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パソコン大手のデルが経営難!?
青山貞一
掲載月日:2013年1月25日 独立系メディア E−wave


 過去、順風満帆できた米国の大手パソコンメーカー、デルが経営難に陥っているらしい。以下の記事は、デルに米国の大手ソフトウェア会社、マイクロソフト社が10億〜30億ドル(約880億〜2650億円)の出資を検討しているというものだ。

◆米MS、デルへ最大30億ドル出資か 米メディア
 2013.01.23 Wed posted at 15:09 JST

マイクロソフトがデルへの出資を検討か

 ニューヨーク(CNNMoney) ソフトウエア大手の米マイクロソフト(MS)が大手PC(パソコン)メーカーの米デルに10億〜30億ドル(約880億〜2650億円)の出資を検討している。米CNBCテレビが23日までに報じた。デルは業績不振が続いて上場廃止の観測も浮上している。

 マイクロソフトが10億〜30億ドルを出資した場合、現在のデルの時価総額230億ドルで換算すると、4〜13%を保有することになる。

 一方、デル創業者のマイケル・デル最高経営責任者(CEO)の保有分は16%(35億ドル相当)あり、マイクロソフトの出資を受けたとしても、同社を上回
る経営権は維持できる見通し。

 デル、マイクロソフトとも、この件についてのコメントを避けた。

 デルへの出資はマイクロソフトの戦略的にも理にかなう。同社は最新版のOS(基本ソフト)「ウィンドウズ8」に多額を投じてきたが、PCとタブレット端末の販売は伸び悩んでいる。もしデルに対して直接的な影響力を行使できれば、自社の構想に沿ったウィンドウズ8の搭載端末をデルに製造させ、ライバルに対抗できる。

 例えば、現在デルのタブレット端末はウィンドウズ8のみを搭載しているが、今年半ばになっても不振が続いた場合、マイクロソフトと競合するグーグルのOS「アンドロイド」に目を向けるかもしれない。

 アップルはソフトウエアとハードウエアの両方を統制するモデルで実績を挙げている。グーグルも昨年、通信機器大手の米モトローラ・モビリティを買収した。同社に高性能端末を製造させ、アンドロイドの推進につなげる計画だ。

 デルの経営が経営難であるという情報は、すでにデルのパソコンを使っているユーザーから流されていました。


●デルの顧客離れはアフターサービスの悪さ?

 デルのパソコンは、日本の大手メーカーより遙かに価格面で良心的といえます。そこには、

1.インターネット利用による高効率・低コストモデル
2.最高の顧客経験の提供、
3.パートナーシップSCMによる仮想統合
の3原則。

 さらに、デルの21世紀の企業戦略には、本来、以下の

1.メーカー主義→消費者主義、
2.大量見込み生産→多品種少量受注生産、
3.間接販売→直接販売、
4.大量広告(Mass Marketing) →One to One Marketing
5.使い捨て・産業廃棄→リサイクル、
6.垂直統合(Vertical Integration)→仮想統合(Vertual Integration)へ

があったはずです。

 しかし、デル社のアフターサービスの問題点は、かなり前から指摘されていました。

 デルのアフターケア部門は、現在、中国の大連のテレホンセンターにありますが、電話に出てくる中国人担当者の日本語がたどたどしいにはじまり、そのひどさはかなりのもののようです。以下を読んでもらいたい。

 具体例:これでもDELL買いますか?DELLは倒産危機ですか?

 DELLサポートで困ってます

 DELLのサポートがあまりにひどい件。ことしの暑さで部品が変形したとのこと・...

など、およそ信じられない対応です。

 もちろん、この種のことは他のメーカーでもあります。買って1年ちょっとのヒューレッドパッカードのノートパソコンの起動しなくなり、HPに連絡したら何と3万5千円かかると言われ、自分で調べたらハードディスクの不調であることが分かり、内蔵ハードディスクをアキバで6000円で買って直したことがあります。

 ただ、上記のクレームにあるようにデルはサービスセンターを大連に移してこの方、保証期間を過ぎると、一回電話するだけで3150円をとられるというところにまできており、深刻なようです。

 私は大学の研究室ではある時まで学生室を含めデルのパソコンを10台ほど導入しており、また自宅では妻ががずっとデルを使っていましたが、さまざまな故障や不具合も多く、電話しても対応が悪く妻も怒りだしました!

