学術の世界も「格差社会」 〜国際ダイオキシン会議 in 東京〜 青山貞一 武藏工業大学大学院教授 株式会社環境総合研究所所長 掲載日:2007年5月3日 |
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2001年の韓国慶州で開催された国際会議から毎年参加し、学術発表してきた通称、国際ダイキシン会議、正式にはInternational Symposium on Halogenated Environmental Organic Pollutants and POPs がこの9月東京のホテル・オークラで開催される。 私たち環境総合研究所の研究員は今年も参加し、発表することになっている。
問題はその国際会議への参加登録料である。 *国際ダイオキシン会議のオフィシャルWEB 今までも5万円−6万円と高額だったが、東京のホテルオークラで開催される今年の参加登録料は、何と8万円−9万円である。もちろん、学生や大学院生向けの割引はあるが、その場合でも、4万円−4.5万円の参加登録料がかかる(以下を参照のこと)。 海外から参加する研究者等はこれに往復の航空運賃、成田から東京までのリムジン、ホテル代などが別途かかる。9月上旬の航空運賃はたとえば10月中旬の2倍ほど高額である。したがって、来る国にもよるが、航空運賃だけ、20万円〜40万円、1週間、東京都心部の少しまともなホテルに泊まれば1泊、2万円、ホテル代だけで14万円は下らず、総額で50万円弱もかかることになる。 私たち環境総合研究所の研究員は、2001年以降、昨年のノルウェー以外すべて参加してきた。韓国の慶州、スペインのバルセロナ、ドイツのベルリン、米国のボストン、カナダのトロントである。これらの参加登録料はいずれも5万円前後であったが、東京での開催が8万円−9万円と一気に高額になったのである。 私の大学の同僚や学長にこれを話したが、参加登録だけで8万円−9万円と言うのはあまり聞いたことがないとのことだ。 今回は地の利がある日本の東京での開催と思ったが、参加登録だけでひとり8万円〜9万円、それも日本を代表する高級ホテルでの開催と聞くと、一体何のための国際会議、国際学会かと首をかしげたくなる。 製薬会社や焼却炉メーカー、試薬会社などと全く関係なく、100%、大学の自分の経常研究費で参加するとなると、これは大きな負担である。 これでは貧乏研究者やスポンサー、パトロンがつかない研究者は参加かするな、といっている(いわれている)ようなものである。 まさに学術の世界にも著しい格差社会が到来したことになる。これが東京発となると、大きな疑問を感ぜざるをえず、黙ってはいられない。 東京だから何でも高いのは事実だが、それでも夏期休暇中の大学のキャンパスなどを使えば、会場実費はかなりリーズナブルになるだろうし、各種パーティーなどは、オプショナルとしてもよいだろう。 事実、ベルリンで開催したとき発表会場はベルリン工科大学であった。 ベルリン工科大学で開催された国際ダイオキシン学会で 学術発表する池田こみち氏(左端)。右は座長。 そういえば、あまりにも持ち運びに重く、参加者に不評だった予稿集(5−7分冊となり実際非常に重かった)は数年前からCDーROMとなり、昨年からはそれすら参加時に配付されず、WEB上のPDFで見ることになった。 にもかかわらず、上記の参加登録料は??である。 この手の1000名近く参加する国際会議の開催には、企画会社とホテルがつるんで....などと言うことをよく聞くが、ひょっとすると、学術の世界もその例外ではないかも知れない。 大学などの研究者はいくつもの学会、国際会議で毎年研究発表しているので、もし他の国際会議、学会などの参加登録料が8万円−9万円となったら、圧倒的多くのスポンサー、パトロンがつかない研究者は、財政面で破産することになろうだろう。 またもともと乏しい予算しかないNPO/NGOなどの発表は金銭面からも期待できにくくなるのは間違いない。 他方、タミフルの副作用研究に中外製薬が高額の研究費を補助してたことが大きな社会問題となっているが、ことダイオキシンなどでは、世界に冠たるゴミ焼却主義を進める我が国の環境省などから多額の研究補助や委託研究をもらっている研究者、焼却炉メーカーや試薬メーカーから研究費をもらっている研究者以外はなかなか研究発表はもとより、発表を傍聴すらできないことになりかねない。 事実、2001年秋、お隣の韓国開催された国際ダイオキシン会議には、日本から焼却炉、・溶融炉メーカーの研究者やそこから補助金をもらっている大学などの研究者が500−600人大挙しておしかけ、他国参加者の顰蹙をかっていた。 つづく |