Live Scienceの記事によると、人口1,300人のミズーリ州ロックポートは風力発電だけで全ての消費電力を賄う全米で初めての町となった。
http://www.livescience.com/environment/
080715-wind-powered-town.html
4基の風力発電(全75基の一連の風力発電事業のうち4基が町内に設置)は町にクリーンな電気を供給するだけでなく、Windo Capital Group社の固定資産税による年間110万ドル(約1億1千6百万円)の税収増をもたらしているという。地方の小さい町としては極めてまれである。
また、この原油高騰の折にもかかわらず、今後15〜25年間(風力発電の機器の推定寿命)、電気料金の値上げは必要ないという。コストの面からも将来にわたる安定的なエネルギー供給を約束するものであることになる。
面積あたりの収入は穀物を育てるよりも風力発電の方が高いという。もちろん、風力発電を行っている足下で穀物をも育てることは可能だろう。
アルタモントの丘に設置された5000基を超える風力装置
Photo: Wind farm in Altamont
撮影:青山貞一氏、Nikon CoolPix S10 in Wind Farms near Livemore in California
アルタモントの丘に設置された5000基を超える風力装置
Photo: Wind farm in Altamont
撮影:青山貞一氏、Nikon CoolPix S10 in Wind Farms near Livemore in California
一方で風力発電にはいくつか考慮しなければならない課題もある。
(http://eritokyo.jp/sim/wind3d.html で具体例を紹介している。)
筑波に設置された「回らない」風力発電のように、そもそも十分な風が吹くかどうか事前の調査が必要であるととは言うまでもないが、報道で愛媛県、伊方町の「三崎ウィンド・パワー」の騒音、低周波音問題について紹介されていたように、風力発電の周辺における低周波音、騒音問題等の影響について十分に配慮して立地位置を決めなければならない。
「三崎ウィンド・パワー」では風力発電機から200メートル離れた世帯が被害を訴えているというが、ローターの直径61mの巨大な風力発電機を民家からわずか200メートルの近さで設置したことにそもそも問題がある。
特に低周波音については、化学物質過敏症等と同じように、人によっては全く問題ないレベルが、人によっては重大な影響をもたらしているのではないか、という疑いがあると報告されていること、比較的高いレベルの低周波騒音が、長時間続くこと等から、予防原則の立場に立って、立地選定をする必要がある。
NEDOが「風力発電導入ガイドブック」
http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/pamphlets/dounyuu/fuuryoku.pdf
を作成、公表しているが、騒音についてはP.92に目安が示されているのみである。この目安では200メートル離れれば45デシベル(住宅街程度)とあるので、十分に静かなのではないかと誤解を与えてしまうだろう。低周波音の問題の可能性にも全く言及されていないので、このマニュアルだけを頼りにしていては、問題を事前に回避することはできない。
この筑波の失敗例(現在は羽が取り外されて軸のみが立っている)、三崎ウィンド・パワーの紛争の例、もしくは風力発電倒壊事故の例のように、風力発電に関わる失敗例が報道されると、「だから自然エネルギーは非現実的だ」と思われがちである。しかしこれらはいずれも立地選定が極めて不適切であったから起きたことに過ぎない。
以前に、http://eritokyo.jp/sim/wind3d.html に問題点と検討の方法についてその基本的な考え方を紹介したが、きちんと立地選定を行えば、最初に紹介した例のように、例え小さなコミュニティーに対しても大きな経済的、社会的、環境的な利益をもたらすことが可能となるのである。
青山貞一氏が http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col8126.htm において指摘したように、洞爺湖サミットは原発の売り込み場となってしまった。自然エネルギーの普及目標も普及実績も極めて低い日本は、まずは自然エネルギーの普及努力をまともに行って欲しい。
関連URL:
http://eritokyo.jp/independent/takatori-col136.htm
http://eritokyo.jp/independent/asahishinbun-col00001.html
http://eritokyo.jp/sim/wind3d.html
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