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いわき市被災地視察+
福島原発事故シンポ報告


青山貞一 Teiichi Aoyama
東京都市大学環境情報学部教授
環境総合研究所所長
掲載月日:2011年4月20日
 独立系メディア E−wave
無断転載禁


 親友の福島県いわき市在住の弁護士、広田次男さんの依頼もあり、2011年4月15日(金)の夜から4月17日(日)の夜まで、青山貞一、池田こみち、鷹取敦の3名は、つくば市経由で福島県いわき市の地震・津波被災地、それにいわき市北東部の北にある福島第一原発から10km〜20km圏にある双葉郡楢葉町、同広野町、さらにいわき市の南端に接する茨城県北部の北茨城市などを視察した。

 視察翌日の17日、いわき市の広田法律事務所で環境研究者、環境弁護士、地元の被災者、被影響者、漁協関係者、事業者を対象に原発大事故の原因とその環境や健康への影響に関するシンポジウム(講演、報告会)を行い、終了後、弁護士と今後の対応を協議し東京に帰宅した。

 以下はその概要。

◆2011年4月15日(金)

 青山が勤務する東京都市大学横浜キャンパス(環境情報学部)の公共政策論の授業終了後、横浜市都筑区から池田さんの乗用車(ヴィッツ)で東京23区一般道、常磐自動車道を経由しつくば市に向かった。

 つくば市到着後、やはり友人の坂本博之弁護士宅に伺った。坂本さんは16日、17日のいわき市視察、シンポジウム、打ち合わせ会合に一緒に参加される。

 さらに坂本弁護士の奥様が東日本大震災後、被災地の福島県内で行っている犬、猫の保護活動についてお話を伺った。
◆池田こみち:被災地域からのペットの救出:その実態 

◆2011年4月16日(土)

 青山貞一、池田こみち、鷹取敦(以上、環境総合研究所)と坂本弁護士は、坂本さんの乗用車(ボルボ)で、つくば市から常磐自動車道を北上、いわき市に向かった。


坂本事務所でヴィッツからボルボに機材、荷物の入れ替え
撮影:青山貞一

常磐自動車道などでは自衛隊の災害派遣車が多数走っていた
撮影:青山貞一

 いわき市到着後、いわき市中心部にある広田法律事務所に到着、私たちの到着とほぼ同時に、東京、つくば市から来た長瀬弁護士兄弟も広田法律事務所に到着した。


広田次男弁護士(いわき市在住) 撮影:青山貞一


いわき市の広田法律事務所の駐車場にて 撮影:青山貞一

 昼食後、青山、池田、鷹取、坂本弁護士、長瀬弁護士兄弟の6名は乗用車(セルシオ、プリウス)2台に分乗し、福島弁護士会いわき支部で今回の大震災に関連し、震災対策委員長となった広田次男弁護士の先導で、福島第一原発の南15kmの双葉郡楢葉町から双葉郡広野町、いわき市浜通り全域そして北茨城市まで海岸線約60kmをくまなく現地視察した。
 
 以下は訪問、視察した被災地名を北から南にかけて列記する。

これより北は立ち入り禁止
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双葉郡楢葉町 東京電力 福島第2原子力発電所があるまち
双葉郡広野町 東京電力 広野石炭火力発電所があるまち

広野町にある巨大な火力発電所(停止中)

双葉郡海浜公園
いわき市末続
いわき市久ノ浜 

久之浜地区 撮影青山貞一

久之浜地区 撮影青山貞一

いわき市波立
いわき市四倉港
いわき市新舞子
いわき市沼ノ内
いわき市豊間
いわき市薄磯

いわき市薄磯地区 撮影青山貞一

いわき市薄磯地区 撮影青山貞一
◆池田こみち:福島県浜通り いわき市平薄磯地区 被害の実態

いわき市江名

いわき市江名地区 撮影青山貞一

いわき市江名地区 テトラポットが堤防の内側に来ている
 撮影青山貞一

いわき市中之作港

いわき市中之作港 撮影青山貞一

いわき市永崎
いわき市小名浜漁港
いわき市小名浜港

小名浜港にて  左から長瀬弁護士、青山、池田こみち
撮影青山貞一

いわき市塩見台
いわき市小浜
いわき市勿来(なこそ)
北茨城市五浦
北茨木市六角堂
北茨城市大津港 

 道中、デジタル放射線検知器で放射線量を計測しながら進んだ。以下は、地点別の放射線量である。測定は鷹取敦さんが行った。


放射線検知器 撮影 鷹取敦

放射線検知器 撮影 鷹取敦

2台の車での放射線量などのやりとりにはブラックベリー(BB)が使われた
 撮影 鷹取敦

 なお、検知器は、米国製の簡易型放射線検知器(ガイガーカウンタ)DX−2であり、ベータ線、ガンマ線、エックス線を測定できる。

4月16日 午前 南南東の風

●つくば市からいわき市へ

つくば市 約 0.1μSv/h
日立中央パーキングエリア 約 0.2μSv/h
高萩市 0.2〜0.5μSv/h
いわき市・中心部あたり 約0.2μSv/h

●いわき市北上

いわき市久ノ浜 0.2〜1μSv/h
双葉郡広野町、広野町役場ふきん 0.5〜1μSv/h
広野町火力西側 0.5〜1μSv/h

20キロ圏で南下

双葉郡広野町、広野火力南側  最大3μSv/h
双葉郡広野町役場ふきん 0.5〜1μSv/h
いわき市久之浜 0.5μSv/h程度

●豪雨

いわき市四倉漁港  0.1μSv/h
いわき市・中心部に戻る 0.2μSv/h

■4月16日 午後 西北西風

●いわき市南下

いわき市・中心部 0.1〜0.2μSv/h
薄磯 約0.2μSv/h
小名浜へ 0.1〜0.3μSv/h
常磐(ときわ)火力 約0.3μSv/h
大津港 0.1未満

