廃プラ焼却を来年度に控えた東京二十三区清掃一部事務組合(23区一組)が運営している焼却関連施設で、9月に入ってからたてつづけに大きなトラブルが発生している。
東京二十三区清掃一部事務組合ウェブサイトより
http://tokyo23.seisou.or.jp/topics/topics.htm
・中防灰溶融施設における排ガス中の水銀濃度が自主規制値を超過したことについて(PDFファイル112KB)
http://tokyo23.seisou.or.jp/topics/chubo.pdf
・豊島清掃工場の緊急停止について(PDFファイル72KB)
http://tokyo23.seisou.or.jp/topics/190919toshima.pdf
上記の23区一組公表資料によると、9月7日(金)から10日(月)にかけて、中央防波堤内側埋め立て地内の灰溶融施設(略称:「中防灰溶融施設」)の1号炉および4号炉で、排ガスの水銀濃度が自主規制値(50μg/m3N)を超え、操業を停止している。
この施設は、先に「PCB処理施設(JESCO)見学記」で紹介したJESCOのPCB処理施設に隣接している。この施設を見学したのが9月7日だからまさにこのトラブルが発生したその日である。
中防灰溶融施設、9/7 鷹取撮影
この中防灰溶融施設は、23区内のごみ焼却炉の灰等を集め、中央防波堤に埋め立てる前に溶融するための施設である。現時点ではいわゆる可燃ゴミ(紙ごみや生ごみ等、ノバスコシアであれば資源化、堆肥化されているもの)を焼却した灰が対象である。来年度からは廃プラ焼却の灰も加わることになる。
ごみ焼却の問題点等については別途このコラムでも指摘してきた。また灰溶融については環境ジャーナリストの津川敬さんも、現場の取材を踏まえて特にその事故発生等の危険性について警告されてきたところでもある。
今回は水銀濃度が自主規制値を超えていたということだが、その原因は9月25日現在未だに明らかにされていない(公表されていない)。水銀濃度が自主規制値を超えた(通常より大幅に濃度が上昇した)ということは、水銀以外の多くの有害物質についても大きく濃度が変動した可能性があるが、23区一組の資料では全く言及されていない。
そもそも規制対象になっている有害物質が極めて限られており、対象であってもダイオキシンなどは年に1回、4時間だけ測ればよいと定められているので、このようなトラブル発生時の汚染の実態を把握することは出来ない。測定されていないのだから、原因が未だに不明なばかりでなく、その影響についてまともに把握する方法すら用意されていないのである。
ちなみに23区一組では、このトラブルに関連して参事2名、副参事2名を戒告および減給10分の1(1カ月)と形ばかりの懲戒処分を行っているが、これをもって都民の信頼を回復できるとはとても思えない。
・職員の懲戒処分について(PDFファイル80KB)
http://tokyo23.seisou.or.jp/topics/syobun070913.pdf
また同じく23区一組の資料で、9月19日には豊島清掃工場で2号炉で炉内圧力が上昇し、緊急停止装置が作動して運転が停止している。練馬区の池尻成二区議のブログでは「豊島清掃工場の爆発事故」、「水蒸気爆発」と伝えられている極めて大きなトラブルである。23区一組の資料の表現では分かりにくいが、それでも「ボイラ水管が破れ」「周辺機器の一部が破損しました」とあるから、単に装置が停止したということではないことが分かる。
こちらも9月25日現在、原因は依然明らかにされておらず、施設は停止しているもようである。
また事故が起こった際に想定される有害物質の環境中への飛散の可能性については「各種データから、工場外部に灰などは漏れていないものと判断しています。」と記述されているのみで、具体的なデータは全く示されていない。
中防灰溶融施設と同様、測定されている項目、測定時期は極めて限られているはずであるから、環境への影響がまともに把握できているのかは疑問である。少なくとも把握しているデータを迅速に公開し、都民は外部の専門家の判断の根拠を提供することが重要であって、事故を起こした当事者に「ないものと判断しています」と結論だけを押しつけられても理解も納得できるわけはない。
以前「23区廃プラ焼却『実証確認』のまやかし」で指摘したように、23区一組とその構成自治体は、非科学的な「実証」を持って廃プラ焼却を行おうとしている。
廃プラによって炉の負荷、汚染の可能性が増す以前の現時点においても、このように焼却関連施設でトラブル、事故が発生し、それに関わるデータがまともに調査も公開もされていない実態を改善せずして、廃プラ焼却について区民の理解を得られるはずもない。
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