|
||||||||||||||||||||
2010年11月18日の中国新聞朝刊に福山市に設置されたRDF(ごみ固形化燃料)事業の問題についての記事(筆者のコメントは紙面にのみ掲載)が掲載された。 ここでは、この問題について詳細に書かれている落合真弓福山市議会議員のブログを紹介したい。 ◆落合真弓福山市議:RDF処理委託料2004年、福山市にRDFを焼却し発電するための「RDF発電所」(発電施設付きの焼却炉)が設置された。これを運営しているのは、ごみ焼却を委託する市町村、広島県、県の外郭団体、民間企業が出資する第三セクター「福山リサイクル発電株式会社」である。 三重県のRDF施設で爆発事故が発生して以来、消防法により貯蔵量が制約されたため、「福山RDF発電所」の処理量が増やせなくなっている。 これにより、福山市は、既存の焼却炉の閉鎖に伴い「福山RDF発電所」に委託するRDFの量を2009年から増加する計画であったが、これが不可能になったため、実際に持ち込んでいるRDFの量は増えていない。それにも関わらず、増加する予定であった「計画供給量」に応じ、福山市が支払う処理委託料が2009年より値上げされている、という問題が記事および落合市議のブログで紹介されている。 中国新聞取材によると、福山市はこれを問題無しとし、計画供給量の見直しは行わない、と述べているという。つまり、実際に受け入れられていないRDF(ごみ)量に応じた委託料を払い続けるということである。 これに関連して、中国新聞にコメントを求められた。紙面の制約により掲載されたものはごく一部であるため、本コラムにてもう少し詳しくこの問題を整理しておきたい。今回の問題については、単に福山市民の税負担の増加という面だけでなく、そもそも問題の根本にある廃棄物政策も合わせた両面から見ていく必要がある。 まず金銭的な負担について整理しよう。施設を運営している第三セクターである「福山リサイクル発電(株)」の株主構成は、総務省資料によると以下のとおりである。このうち(財)広島県環境保全公社は、広島県が設立した特例財団法人で県内2つの最終処分場、建設残土受入管理場の運営等を行っている。
34hirosima/3405syou/050_kaigi/pdf/02-16.pdf (20頁に掲載) JFE、広島県、(財)広島県環境保全公社以外、つまりRDF(廃棄物)の焼却処理を委託する基礎自治体は、おおむね処理を委託する廃棄物の量に比例して出資しているようである。 福山市のRDF委託量を増やせない分の負担増を市が拒否した場合、その分、福山リサイクルの収入は減少する。その結果(福山市が懸念するように)「発電所」の運営に支障を来した場合には、将来的には株主がその負担を負わざるを得ないこととなる。処理を委託している福山市も株主なので、その場合にはいずれにせよ福山市の税負担は増す。 ただし、現状のとおり福山市が負担する委託費の値上げで、収入減の全てをカバーすることになれば、資本金16億円のうち合計で約12億円(75%)を占めるJFE、広島県、(財)広島県環境保全公社の三者は、負担を逃れることになる。他の市町村も同様である。 出資比率の大きい前記の三者は、単に資本を出資しているということではなく、この計画の推進において大きな責任がある。三重の事故がなかったとしても、ごみの排出量は減少傾向にあり、福山リサイクルへの委託料合計を一定とするのであれば、ごみ量当たりの自治体の負担が増加してくことは最初から分かっていたはずである。現に「大牟田リサイクル発電所」では以前に紹介したように既にこの問題が顕在化している。 ◆鷹取敦:「東京23区は大牟田RDF発電の教訓に学べ」また、会計検査院からもRDFは多くの問題を起こしていることが指摘されている。会計検査院の指摘は廃棄物政策としてのRDFの問題点の本質を捉えきれてはいないものの、それでも各地で問題になっていることは明らかとなっている。 ◆会計検査院:「国庫補助金により整備されたRDF化施設の運営について」福山のRDF計画で起きている問題は、当然、福山市にのみ責任があるというわけではない。計画を推進してきた広島県、その外郭団体、JFE、福山市を含めた関連市町村全てに責任があると考えるべきである。それにも関わらず福山市の委託料のみを値上げして負担増をカバーするということは、福山市のみが過剰な負担を押しつけられるということになる。 これが第三セクタではなく、自治体直営の焼却炉やRDF「発電所」(事実上は発電施設付き焼却炉)の場合には、コストと負担の関係が見えづらいので、処理量(焼却量)が減少した場合の実質的な負担増が外から見えにくいだけで、同じことが起きているはずである。現にごみ排出量は減る傾向にあるので、全国の多くの自治体で焼却炉の過剰な処理能力をもてあまし、単位ごみ量あたりの処理費用は増加しているか、近い将来増加することが懸念される。 ごみを減らす努力をするほど処理コスト、税負担が上昇する「焼却」という、ごみの処理方法は、財政面だけからみても出来る限り回避すべきである。 一方、廃棄物政策、環境面からみてもRDFには問題がある。 福山リサイクルのウェブサイト(http://www.frpc.co.jp/advantage.html)には、事業効果として
今回の問題からも分かったように、処理する廃棄物の量が減れば単位ごみ量あたりの処理費用が増大する。またRDFを製造する過程でエネルギーを消費するため、仮に燃やす段階のみ取り出して発電効率が上がったとしても、トータルとしてのエネルギー消費、CO2の排出量は増大する。自治体のコストが削減できないのも今回のことで明らかになった。廃棄物を燃やしたスラグは引き受け手、買い手が無いことがよく知られている。 RDFやごみ焼却には、CO2の排出だけでなく、ごみに含まれる有害物質、焼却過程で合成される有害物質等の大気中への排出、灰やスラグへの濃縮の問題もある。 RDFの「原料」となっているごみのうち、生ごみや汚れた紙、布、木等の有機物は堆肥化技術で無害化して安全に土に戻せる。また、きれいな紙は当然リサイクルし、プラスチックも多くはリサイクル可能である。残ったわずかな廃棄物をどうするかについて考えるべきであり、最初から大量に焼却することを前提としたRDFを導入したのがそもそもの誤りである。 予定している15年の操業期間の間の負担増をどう割り振るかは、起こった問題の後始末に過ぎず、問題の本質ではない。税負担が増加することについて、モラルハザードが起きないようにするには、RDF事業を進めた当事者の責任を問うべきであり、そうしてこそ今後、また他地域で同じ問題が起こることを防ぐこととなる。 国の事実上のお墨付き(補助金付き)だからといって安易に受け入れるのではなく、諸外国の事例も含めて、いかにすれば環境、財政へのリスクを減らした廃棄物政策に転換すべきか、考え直す契機とすべきではないだろうか。 |