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<概要> 2020年開催が決まった東京オリンピックだが、開催地決定に際しては、福島第一原発事故の影響が事前の記者会見や開催地決定プレゼンの質疑でもでていた。 しかし、現実的に開催に際し予想されるのは、地球温暖化(異常気象)と熱孤島現象による2020年時点での東京を襲う強烈な熱波であろう! 2020年、今年、東京が経験した異常な熱波、猛暑を遙かに上まわるとすれば、野外競技そのものが実質、開催できなくなる可能性もある。 図1 従来モデルによる地球全体の気温と地球温暖化による気温の将来予測 出典:国立環境研究所(NIES) 図2 従来モデルの地球温暖化による気温の将来予測 出典:国立環境研究所(NIES) ◆英学術誌が予想する2020年の気候変動による高温、熱波 2020年開催が決まった東京オリンピックだが、通常、夏期オリンピックは7月末に開催される。 となれば、今年の夏、東京で経験した尋常でない強烈な熱波、猛暑が東京オリンピック開催時、一段と激しくなることが容易に想定される。 と言うのも、近年、日本各地とりわけ東京など関東南部の大都市が経験した熱中症で死人が出るような尋常でない強烈な熱波、猛暑は、言うまでもなく地球温暖化による異常気象そして大都市で発生する熱孤島現象(ヒートアイランド現象)によるものであるからである。 今回、英学術誌「エンバイロメンタル・リサーチ・レターズ(Environmental Research Letters)」に発表された地球温暖化による異常気象は、言うまでもなく過去から現在にわたる二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出によるものであるが、同誌を発行する英国物理学会(Institute of Physics、IOP)は、声明で「21世紀の最初の半世紀において、これらの予測は大気中に排出されるCO2の量に関係なく現実のものとなるだろう」と述べた。 今後は、二酸化炭素(CO2)の排出量に関係なく、気候変動がもたらす熱波は今後30年間でいっそう厳しく、頻繁に起きるようになるというのである。 注)筆者(青山貞一)は、地球温暖化や気候変動は、CO2排出と関係なく、 地球と太陽との相互位置に関連する地軸の傾き、離心率、歳差運動 により10数万年に一度起きる、いわば自然現象であるという立場、す なわわちミランコビッチサイクルに由来するものと考えている。 上図のミランコビッチ・サイクル(Milankovitch Cycle)図の波形の凡例 Precessionp:歳差運動 以下のアニメ図参照 Obliquity::自転軸の傾き 以下のアニメ図参照 Eccentricity: 軌道離心率 Solar Forcing:日射量 Stages of Glaciation」:氷河期 過去10年間の高気温や熱波については、過去起きた気候変動が原因との見方が一般的だが、今回発表された研究によれば、21世紀も同じペースで温暖化が進んだ場合、高温や熱波はさらに厳しく、頻繁になるという。 近年の酷暑をもたらす熱波を、気象学では「3シグマ」の気象現象と呼んでいるが、気候モデリングに基づいた今回の研究では、この3シグマの気象現象が2020年には現在の2倍にあたる地球上の全陸地の約10%に影響を及ぼすと予測している。 出典:猛烈な熱波、止めるには時遅し 酷暑の影響、 2020年に倍増 AFP ◆東京を襲う猛烈な熱孤島現象 上記は、温暖化による異常気象によるものであるが、世界に類例をみない東京のような巨大都市では、これに熱孤島現象(ヒートアイランド現象)が加わる。熱孤島現象は、道路などのアスファルト、ビル、高層ビルなどが昼間の太陽エネルギーを蓄え、また工場(排熱)、ビル(空調)、自動車(排ガス)から出る熱を蓄えることにより、夜間になっても気温が下がらない現象を言う。 世界一超密な巨大都市東京の熱孤島現象は、以前から深刻なものとなっている。 本来、東京湾、東京港は都心の熱孤島現象を和らげる役割をもっている。しかし、周知のように明治以降、東京湾、東京港は次々に埋め立てられてきた。 20世紀後半までに11万7千ヘクタールが埋め立てられ、さらに東京臨海副都心、千葉幕張メッセ、横浜みなとみらい21、そして羽田空港の拡張に次ぐ拡張などにより、さらに数千ヘクタールが埋め立てられてきた。しかも、ゴミや焼却灰、建設土砂などでにより。これらの埋立により、東京湾、東京港がもつ本来の影響緩和機能は著しく退化している。 図3 埋め立てられる東京湾と東京港 出典:青山貞一、テレビ朝日スーパーJチャンネル 下の東京湾岸地域の気候変化シミュレーションは、東京湾、東京港の埋立により都心部の気温が著しく高くなることを示している。ただし、下図は気温全体ではなく、現況との差のみを示している。 図4 東京湾、東京港埋立による気候への影響シミュレーション 出典:環境庁委託、環境総合研究所、気象研究所実施報告書 上記のように、3シグマの気象現象が2020年には現在の2倍となるとしていることに加え熱孤島現象が相乗されることで、2020年に開催される東京オリンピックでは、間違いなく今年の夏、東京で経験した尋常でない強烈な熱波、猛暑となることは想像に難くない。 図5 都心で進む地球温暖化とヒートアイランド 出典:環境総合研究所編、新・台所からの地球環境、ぎょうせい ◆深刻な影響が想定される野外競技 下表は、筆者が想定する夏期オリンピックの競技種目に対する温暖化と熱孤島現象による深刻な影響程度を示している。周知のようにいわゆる熱中症は、日射病とは違い、室内でも発症するケースが多く、年々増加傾向にある。 なお、東京オリンピックの公式開催時期は以下の通りである。 オリンピック:2020年7月24日(金)~8月9日(日) パラリンピック:2020年8月25日(火)~9月6日(日) http://tokyo2020.jp/jp/plan/outline/ 図6 2020Tokyoの開催予定場所 出典:2020Tokyo 表1 東京オリンピックの競技種目に対する 温暖化と熱孤島現象による深刻な影響程度 ◎は深刻な影響が想定される競技、○は影響が想定される競技、 △は室内でも影響が想定される競技、×は影響が少ない競技
追記 本論考では触れなかったが、図5を見れば明らかなように、開催場所は、東京湾岸道路の沿道に集中している。東京湾岸道路は、1日の交通量が10万台以上、しかも大型車、ディーゼル車の混入率が30%超であり、その沿道は日本一大気汚染が悪い場所のはずである。 開催期間中でも日本最大の物流動脈でもある東京湾岸道路の交通規制は難しいだろうから、世界のアスリートは、NOx、SPM、PM2.5など大気汚染が悪い場所でプレーし、過ごすことになりかねない。 これについてはその2で触れたい! |