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がれき処理受入自治体名公開の判決

−不透明な環境省の体質−


鷹取敦

掲載月日:2014年12月12日
 独立系メディア E−wave
無断転載禁


 がれき広域処理の受入検討状況を環境省が情報を一部非開示としたことに対して、公開を求める裁判で、大阪地裁は公開を命じる判決を出したと、今朝(2014年12月12日)の朝刊各紙が報じた。下記はそのうち朝日新聞の記事である。

◆がれきの受け入れ、自治体名公開命令 大阪地裁、「住民に不安あった」(朝日新聞)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11502758.html
2014年12月12日05時00分

 大阪地裁の田中健治裁判長は11日、自治体による東日本大震災のがれきの受け入れ検討状況を一部開示しなかった国の処分を取り消し、公開を命じた。自治体名を伏せた環境省に対し、情報公開を求めていた大阪府守口市の市民団体が提訴していた。

 判決によると、環境省は震災発生から約7カ月後の2011年10月、岩手、宮城、福島の3県と沖縄県を除く都道府県を通じ、市区町村にがれき受け入れの意向の有無を調査。54の自治体が「受け入れを決めた」「検討中」と答えたことを公表したが、自治体名は伏せていた。市民団体の公開請求に対し、環境省は12年5月、「意思決定の中立性が損なわれる恐れがある」として公開しなかった。

 田中裁判長は「住民には災害廃棄物が放射性物質に汚染されている可能性があるという不安があった」と指摘。開示しない不利益は大きいと判断した。大阪市内で記者会見した市民団体代表の橋本杉子さん(54)は「情報の公開に対する国の姿勢を正した」と評価。環境省は「判決内容を精査し、対応を検討したい」との談話を出した。

 (阿部峻介)

 環境省は、がれき処理に関わる検討会(災害廃棄物安全評価検討会)の議事録も不自然な形で非開示としていた。これについて筆者らはほぼ全ての会議について逐一開示請求を行い、非開示決定に対して異議申し立てした結果、最終的に「情報公開・個人情報保護審査会」が、環境省を厳しく批判し、開示の答申を行った。

 この議事録非開示問題についての経緯は、下記に詳しく報告したとおりである。この過程で環境省は当時の細野環境大臣に虚偽の答弁をさせている。

◆環境省への議事録開示請求の経過報告
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col104.htm

 今回、記事となった受入検討自治体に関しては、実際に受け入れなくても、検討しただけで復興交付金を交付していたことが、当時、大きな問題となり、ニュースでも取り上げられた。

◆環境省が主犯・偽装がれき処理検討
http://eritokyo.jp/independent/takatori-fnp0025.htm

 このように環境省が、不透明、不公正なことを行ってきたことが、国、がれき処理に対する不信と不安を大きくし、がれき処理を進める上で大きな阻害となり、また放射性物質に関する不安を増大させているのである。

 環境省は広告代理店への数十億円の委託業務を通じて、広域処理をしないと何十年もがれきがなくならないかのような印象操作を行ってきた。しかし実際には広域処理をほとんど行わずとも、予定していた期限までに福島県外のがれきの処理は完了しているので、広域処理の必要性についても問題があった。環境省が行ったような場当たり的な広域処理は全く不必要・不適切であったのである。(福島県内のがれきは最初から広域処理に対象外であり、現在も進められており、2014年12月11日に相馬市で仮設炉の稼働停止する、など一部で終了しつつある段階である。)

 今回の判決で改めて明らかになったように、いまだにこの問題について、環境省が情報の非開示を裁判で主張していたとは驚きである。

 ICRPの勧告(Pub.111)では、原発事故後の対応にあたり、透明性、正確な記録と開示、住民参加が重要だと指摘しているが、事故後3年半経っても、このような基本的なことすら、環境省は実践できてない。