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洞爺湖サミット(6)

破綻したG8国家経済モデル

青山貞一
掲載月日:2008年7月11日
無断転載禁



●破綻したG8国家モデル


 私は、G8以外の国々にとって、G8モデルは破綻した国家モデルであると思う。

 今回の洞爺湖サミットはそれを印象づけた。かつ、私たちはそれを強く認識し、肝に銘ずるべきだ。

 洞爺湖サミットに反対しているNGOは、「何でG8サミットなんだ、世界には他に国がたくさんあるだろう!」とテレビのインタビューに答えていた。

 まさにその通りである。洞爺湖サミットでは、G8会合そしてMEMにまったくお呼びがかかっていない重要な国々があった。

 調べてみればすぐに分かることだが、戦争と自然破壊に明け暮れた20世紀から私たちは21世紀に環境、福祉、教育、外交などを重視した国、地域作りが問われている。

 そこではいつまでも、経済成長至上主義でなく、国民から信頼される国づくりが求められる。国民から信頼されない政権や国は、何をしてもダメだ。


ローマクラブ「成長の限界」による警告

 図1は今から35年以上前に人類の危機リポートを世に問うたローマクラブ(The Club of Rome)の「成長の限界」報告の一説である。私はこのローマクラブの日本事務局に9年間在籍していた。


図1 世界モデルのシミュレーション結果(標準ケース)
   出典:ローマクラブ「成長の限界」1970

 ローマクラブの「成長の限界」では、35年以上前にこのまま推移すると、2050年近くに地球全体としてシステムダウン、すなわち主要資源や一人当たりの食糧は枯渇し、一人当たりの工業生産は著しく落ち込み、二酸化炭素増加による温暖化や環境汚染が進み、最終的に増加している地球規模の人口は減少することを予測している。

 多くのひと、とくにG8諸国のひとびとは、技術開発で新たな資源が開発されれば人類は21世紀後半も生き延びられると考えるだろう。日本や米国はそう考える最右翼だ!


図2 世界モデルのシミュレーション結果(資源が無尽蔵な場合)
   出典:ローマクラブ「成長の限界」1970

 図2はもし世界の資源、とくに化石燃料や原子力のウランが枯渇しない、すなわち無尽蔵にある場合のシミュレーション結果を示している。

 図では資源は枯渇していないが、地球全体は汚染が極大化することでシステムダウンし、一人当たりの食糧や工業生産、人口は激減している。

 ローマクラブの「成長の限界」報告が意味する本質は何か?

 それは世界各国がいずれも物的成長を求めた場合、すなわち成長至上主義となった場合、2050年から2100年の間に地球規模でのクライシス、システムダウンが起こるということである。

 G8諸国は当然のことだが、中国、インドなどの新興国、さらにMEM諸国も、国家モデルの基本は、経済成長であり、物的成長であるはずだ。となれば幾何級数的に増加する鉱物資源、エネルギー資源、食糧は早晩枯渇し、仮にオイルシェールやオイルサンドなど新たな化石燃料の開発、石炭の液化技術が開発された場合でも、温暖化は食い止められず地球全体がシステムダウンすることになる。

 さらに原子力は決して救世主とならない。原子力発電のためのウラン235は有限である。G8諸国の誘導により、今後、G8諸国がそして中国、インドなどの新興国が原子力発電建設に走り、さらにMEM諸国も原発に走れば、当然のこととして化石燃料より先にウランは枯渇する。

 各国がプルサーマルや高速増殖炉などを建設しプルトニウムの再利用に向かえば、放射能汚染のリスクは地球規模で高まるだろう。

 いずれにせよ、地球規模で各国が成長路線を選択した場合には、人類の危機は避けられない。これがローマクラブ「成長の限界」の警告である。ローマクラブは、G8など先進諸国は出来る限り、成長を抑制することを提案しているが、おそらくそれだけで危機は回避できない。

 現在までに人口爆発している新興国の経済成長、経済発展のあり方にその行方はかかっているだろう。いずれにせよ、異常にひたすら成長を追い求めてきたG8諸国が従来の路線を悔い改めることが肝心である!


つづく