参議院議員選挙結果をどう読む その2 青山貞一 掲載日:2004.7.12〜7.20 |
◆国民に見透かされた「小泉サプライズ」 今回の参議院議員選挙に関連し、小泉政権は、まさにこれでもか、これでもかと、「選挙目当て」の「小泉サプライズ」を連発してきた。 数度にわたる拉致被害者の家族対面劇、社会保険庁長官の民間登用はじめなど、どうみても参院選挙対策に利用したとしか思えないサプライズがたびたび起こった。 誰しもが忘れていた国松警察庁長官狙撃事件問題でのオウム関係者の再逮捕もひょっとしたらそうかも知れない。事実、江川さんがこの時点での再逮捕劇をテレビでいぶかしがっていた。 具体的に見ると、今回の参院選との関連では、「小泉サプライズ」は、小泉首相自身の問題を含む国会議員の国民年金未納、未加入問題から国民、マスコミの関心をそらすかのごとく、年金問題への国民の関心が頂点に達した時点で行われた。何と小泉首相が平壌に自ら乗り込み、拉致被害者の家族との対面、日本に家族を連れ帰った。 さらに、年金法案の強行採決や小泉首相が行ったイラク多国籍軍へのなし崩し的な自衛隊の参加問題への有権者の批判が高まるなかで、それらを打ち消すためのメディア戦略として行われた可能性も大きい。 これらの「小泉サプライズ」は、何も今回の参院選挙ががはじめてではない。昨秋の民主党と自由党の合流日に、道路公団民営化問題に関連して道路公団の総裁更迭劇をぶつけ、マスコミ、世論を操作していると言われていたことは記憶に新しい。 小泉流のマスメディア戦略としての「小泉サプライズ」だが、当初当惑した有権者も参議院議員選挙時点では、国民の多くに見透かされたと言ってよい。つまり、頻繁に繰り返される「小泉サプライズ」は、次第にそのメッキが禿げ、そのえげつなさやあさましさだけが残ってきたのだ。国民の多くは、小泉サプライズを見透かすようになってきたと言える。 何があってもおとなしく従い羊の群れ化した日本国民も、あまりに露骨な小泉流「世論操作」、「情報操作」に、おいそれと従わなくなったと言うべきか。 ◆反省すべきは、大マスコミ だが、よくよく考えてみれば、「小泉サプライズ」による世論操作的なメディア戦略にまんまと乗せられてきたのは、ほかならぬマスコミ、とりわけ新聞、テレビなどの大マスコミだった。 NHKのように、もともと「政府広報的」役割を果たしている報道機関は別としても、大マスコミの大方は、一方で小泉政権の国家主義的かつ強権的なスタンス、そして「なし崩し的」政治手法を批判しつつ、他方で拉致被害者家族対面劇問題に見られるように、「小泉サプライズ」によるメディア戦略にまんまと乗せられてきた。それは連日、これでもかと見せつけられた北朝鮮映像をみれば明らかである。 大マスメディアは昨秋の小泉訪朝以降、異常と思えるほど拉致被害者問題を報道してきた。分かっていながらまんまと「小泉サプライズ」にのってきたのである。 その頂点となったのが参議院議員選挙直前の7月9日にジェンキンスさんと曽我ひとみさんによるインドネシアでの再会劇である。誰が見てもあの再会劇の背後には、小泉政権と北朝鮮首脳との間での演出、シナリオが存在するとしか思いようもない。 もとより世論形成に果たす大マスコミの役割は著しく大きい。その大マスコミがこぞって小泉政権の世論操作に援用されてきた事実こそ、今後、日本の将来を考える上できわめて重要である。 ◆いつか来た道を先導する大マスコミ 今回の参議院議員選挙において国民年金とともに2大争点となったのは、言うまでもなく自衛隊のイラクへの派遣につづく、多国籍軍へのなし崩し的参加であった。 思い起こせば、昨年(2003年)の冬から春にかけ私たちが見てきたことは一体何だったのか。 世界の世論を押し切り米国がしてきたことは、とりもなおさず米国の先制攻撃による侵略戦争ではなかったのか。イラク戦争はあと数年しか自国の石油がもたない米国ブッシュ政権による新たなエネルギー植民地政策、それも絶大な武力をバックにした侵略戦争ではなかったのか。しかも、小泉首相は、その侵略戦争にまっさきに支持を表明したのである。 米国追随は、小泉政権だけの問題ではない、いまでも思い起こせば背筋が寒くなることだが、2003年の冬には朝日新聞、毎日新聞の社説でさえ、米国のイラク戦争突入を肯定する論調があった。率先してホワイトハウスの広報役を買って出て来たNHKはもとより、民放の多くも米国でいえばFOXテレビ化したのである。 思慮ある日本国民は、この時点で「いつか来た道」を思い起こしたはずである。大マスコミが政府の軍国化のつゆ払い的役割を演ずることに。 もともと何ら正当性がなかった米英のイラク戦争だが、「終戦後」半年も経たぬうちに大量破壊兵器は存在しないと言う事実が次々と明るみに出てきた。 大マスコミ、とくに日本政府同様、無批判に米国追随してきた大マスコミは、すでに1万人以上の罪のない市民が殺傷されている米国のイラク戦争報道について懺悔すべきである。 大量破壊兵器の不存在問題は、昨年末以来本場米国で明らかになってきた。いずれもブッシュ政権の閣僚、側近クラスの内部告発がもとになっている。そして、ごく最近の米国上院の調査報告では、フセイン政権とアルカイダとの関係を否定している。 9.11以降、小泉政権がひたすら日本の国家主義化、さらに軍国主義化を推し進めてきたこととの関連で、日本大マスコミが果たしてきた役割はきわめて大である。これこそ与党政治とともに指弾されるべきである。 その3へ (その2にもどる) |