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前回のコラム「福山RDF処理委託料問題の本質」で言及したように、会計検査院は環境省にRDF化施設に関する問題を指摘し改善を要求した。 ★鷹取敦:福山RDF処理委託料問題の本質 http://eritokyo.jp/independent/takatori-col198.htm この時点では概要のみが公表されていたが、その後、全文が公表され、会計検査院のウェブサイトでも公表されている。 ◆会計検査院:「ごみ固形燃料(RDF)化施設の運営に資する情報を提供するなどして、施設の健全な運営及び市町村のごみ処理事業の安定化に資するよう意見を表示したもの」 http://www.jbaudit.go.jp/report/all/pdf/fy21_05_18_05.pdf ちなみに、会計検査院関連以外も含め、RDFの問題点に関する環境総合研究所への取材が、複数の全国紙、地方紙、業界誌等からこの秋以降、続々と続いており、RDF事業のもつ問題が、あらためて注目されていることを実感する。 RDF(ごみ固形燃料)化施設には、環境省(以前は厚生省)が平成16年度までは国庫補助(廃棄物処理施設整備費国庫補助金)を、平成17年度からは名目をかえて交付金(循環型社会形成推進交付金)を、自治体に交付している。平成10年度からはRDF化施設だけでなく、RDFを焼却して発電する施設(RDF発電施設)も補助対象としている。 環境省は自治体が設置するごみ焼却施設に莫大な額の国庫補助・交付金を交付してきており、RDFへの国庫補助・交付金もその一環である。補助の割合等の仕組みについては、下記の解説をご覧頂きたい。 ★青山貞一:廃棄物処理施設を事例とした国から自治体への補助金及び地方交付税交付金の仕組みについて http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col15266.htm 会計検査院が全国のRDF化施設50施設、RDF発電施設(焼却施設)4施設を調査して指摘した問題点の概要は次のとおりである。会計検査院では具体的な数値、山梨県、和歌山県などの自治体の事例を挙げてこれらの問題を指摘している。(比較的順調な事例として北海道の自治体の例も紹介されている。ただし会計検査院は指摘していないが、北海道の事例にも問題はある。)
エネルギーを余計に必要とすること、エネルギーの消費、焼却に伴い温暖化ガスを排出すること、廃棄物の焼却により有害物質を大気中に排出し、有害な灰が大量に発生しその処理コスト、環境負荷も増大することなどの環境面からも問題がある。 つまり財政面、安全面、環境面について大きな問題があるのがRDFであって、会計検査院は、これらのうち財政に直接関わる側面だけを指摘したと言うことができる。 財政面の問題点を踏まえて、会計検査院が環境省へ示した改善意見は、かいつまんでいえば、
たとえば会計検査院が成功事例としている例は、分別して生ごみを入れないようにしている例である。しかし既存のRDF施設で生ごみを抜けば、RDFの総量が減るため、会計検査院が問題事例として指摘しているように処理費用が増大し、自治体の財政負担が増してしまい解決策にはなりえない。 そもそも生ごみや汚れた紙などの有機物(堆肥化可能)を分別し、プラスチックのうちリサイクルの容易なものを分別し、燃やすと危険な金属類や有害物質の含まれたものを分別すると、RDFの「材料」などごく僅かになる。わざわざRDF化施設でエネルギーとお金を使って「加工」する必然性はどこにもない。 RDFは目的ではなくて、ごみ処理の手段の1つに過ぎないから、他に財政面、安全面、環境面等からみて、より適切な手段があればRDFに国のお金、地方のお金を投じ続ける必要は全くない。会計検査院の提案には代替案の検討という考え方は全くない。あくまでもRDFへの交付金の継続を前提とした意見である。 本来、会計検査院が環境省に意見すべきだったのは、RDFへの交付金の交付の廃止と、失敗した多くの施設についてどう「後始末」するか頭をひねることである。また、金融危機等に金融機関に税金を投入する際にも指摘されたように「モラルハザード」を防がなければ将来、同様の問題を繰り返しかねない。つまり、RDFを推進した国、自治体の責任者の責任を厳しく問うことである。 ちなみに、RDF問題の取材に来た複数の記者によると、環境省に取材をすると、多くの失敗事例は自治体が自ら選択し、運営しているのだから、国の責任ではなくて自治体の責任だ、と担当者が長々と言い訳するそうである。 そもそも、不十分ながらも会計検査院が事例を調べ指摘した問題は、本来、環境省が自ら、行わなければならないことである。そして失敗が分かった時点で、その分野から撤退する判断を出来るだけ早くする組織でなければ、納税者として税金を預ける気にはなれない。もっとも、取材にきた記者のひとりに言わせれば、RDFがうまくいかないことは始める前から分かっていたはず、であるなら、RDFに税金を投入してきた動機は別にあるのだろうか。 国の補助金、交付金は国が儲けた要件に合致する自治体の事業にお金を交付するのであるから、自治体からみれば「お墨付き」のようなものだ。残念ながら、日本では「国の言うことを聞いていれば問題ない」とする主体性のない自治体の人任せ体質が主因ではあるものの、「選択した自治体の責任」とするのは環境省の保身体質を示すものに他ならない。一方で、ただ国のいうなりにしていれば間違いないと思考停止してきた自治体にも当然責任はあるが、これをもって国の責任が減ぜられることにはならないだろう。そして、福山のRDF発電施設にメーカーであるJFEが一番多く出資していることからも分かるように、そしてトラブルや事故を多く起こしている施設を作ってきたのがメーカーであることからも分かるように、メーカーにも当然、大きな責任がある。 ごみ処理は本来、2R(リデュース・リユース)を最優先にし、3R目であるリサイクルを製造者負担で行うことによって、廃棄物を減らす経済的なインセンティブを作るのがあるべき姿である。これを十分に行った上で残ったものをどうするか、というのが、あるべき優先順位であって、国も建前としてはそう提唱してきた。 私たちが出したごみをどう処理するかは、自治体が住民参加で、諸外国や国内の意欲的な取り組みから学び、頭をつかって考えるべきことである。そのためには国は要件を設けた国庫補助や交付金を交付するのではなく、使途を限定しない交付金、財源を自治体に移すなどして自治体の主体的な取り組みに任せるべきであり、国が、霞ヶ関が示していることに誤りがないなどという無謬性神話から脱却すべきである。 以下は取材を受けた記事のうち最も最近掲載された中日新聞の記者によるものである。
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