■4月16日 夕方 北西風

●北上

小名浜 約0.4μSv/h
いわき市・中心部 約0.5μSv/h

■4月17日 午前 東南東風 

いわき市中心部 
地上1.2m  約0.2μSv/h
地面 最大1μSv/h

 福島県のいわき市浜通り地区は、3月11日の地震、津波により想像を絶する壊滅的な破壊を受けており、唖然、呆然とするばかりだった。

 海浜地域、港はもとより海に川が流れ込んでいる地域では、上流約1kmにわたり家屋や施設が破壊されている地域もあった。そのものすごさは筆舌に尽くせないものであった。

 一方、いわき市の北東部は双葉郡を経て福島第二原発、福島第一原発の南側に位置しており、国道6号線は双葉郡楢葉町の南端で立ち入り禁止となっていた。このあたりの放射線量は最大3μシーベルト/hだった。


◆2011年4月17日(日)

 4月17日午前中、広田次男弁護士の事務所で、福島第一原発がある双葉郡大熊町の医師、第二原発がある双葉郡楢葉町の被災者へのインタビューを3時間近く行った。親族、知人の多くが津波で亡くなった方々も多数いた。


被災地住民インタビュー 左は池田こみち環境総合研究所副所長
撮影 鷹取 敦

被災地住民インタビュー 撮影 鷹取 敦

 この地域は永年、原発に依存してきた地域で、とくに大熊町の人口の90%は事業者(東電)に直接・間接に生活や仕事を依存してきたとのこと、また各種交付金、補助金がどう具体的に使われてきたかなどの話が詳細に聞けた。

 被インタビュー者には原発周辺の医師もおり、3.11以降現在までの経過、実態が詳しく聞けた。

 17日午後は、広田法律事務所に福島県、茨城県、東京都の弁護士が約20名、いわき市の被災者、原発地区の住民、漁業、農業関係者ら40人が集まり講演会、報告会、討議を広田弁護士の司会で行った。


司会の広田次男弁護士 撮影 鷹取敦

講演 青山貞一  東京都市大教授、 環境総合研究所所長 

 私の講演は、環境総合研究所の自主研究による原発事故によって発生した放射性物質が周辺地域、関東、東北地域にどう拡散するかについて、3次元流体モデル(数値計算モデル)を使ったシミュレーション結果の報告である。

 福島第一原発事故で発生した放射線の広域的、局地的な移流・拡散シミュレーションの報告であり、原発事故によって発生した放射線の(1)発生強度、同期間の風向、風速、大気安定度などの(2)気象条件、それに国土地理院の詳細な(3)地形を基本データとして、この間、実際に研究所で行ってきたシミュレーション結果をビデオプロジェクターを使って報告した。


青山貞一講演 撮影:鷹取敦

青山貞一講演 撮影:鷹取敦

青山貞一講演 撮影:鷹取敦

 数値計算モデルは原子力研究機構のシミュレーションモデルであるSPEEDIとほぼ同じ構成、構造で有限差分法を用いた3次元流体モデルである。
                
報告 伊東達也氏  

 伊東さんは地元福島県在住の原発問題専門家、チェルノブイリを2回現地視察している福島第一原発の構造、技術的な課題の報告である。 


伊東達也氏報告 撮影:鷹取敦

伊東達也氏報告:東京電力福島原子力発電所事故の周辺スケッチ 2011.4.17

コメント1 安斎教授  

 東大工学部原子力工学科一期生で現在、立命館大学特命教授(原子力工学の専門家)によるコメント。


安斉教授のコメント  撮影青山貞一

コメント2 江川詔子さん

 東京から参加したジャーナリスト江川詔子さんのコメントがあり、その後午後3時40時まで参加者との間で質疑応答を行った。


江川さんのコメント 前左前は只野靖弁護士 撮影青山貞一

江川さんのコメント 撮影 鷹取敦

 さらに講演・報告会終了後、いわき市の広田弁護士、菅波弁護士、越前屋弁護士、つくば市の坂本弁護士、東京の只野弁護士、長瀬弁護士(兄弟)及び地元いわき市の若手弁護士ら16名の弁護士と青山貞一(東京都市大、環境総研)により、今後の対応について、原子力損害賠償法などの行政法や民法などによる救済の可能性について、得られる科学的データをもとに約1時間30分討議し、終了後、つくば市経由で帰宅した。

関連ブログ
◆鷹取 敦:いわき市被災地 現地視察
◆池田こみち:東日本大震災後の廃棄物処理の課題