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漆間巌官房副長官が
「国策捜査」
を裏付ける発言!?

青山貞一 Teiichi Aoyama 7 March 2009

独立系メディア「今日のコラム」


 小沢民主代表が3月4日の記者会見で、公設秘書がいきなり逮捕されたことに関連し、「国策捜査」に類する発言をしたことに、政府閣僚や自民党幹部は激しく小沢氏を批判してきた。

 しかし、3月5日、政府高官が、東京地検特捜部の捜査が「国策捜査」であることを裏付ける発言をしたことで、与野党に大きな波紋を広げている。

 問題の人物は、漆間巌官房副長官である。3月5日、漆間副長官は記者との懇談で小沢代表の秘書逮捕に言及した。そのなかで、「東京地検特捜部の捜査が自民党議員に拡大することはない」との見通しを示した。理由は小沢代表の場合には「西松建設への請求書があった」からと述べた。

 しかし、政府の中枢にいる官房副長官が「捜査が自民党議員に拡大することはない」との見通しを述べたこと自体、政府と東京地検がツーカーの関係にあることを指し示すものであり、野党からはこの漆間発言に対し、「やっぱり国策捜査ではないか」と批判が続出している。

 たとえば、鳩山由紀夫民主党幹事長は3月6日午前、記者団に対し「検察側との間で何らかの『デキレース』があると思わざるを得ない」と述べている。さらに午後の記者会見でも「馬脚を現した。なぜ検察の捜査の行方に確信的な言動ができるのか」と激しく官房副長官を批判した。

 漆間発言への批判は、野党だけでなく自民幹部からも起きている。漆間発言が自民党へ波及することを恐れてのことで、6日は一日中、自民党はやっきとなって漆間発言の火消しに奔走していた。

 このように政府高官が特捜部とツーカーであるかのような発言をしたこと自体、まさに「国策捜査」を裏付けるものではないのか? 問題なのは、漆間官房副長官がその発言を記者との懇談の席で行ったことである。これはまさに情報操作による世論誘導そのものである。
 

政府高官発言が波紋=自民も激怒、官邸は火消し−西松献金事件

時事通信 2009/03/06-19:03

 西松建設による違法献金事件で小沢一郎民主党代表の公設秘書が逮捕されたことに関し、東京地検特捜部の捜査が自民党議員にまでは広がらないとの見通しを示した政府高官発言が6日、波紋を広げた。民主党が強く反発したのはもちろん、政権と捜査当局との「癒着」を連想させかねない言動には自民党からも怒りの声が上がり、政府は火消しに追われた。

 「首相官邸は緊張感を持って対応するように」。自民党の大島理森国対委員長は同日午前、政府側から出た不用意な発言に対し、河村建夫官房長官に電話で抗議。河村氏は「申し訳ない」と陳謝した。これに先立つ党役員連絡会でも、菅義偉選対副委員長が「実態が分からないのに、分かったようなことを言うべきではない」と厳しく批判した。

 問題となっているのは、自民党議員への捜査拡大に否定的見解を示した5日の高官発言。同高官は理由として「(小沢氏秘書の場合は)西松建設への請求書があった」と指摘した。

 同社OBが代表だった政治団体からは、自民党二階派や複数の同党議員にも資金の提供があった。このため同党内には、事件が飛び火する可能性も否定できないとして、事態の推移を見守ろうとする空気が強い。政府・与党が検察の捜査を激しく批判した小沢氏の姿勢に絞って追及する戦略を取ってきたのは、このためだ。

 そこへ飛び出した政府高官発言は、民主党に「国策捜査だ」との主張を再び強めさせる口実を与えた。同党の鳩山由紀夫幹事長は6日午前、記者団に「検察側との間で何らかの『できレース』があると思わざるを得ない」と指摘。午後の記者会見でも「馬脚を現した。なぜ検察の捜査の行方に確信的な言動ができるのか」と批判のトーンを上げた。

 官邸は沈静化に躍起だ。麻生太郎首相は同日の参院予算委員会で、社民党の福島瑞穂党首の質問に「(発言は)全く承知していない」と答弁。河村氏も会見で「検察は法と証拠に基づきしっかり対応してきた。(発言によって)捜査が曲げられるということはあり得ないと確信している」と強調した。しかし、民主党は高官発言を国会で追及する構えで、余波は続きそうだ。(了)


 ところで渦中のひととなった漆間巌氏とはどんな人物か?

