選挙区画定審議会による勧告を衆議院議員の議員たちがやっとのことで認めたからだ。

 このように、参議院における一票の格差、5.02倍がいかに大きなものであるかが分かろうと言うものだ。今回の参議院選挙では、5.02倍が5.16倍と前回よりさらに拡大していることが分かっている。

 参議院では農村部で多くの当選者を出している与党がその是正に難色を示していることが、最高裁勧告が実現されない大きな理由となっているはずだ。

 だが、今回の選挙で明らかになったことは、もともと自民党が圧倒的に強かった農村部などの一人区でも、民主党が多くの当選者を出したことである。これは非常に大きな変化である。

 後日行われたテレビ朝日のサンデープロジェクトの特集によれば、従来、農水省や国土交通省(旧建設省)の技術系官僚の指定席となっていた参議院の比例区でも、得票数が大幅に減っている。権益による全国組織を動員する自民党流の選挙方式が大きな曲がり角にきていることになる。

 いずれにしても、一票の格差が是正されていれば、民主党の勝利はさらに歴然なものとなっていたと思われる。また、以下に述べるように、今後、一票の格差を巡る国民からの違憲審査請求が活発化することは間違いない。さらに、民主党自身が従来の都市型政党から農村部を視野に入れた選挙戦略を立てつつあることから、地方、農村部は自民党と言う単純な図式は瓦解しつつあると言っても過言ではないだろう。

 本参議院議員選挙の終了後、首都圏の弁護士グループが再度、参議院における一票の格差について憲法の違法確認を求めて裁判を起こすことになった。おそらくこれによって、「実質的な違憲状態」が違憲状態となる可能性が高い。すなわち、参議院の一票の格差に対する違憲判決が大法廷で出る可能性が高くなる。

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