総選挙結果へのコメント 青山貞一 掲載月日:2012年12月18日 version 1.1 独立系メディア E−wave Tokyo |
以下は、今回の総選挙結果への青山貞一からのコメントです。 1)総選挙の背景には、この3年間、民主党が八ッ場ダム建設 再開はじめマニフェスト、公約をことごとく反故にし、他方、 有権者が頼んでいない消費税の増税や原発輸出支援、 武器輸出緩和までを行い、有権者、国民に大顰蹙を かっていたこと、 2)同時に、原発事故対応と被災地復旧復興のあらゆる場面で 醜態をさらし、対応が遅れたこと、復旧、復興予算を各省庁 が被災地支援と全く無関係の事業に使うなどおよそ官僚機構 の統治ができていなかったこともある。 3)自民、民主などがことさら、外交、防衛政策や経済政策 を争点にしようとしていたこと、具体的には選挙期間中に 北朝鮮ミサイル発射、尖閣諸島領空侵犯などことさら 右翼を刺激するような事象をマスコミが大きく取り上げ、 いわゆる自民党への流れを助長する「三種混合ワクチン」が 一層、鵜呑み度の高い国民を惑わせることになったことが 挙げられること、 4)大マスコミが2)に対応するとともに、脱原発、消費 税増税、TPPなど、本来争点にすべきテーマぼかしに 奔走したこと、 ※青山貞一:政党別の政策大チェック 5)もともと大マスコミを70%以上の国民が鵜のみにす る日本にあって、頻繁に行われた世論調査により、自 民党圧勝のアナウンス効果が大きく作用したこと、 http://eritokyo.jp/independent/aoyama-fnp14170.html 6)大マスコミがいわゆる「第三極」のうち、実態がなく 矛盾に満ちた政策の「日本維新の会」を徹底的に報道 したこと 7)他方で脱原発、減税、反TPPなどを明確にした 「日本未来の会」を徹底的に無視したり、必要以上に ネガティブキャンペーンを張ったこと。これには選挙 公示直前に無罪が確定した小沢氏への異常なバッシン グも含まれる。 さらに上記に加え、従来より分かっていたことではあるが、 8)今回の総選挙は投票率が非常に低かったことで、無党 結果的に無派層、若年層の票が著しく少なかったこと。 青山の調査によれば、従来から高齢になればなるほど、 とくに60歳以上の自民党支持率が著しく高く、 逆に20−30代の自民党支持率は低いことが分かっ ている。 郵政解散・総選挙前の自民党および無党派支持率(前) 2005年8月5日〜8日 出典:前田幸男:最近の時事世論調査における政党支持率と内閣支持率より青山貞一、池田こみちが作成 郵政解散・総選挙後の自民党および無党派支持率(後) 2005年9月14日〜19日 出典:前田幸男:最近の時事世論調査における政党支持率と内閣支持率より青山貞一、池田こみちが作成 ライフドアショック後の自民党および無党派支持率 2006年2月10〜13日 出典:前田幸男:最近の時事世論調査における政党支持率と内閣支持率より青山貞一、池田こみちが作成 表1 選挙前後における自民党及び無党派支持率の変化 出典:前田幸男:最近の時事世論調査における政党支持率と内閣支持率より青山貞一、池田こみちが作成 9)中小政党の議席獲得に厳しい小選挙区制の弊害が顕著 にあらわれたこと、 10)小選挙区制では、できるかぎり中小政党がオリーブの 木ないしそれに類する方法で一本化しなければ、議席 が取れない、 11)にもかかわらず、理念、政策の違いだけでなく、社共など の既成政党は既得権益や組織論にこだわりつづけ、 社民党や新党日本はその典型であり、その結果として その存亡が危ぶまれている。 12)上記の結果、多数の小政党が乱立してしまった。せめて 各小選挙区での選挙協力が行われればよかったが、それ もほとんどなされなかった。いつものことんがら「唯我独尊」 の共産党が全小選挙区で立候補したため、全国規模で 死票が増えた。 13)小選挙区制により、自民党は従来とさして変わらぬ 得票数(27%程度)で、全体の6割以上の議席を得 たこと。これについては、別途巻末の表を参照のこと、 以下は、今回の選挙のうち、政党別の比例得票数をもとに単純に全衆院の議席数(480議席)を割った場合の議席数です。以下の表によれば、自民は131議席にしかなりません。逆に、中小政党は大幅に議席が増えることが分かります。 《2012年の選挙データ》 自民党は27.5%の得票率で61.3%の議席を獲得! ※全国の比例得票総数を基準に万票単位で計算
出典:吉川ひろし氏(元千葉県議)データより作成 得票数と議席数のギャップ(小選挙区) 出典:毎日新聞 2012年12月17日 14)大政党となった自民党が小選挙区制を中選挙区制に 変えるとは考えられないとすると、中小政党の乱立は 結果的に自民党一極支配に利することになること、 15)結果として、国民の60−70%が脱原発の意向をもって いることに反し、実質的に原発推進の自民党さらには 公明党が全体議席の70%近くを取ってしまった。 16)圧勝した自民党などは、原発推進のみならず、国土 強靱化(鉄とコンクリートの公共事業推進)計画、新自由 主義に基づく規制緩和により格差拡大、はては集団的自 衛権から憲法改正に至る政策を順次推進する可能性が 大である。 憲法改正については、自民党は憲法96条の改正を言明しているが、そのためには当然のこととして、参議院において自民党が2/3以上の議席を得なければならない。というのも、現時点では公明党が憲法改正に難色を示しているからである。 しかし、民主党、日本維新の会、みんなの党などが憲法改正に前向きであることから2013年夏の参議院選挙結果いかんでは、衆参ともに改憲派が2/3を超す可能性もある。 17)周知のように今回の総選挙は最高裁の「違憲状態」判断のなかで強行された選挙であった。野田総理は、違憲を知っていながら敢えて選挙を断行したことになる。当然、今回の総選挙結果が提訴されるであろう。 18)今回は、本来、米国の週単位で行われているイニシアティブ(住民投票)ないしレファレンダム(法案賛否投票)に類する直接民主制度で脱原発の是非を国民が判断すべきものであったと思える。その意味で、日本の地方自治法にある直接請求ではなく、米国型のイニシアティブ(住民投票)ないしレファレンダム(法案賛否投票)の直接民主主義制度こそ、日本社会に必要であるとと思う。 |