 さらに一昨年、研究費で購入したデルのパソコン4台のうちのひとつの液晶ディスプレーが学生室で火を噴いているのを学生が発見し、大学の総務課に連絡し、交換してもらったこともあるなど、およそあり得ないことも起きています。

 結局、私はその後、事務用でもデルはやめ、BTOや自作パソコンにし、妻は秋葉で購入した中古の東芝のノートPC(3万円弱)を使っています。

 さすがノートPCは東芝ダイナブックで、もう3年目に入りますが、XPマシンはまったく問題なく使えています。


●パソコンメーカーとは言っても部品を組み立てるだけ

 周知のように、デル(米国)はじめレノボ(中国)、エーサー(台湾)など大手パソコンメーカーの圧倒的多くは、自分の会社で部品をほとんど作っていないことに特徴があります。

(1)CPU
 部品を見れば、たとえばパソコンの心臓部であるCPUは、米国のインテル社とAMD社が圧倒的です。チップセットについても同様にインテル社とAMD社のものです。もちろん、製造そのものを米国で行っているかどうかという問題はあります。
  CeleronG550で3,500円、Core i5 3550で18,000円程度

(2)マザーボード
 次に、CPUやメモリーを乗せるマザーボードは、ASUSTek(台湾)、Gigabyte(台湾)、MSI(台湾)の台湾のメーカー3社が圧倒的なシェアをもっています。その他としては、CPUメーカーのIntel社もCPU、チップセットだけでなっくマザーボードもつくっています。その他、マザーボードのメーカーには、ASRock(ASUSTekの子会社)、Foxconn、
Elitegroup Computer Systems(ECS)、ABITなどがあります。ただし、シェアは冒頭の台湾3社が圧倒的です。
 H61系で 3,500円〜7,000円程度

(3)ハードディスクドライブ
 次はハードディスクドライブ(HDD)です。先のタイの大洪水でHDDの価格が高騰(通常の2−3倍)したことで分かるように、製造は圧倒的にタイなど東南アジア諸国です。HDD大手のWD(Western Digital)、Seagate社は米国企業です。日本の東芝、日立もHDDを製造していますが、製造はやはり東南アジア諸国が大部分です。
 500GBで6,000円、2TBで10,000円、3TBで20,000円程度

4)主記憶(メモリー)
 CPUとともに使う主記憶は、東芝など日本の純正品はバカ高く自社製で使う以外BTOショップでは部品としても売られていません。販売代理店は日本の会社が多くありますが、製造やはやり台湾や中国であることが多くなっています。たとえば、I-O DATA 、BUFFALO 、SAMSUNG、CFD、A-DATA、CENTURY MICRO、Corsair、Transcendなど多数あります。製造がどこであれ、日本メーカーのメモリーは高額です。
 4GBで3,500円、8GBでも5,000円以下

(5)CD/DVDマルチドライブ
 CD、DVDなどを読み書きするドライブは、韓国のSamsung、台湾のLITEON、ASUSTeKなどが主流であり、パイオニア、ソニーなど日本勢はブルーレイ以外では価格面で劣勢です。
 Liteon製で1,700円、パイオニア製で2,500円程度

(6)ケースと電源
 ケースや電源には日本のScytheのような中小メーカーやそのOEMもありますが、やはり米国のAntecなど海外メーカーが多いのが特徴です。
 電源付で通常小売り価格 5,000円〜15,000円

 周知のようにパソコンに不可欠なOSは、アップル社系をのぞけばマイクロソフト社のWinddowsが独占的シェアを持っています。マイクロソフト社は独占的シェアを利用し、アプリケーションソフト、たとえば主力のOFFICEなどでも一貫して高価格路線を続けています。デルやBTOショップなどには、ハードウェアと抱き合わせのWindowsのDSP版を出荷していますが、それもで市場価格は安くても1万円と高額であり、これがパソコン価格の競争力を阻害しているとさえ言えます。
 DSP版で9000円から15000円

