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福島第一原発事故による
放射線汚染の詳細調査
(東京都市大学青山研究室(横浜市都筑区)+
環境総合研究所(東京都品川区))

青山貞一 Teiichi Aoyama
池田こみち Komichi Ikeda
鷹取敦 Atsushi Takatori
掲載月日:2011年6月17−20日
独立系メディア E−wave


 2011年6月17日夜から6月20日夕方の3泊4日の予定で福島県内各所を中心に放射線の空間線量測定を行った。以下はその速報である。調査結果や関連論文は別途詳報する予定である。

1.調査の目的
 福島第一原発事故に伴う放射線汚染の実態を福島県内を中心に高精度の測定器で把握することにある。

2.調査の体制
 本調査は東京都市大学青山貞一研究室と環境総合研究所の共同研究として行なう。調査(測定分析、評価、解析など)は、青山貞一、池田こみち、鷹取敦の3名で行った。

3.調査の日程
 2011年6月17日夜から6月20日夕方の3泊4日

4.調査の詳細内容
 主にガンマー線など放射線量の測定を以下の要領で行った。今回の調査では、大別し次を行った。

1)各所で車から降り、地上(1m)及び地表面(5cm)で上記の測定器を用い記録し、測定地点はGPSで衛星を使い計測し記録する。

2)車での移動中、地上約1mの高さで携帯測定器で計測し、測定地点はGPSで衛星を使い計測し記録する。

3)調査で使用した測定器
 今回は4台の放射線計測機(日本製、ロシア製、米国製、中国製)を用い測定するとともに、測定器の精度評価を兼ね測定を行った。4つの測定器のうち、日本製は東京都市大学原子力研究所の備品で公式測定器(γSurvey Meter TCS−171B)としてキャリブレーションを行った上で使用した。


4台の放射線計測機(日本製、ロシア製、米国製、中国製)

4)調査の地点

 自動車での福島県内の調査ルートは、概ね以下の通り。

 東北自動車道→那須塩原→白河→西郷村→天栄村→須賀川市→郡山市→本宮市→大玉村→二本松市→福島大学松川キャンパス→福島市街→二本松市(泊)→川俣町→飯舘村→南相馬市→相馬市→南相馬市→山木屋→川俣町→二本松市(泊)→三春町→田村市→船引町→小野町→いわき市→広野町→楢葉町→広野町→楢葉町→いわき市

 福島県内部分を地図上に示すと以下の通り。赤い線が走行ルートを示す。



5.調査の測定地点数

 測定値点数は以下の通りである。

1)正規測定 64箇所
 (1箇所につき1m、5cmでの測定及び場合により側溝などでの測定を含む。したがって測定数としては約140箇所)


地上5cmでの放射線測定(東北自動車道のPAにて)


地上1mでの放射線測定(西郷町役場前にて)


地上1mでの放射線測定(福島市の住宅地にて)


地上5cmでの放射線測定(福島市の住宅地にて)


地上1mでの放射線測定(飯舘村にて)


地上5cmでの放射線測定(飯舘村にて)


地上5cmでの放射線測定(南相馬市南部の警戒区域線上にて)


地上5cmでの放射線測定(南相馬市北部海浜被災地にて)

2)車内の移動測定
  福島県内 370箇所
  福島県外  47箇所


自動車走行中の測定例


自動車走行中の測定例

7.福島市内での調査中に市民と交流
 福島市内は原発から北北西に60km以上離れているが、当初から放射線量がたかいことが問題となっている。飯舘村を超えて3月12日以降の相次ぐ爆発で放射性物質が拡散し、その後の雪や雨で沈降したものと考えられている。

 福島市内には原発周辺の自治体から多くの市民が避難してきている。私たちは市内数カ所で測定を行ったが、カウンターの音がピピピと聞こえると散歩中の市民が心配そうに寄ってきて数字を覗き込み、立ち話となる。

 福島市内は高いと聞いているがこの辺はどうなんだろうか。子供が学校に通っているが学校周辺は大丈夫だろうか、公園を散歩しているが公園は大丈夫だろうかなど、市民の不安が高まっている様子がうかがえた。

 実際、福島市内の公園内や路端の植え込み、橋のたもとの草むら、学校周辺の土の上、草むらなどの濃度は高く、きめ細かい調査に基づいた対策が必要であることを感じた。

8.調査結果概要
 今後、500地点に及ぶ測定データを地点毎に地上1m、地上5cmのデータを整理し、グラフ化するとともに、福島県全域の汚染地図化(スプライン補間地図化)する予定である。

 さらに、測定結果から国が設定している20km警戒区域の妥当性、小中学校などの子供を対象としたグランド、校庭などでの暫定被曝指針(1-20mSV)の妥当性、地表1m高での測定値と地表面(5cm)での測定値の違いなど、さまざまな課題を分析し、政策提言をしてゆく予定である。

今回の測定調査では、福島市内10個所の平均値が南相馬市小高地区の20km警戒地域(立入禁止地区)の入り口より2.33倍高いことが判明している。

 福島市内の測定値は、いわゆるホットスポットではなく県庁前の紅葉山公園、知事公邸前、大仏橋、信夫橋、清明小学校前などでの測定である。

 他方、南相馬市は国道6号線の浪江に近い小高地区の警戒区域非常線上(機動隊監視線上)である。これより南は20km圏で許可無く立ち入り禁止となっている地区で、住民はすべて避難している。

 これは以前から福島市民や逆に南相馬市長らが危惧していた点であるすが、今回の調査で明確となった。二本松市、郡山市にも逆転地域が多数あった。

 また地上1mで測定した放射線量に比べ地表面で測定した放射線量は最低でも2倍高いことが分かった。子供、幼児が遊ぶ地表面が地上1mよりも格段に放射線が高いことも、上記に加え極めて重要である。

 今回の調査は、いずれも私たちの仮説を実証する結果となりましたが、南相馬市南部では、牛舎がギリギリ2mほど20km警戒区域から外れ生き残っているなど、現場は矛盾だらけで、住民はこの間、国の二転三転する方針に翻弄され疲弊しきっていた。

 もっぱら、南相馬市の20km圏外にも警戒区域より高濃度のホットスポットが何カ所があったが、それらの地域は福島市のような人口密集地ではなく農村、森林地域ないしそれに類する地域であった。

 以上速報