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サンプロ特集・危ないダム


青山貞一


27 October 2009


 2009年10月25日のテレビ朝日サンデープロジェクトの後半で放映された特集シリーズ 民主政権への提言V“危ないダム”〜そして地すべり災害は起きた〜は、サンプロ特集としては、ひさびさの見応えある番組だった。

 ただし、前半の田原氏の番組は、これ以上なく”噴飯もの”だった。およそ対等な議論になっていない。

 斉藤次郎氏を西川氏の代わりに日本郵政の代表に据えることに関連し、金融庁の大塚副大臣をスタジオに呼び寄せ、田原の強引な引き回しのもと、竹中、榊原、財部、星らが総攻撃する。

 田原、竹中らは、大塚副大臣の言い分をまともに聞くことなく、一方的にバッシング、非難するといういつもの構図に終始していた。時間的に見て、大塚vs田原・竹中・榊原・財部・星らは、よくて1:4、へたすると1:6だ。もちろん、大塚はさまざま裏事情をしっているだろうが、立場上現時点で言えないことも多いはずだ。

 しかも、番組では民主党が脱官僚と言いながら元大蔵事務次官の斉藤氏を時期日本郵政の社長にそえることだけをとられ、田原、竹中、榊原、財部、星らがこの間の日本郵政株式会社が行ってきたさまざまな問題、課題をよそに寄ってたかって言いたい放題、聞くに耐えない”リンチ”番組だった。

 大塚副大臣はこのところマスコミに呼ばれると、いつも亀井大臣の身代わりとなり、この種の攻撃を一手に受けている。

 ただ、この種のスタジオに呼び込み寄ってたかって一方的なバッシング、ネガティブ攻撃、すなわち”リンチ”番組をすればするほど、国民はますます結果的に、小泉・竹中両氏が何を行い、日本社会を根底からぶちこわしてきたかを知ることになる。

 その結果、自民党とそれを以前として支援する大マスコミから離れる結果となっている。 いつもながら老害以外の何者でもない田原氏の独裁は、そのような事実を知らない。そのさまは、滑稽ですらある。言論の自由のはきちがいであり、放送法に抵触する可能性すらアルだろう。

 そろそろ本題に入ろう。

 後半の特集番組、”危ないダム”〜そして地すべり災害は起きた〜は、現代の関東軍、国土交通省がいかに治山治水を名目に、とんでもないことを日本中でして居るかを現地映像、取材を元にえぐり出していた。

特集シリーズ 民主政権への提言V

“危ないダム”〜 そして地すべり災害は起きた 〜


「八ッ場・川辺川ダムの中止」に象徴される民主党・鳩山政権のダム見直し。その数、国交省所管のダムだけで143に上る。

緊急性・必要性の有無だけに焦点が当たっているダム問題だが、実は重大な問題が別にあることは、あまり知られていない・・・。

奈良県で37戸が暮らしてきた、800年続く地区が消えることを余儀なくされた。事もあろうに、災害を防ぐはずのダムが、自ら災害を引き起こしたからだ。なぜ、災害は起きたのか。そして住民たちの苦闘と、地区を翻弄した数奇な運命とは・・・。

さらに、計画から半世紀に及ぶ歳月と莫大な血税を投入し続けても、今なお完成しない現実・・・ダム建設が抱える問題が凝縮した姿が浮かび上がった!

一方、完成した直後にも関わらず、多数の「ヒビ割れ」が見つかったダムもある。なんと、ダム本体も傾き、ダムを支える地盤には通常あり得ない事態が起きてい
た。

住民が不安を訴える中、ダムの運用は開始されたが、それを強行した役所の驚くべき言い分とは。

災害を防ぐはずが、災害を引き起こすダムまで造り出した、国交省。“小さく産んで大きく育てる”、大型公共事業の「典型」でもあるダム・・・完成まではもちろん、完成後も、血税を呑み込み続けるダムの“真実の姿”と問題点を追った、「シリーズ民主政権への提言」の第3弾。

≪出演≫
相川 俊英(ジャーナリスト)

 それはダムを造成し、稼働させることにより、周辺地域に地盤変動など新たな災害をもたらし、結果的に周辺住民の土台や家屋に多くのひび割れが入り、住めなくなるという事態を起こしていることだ。

 しかも、国土交通省は因果関係を認めず、地域住民はやむなく自費で疎開を余儀なくさせられている。

 問題の”危ないダム”の場所は奈良県の川上村の標高約400mの地点にある。


奈良県川上村の大滝ダム   出典:Google Map 地形図


奈良県川上村の大滝ダム  出典:Google Map 地形図

奈良県川上村の大滝ダム平面図  出典:国土交通省(白屋地区)


奈良県川上村の大滝ダム平面図  出典:国土交通省(大滝地区・迫地区)

 紀の川を堰き止めて建設された大滝ダムである。同ダムは、1959年の伊勢湾台風の被害で奈良、和歌山両県で130人の死者が出でいる。

 その後、建設省、後の国土交通省が40年以上の歳月とおよそ3200億円をかけて開発したもので2008月夏に竣工した。

 2009年月3月以降、試験的にダムに水を貯めはじめた途端、4月下旬に周辺地域の住宅の地盤や壁などに多くの亀裂が入った。白屋地区では約40世帯、70人が居住していた。番組の映像を見ると、信じられないほど、家屋の土台や壁のあちこちに亀裂が入っている。


大滝ダム  出典:国土交通省


奈良県川上村の大滝ダム サンプロ:資料映像

 白屋地区は、何と20年も前から地すべり危険地帯と指摘され灌漑水路や畑の造成も、地質、土質を考慮し行われてきたが、建設省のダム計画の立案過程で、地滑りを熟知している地域住民らは学者に委託して1974年に「奈良県川上村大滝ダムに関する調査研究」をまとめ、公表している。

 同調査研究報告では何十年も前にまで遡り、当該地域の地質、土質などを調べており、この地域では地すべりを防げず、ダム事業による対策は周辺住民全体の移転しかないと結論づけていた。

 番組では、現地の地域住民らのインタビューを中心に、災害を防ぐはずのダム事業が、災害を引き起こす実態をつぶさにえぐり出している。八ッ場ダム事業に準ずる3200億円もの巨額の税金をつぎ込み、結果的に村を破壊している。

 旧建設省河川局の技術官僚らの無責任な事業計画が結果的に住民の生命を洪水でではなく、ダムそのものにより危機にさらしていることになる。

 今回前原大臣が凍結した国交省所管のダムは143だが、都道府県所管のダムを含めると膨大な数のダムが自然破壊、財政破壊だけでなく、湖底に沈む村落以外に、周辺に残された村落そのものを危険に陥れている。

 おそらくこのようなダムが日本各地に多数存在するはずだ。

 政権交代により、その種の巨大な土木事業の実態が次々に明るみに出るこを期待したい。また大メディアは、各地に計画、実施されているダムをこの際徹底検証すべきだ!