 漆間氏は以下のWikipediaのプロフィールにあるように一貫して警察畑を歩んできた高級官僚である。ちなみに今回の今回の小沢代表公設秘書を逮捕した布陣は、樋渡検事総長と佐久間特捜部長だが、当然のこととして検察庁と警察庁はもともと兄弟関係のようなものである。

 今回の漆間発言は、警察庁長官まで務めた官房副長官の発言であるだけに、まさに政府自民党と東京地検によるデキレースの「国策捜査」と揶揄されても仕方ないだろう。

◆漆間巌プロフィール

 都立日比谷高校、東京大学法学部卒業後、1969年 警察庁入庁。奈良県警察本部長、愛知県警察本部長、大阪府警察本部長、警視庁副総監、警察庁警備局長、次長などを歴任し、2004年8月13日から2007年8月まで警察庁長官を務める。北朝鮮による日本人拉致問題などに直面し、異例の3年間に亘る長期間の長官在任であった。

 長官退官後には、官邸インテリジェンス機能の強化を図る意味合いで、安倍内閣の内閣官房副長官就任の話もあったが、2007年夏の参議院選挙で自民党が惨敗したため、安倍自ら動きがとれずに内閣が短命に終わったため実現しなかった。

 引き続いて麻生内閣誕生のおりには、嶋津昭地域総合整備財団理事長(初代総務次官、旧自治省出身)、香山充弘自治医科大理事長(元総務事務次官、旧自治省出身)も官房副長官に有力視されていたが、2008年9月24日の麻生内閣発足では、麻生自身の「情報」好きと相まって、かねてから最有力視されていた漆間が座ることとなった。警察庁出身としては川島廣守以来32年ぶりとなる内閣官房副長官(事務担当)に就任。兄に漆間英治(元 中部管区警察局長 1958年入庁)がいる。

出典:Wikipedia

 以下は、漆間警察庁長官が内閣官房副長官に抜擢されたときの関連記事である。

警察庁の漆間巌長官が内閣官房副長官に

2007年6月号 [ディープ・インサイド]

 警察庁の漆間巌長官(昭和44年入庁)の内閣官房副長官への抜擢が確定的となった。的場順三官房副長官(旧大蔵省32年入省)は、参院選後に予定される内閣改造で退任する。官界トップの事務担当官房副長官に漆間氏が就けば、田中角栄政権の後藤田正晴官房副長官(故人、旧内務省14年入省)以来の警察庁出身となる。

現在、内閣官房では野田健内閣危機管理監(42年入庁)と三谷秀史内閣情報官(49年)の2人の警察庁出身者が幅を利かせている。さらに、漆間氏が官房副長官に登用されれば「警察偏重」とのブーイングが沸き起こるだろう。そこで警察庁首脳部は、創設以来の指定ポストである内閣危機管理監を旧内務省系の他省庁に譲ることでバランスをとろうと画策。野田管理監の後釜に香山充弘元総務事務次官(旧自治省43年入省)の名前が挙がっている。

そもそも安倍晋三首相は、官僚の中でことのほか信を置く外務省の谷内正太郎氏(44年)を、事務次官を退任する来年20年1月に的場氏の後任に据えるつもりだった。ところが、谷内氏が固辞し続けたため諦めた経緯がある。その後も、安倍首相は、年内にも発足する日本版の国家安全保障会議(JNSC)の初代事務局長(官房副長官級)への起用を打診したが、谷内氏は「学究生活への転身」を理由に固辞。来年4月から慶応大学法学部教授として国際法を教えることになるだろう。