 以上が、パソコンに使われている部品ですが、価格から見ると、パソコンの部品でもっとも価格がはるのがインテルやAMDのCPUとマイク ロソフトのWindowsなどOSは米国製の部品です。これが全体の1/3から1/2となります。

 ここでわかったこととして、デル、レノボ、HPはじめ多くのパソコンメーカーがしていることは、部品を大量に仕れて、組み立て後、ケースに自社のロゴを入れて出荷するだけなのです。

 それは、日本のアキバに多数あるパソコンBTOショップとほとんど変わらない存在なのです。もちろん、部品を集めれば、後はコードで繋ぐだけですので、それこそ中学生でも組み立ては可能です。半田ごては不要、ドライバー一本でokです。


結局ポイントは一括大量仕入れと安い労働力

 したがって、大手メーカーとは言っても、CPUはじめ上記の部品を一括して大量に仕入れることで仕入れ原価を下げさせ、安い労賃による人海戦術で組み立て出荷しているのです。

 これを技術面で見れば、何らアキバなどに多数存在するBTOショップのものとほとんど変わらないものとなっています。

 ちなみに、アキバのBTOショップの場合、いずれも零細企業で資本力に乏しいため、それほど内外の部品メーカーから一括大量購入することができず、仕入れ原価が結構高くなっている現実があります。

 一方、ソニー、NEC,東芝などの国内家電メーカーがしていることはBTOショップと変わらないものの、資本力で仕入れ原価は安くなっているにもかかわらず、日本的商慣行で価格を高い水準に設定してきました。

 日本の多くのユーザーが上記についての知識、認識に乏しく、さらに上場企業の名があれば安心して買うということもあったと思います。

 昨年、日本のBTOショップのうち、山口県に本拠を置くフロンティアというBTOパソコンショップが山田電機の傘下に入った途端、大量仕入れのメリットからか販売価格が数あるBTOショップより2−3割も廉価で最新CPUを使ったPCを大量に売り出しました。

 BTOパソコンは大手家電メーカーパソコンに比べ、もともと大幅に価格が低かったのですが、そのBTOショップの世界でさらに2−3割も安かったのは驚きでした。

 ただ、今年に入ってから急激な円安の影響もあってか、フロンティアの製品価格は高くなっており、他のBTOショップと比べそれほど割安感はほとんどなくなっています。
 
◆青山貞一:Core i7 3770 BTOマシンの費用対部品比較 

 私の経験では、通販であれ、アキバで関連部品を調達し、自分で組み上げた場合、日本のメーカーの半額以外となりますが、アキバなどにあるBTOショップの価格と比べるとほとんど同じとなっています。

 デルやレノボなどの製品価格は、自作あるいはBTOショップと日本の大メーカーの価格のちょうど中間程度と言ってよいはずです。 


●パソコン離れの大きな流れ

 デルの場合、資本力に物を言わせ部品の大量仕入れをし、人件費を下げるために組み立てをアジアや中南米で行ってきたわけですが、先に述べたように、アフターケアを中国に外注したことで、ユーザーの怒りを買うことになったといえます。

 しかし、上記の理由とは別に、日本のデジタル家電メーカーがテレビが売れなくなり、巨大な赤字を出したことに類する流れをさがすとなれば、次のようなことが言えるかも知れません。

1)パソコンがデジタルテレビ同様先進国の世帯にほぼ行き渡っていること、
2)パソコンの低価格化と価格競争が激化していること、
3)若者がスマホなどに投資し、結果的に電話代にかなりの金がかかり、
4)パソコンの代替となっている事実があります。そもそも若者は便利であればよく、受動的なのでパソコンは不要というわけです。

 もともとBTOショップのパソコンを買ったり、自分で部品を購入し組み立てているひとは全体の一部であるとすれば、パソコン並みの高機能スマホの誕生ですでにデスクトップ、ノートを問わずパソコン離れが進んでいる現実が世界的にあるのかも知れません。

 そして、私のように高速のPCをBTOや部品を買い集めて5万円でパソコンを組むという若者はおそらく超少数派であり、5万円あればiPhone5を買うというようにパソコン
離れが進んでいるはずです。

 もちろん、企業の業務、調査研究、学術、公共施設などでのパソコン需要は今後もつづくでしょうが、パソコンも猫も杓子の時代は過ぎているのでしょう。