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政治資金収支報告書等に見る
政党・政治家の非常識
第3回 電力・電機系議員への献金


青山貞一
東京都市大学大学院
(専門:公共政策論)

掲載月日:2011年12月6日
 独立系メディア E−wave Tokyo


 政治資金収支報告書の最新版、すなわち平成23年11月30日公表(平成22年分 定期公表)政治資金収支報告書と政党助成金使途等報告書が公開された。

 報告書を丹念に見ると、 政治資金収支報告書から東京電力などの電力会社の経営者や幹部社員が毎年毎年、原発を推進する議員に企業ぐるみで献金していたことが分かっている。下はその関連記事である。

◆東電組織ぐるみ 自民党献金問題の根深さ(日刊ゲンダイ)【政治・経済】
2011年10月11日 掲載
http://gendai.net/articles/view/syakai/133050

「小沢のカネ」よりはるかに重大<電力・与党の癒着が原発事故をもたらした>

 「小沢事件」よりも、こちらの方がよっぽどタチが悪いカネだ。東京電力が09年ごろまで、自民党の政治資金団体「国民政治協会(国政協)」に“事実上”の企業献金を続けてきた疑いがあることが判明した一件である。

 朝日新聞の報道によると、政治担当の東電役員が国政協との窓口になり、会長、社長は各30万円、副社長は24万円、常務は12万円――などと役職に応じて年間の献金額を差配。国政協に対する東電役員の献金額は、95〜09年の15年間で少なくとも計5957万円に上るという。電力会社は「事業の公益性」を理由に74年から企業献金しないと公言してきたが、これが大ウソだったわけだ。

 「“二枚舌”だったのは東電だけではありません。『関西消費者団体連絡懇談会』が今夏に公表した調査結果によると、全ての電力会社が東電と同じ仕組みで“事実上”の企業献金を行っていた疑いが指摘されています。06〜08年の献金額で東電に次いで2番目に多かった関西電力は、社長30万円、副社長20万円、常務12万円といった具合です」(経済ジャーナリスト)

 先月の「西松事件」の裁判(陸山会事件と併合)では、民主党の小沢元代表側に対する献金額について、小沢の元秘書が会社側と献金額を決めていたなどと裁判長から“推認”され、元秘書は有罪判決を受けた。西松マネーは小沢以外にも、自民党の森元首相や二階元経産相など18人の議員に渡っていた。しかし、立件され、有罪判決まで出たのは小沢のケースだけ。これ自体、不可解だ。

 今回発覚した東電による長年にわたる組織ぐるみの献金は問題にならないのか。電力業界と政権与党がタッグを組んだら怖いものなしである。何の根拠もない「安全神話」の下で原発政策が強力に推進されてきたのも、長い間、自民党(国政協)と電力会社の強力な癒着があったからこそだ。

 大新聞テレビは「西松事件」や「陸山会事件」の際、「カネで政治を歪めるな」などと、ごもっともな主張をしてきた。ならば、電力会社が“事実上”の企業献金を続けて原子力政策を歪め、揚げ句に史上空前の大事故を起こした責任は糾弾しないのか。

 政治評論家の本澤二郎氏がこう批判する。

 「大量の放射性物質をまき散らした東電の責任は、西松事件などと比べようがないほど大きいものです。小沢議員を調べた東京地検は今こそ東電を強制捜査して徹底的に調べる必要があると思うが、全く動かない。国会も社長らを参考人で呼ぶだけで、厳しい追及はしない。大マスコミも沈黙したまま。他方、小沢事件については、国会も大マスコミも刑事裁判が始まった小沢議員を『証人喚問しろ』と批判しているからクビをかしげてしまいます。小沢議員は『権力の乱用』で追い込まれたが、東電は逆に『権力の乱用』で救済されようとしている。どう考えてもおかしいと思います」

 その通りだ。今の日本は、法治国家とは言えない状況になりつつある。国民生活にとって何が重要な問題なのか、あらためて考えた方がいい。

 電力業界と国会議員らとの関係の根が深いのは、何も電力会社幹部による自民党原発推進議員への献金にとどまらないことだ。
 
 東京電力はじめ中部電力、関西電力、九州電力、東北電力、中国電力などの労組から参議院議員、衆議院議員さらに都道府県議員などに、ひとつひとつは小さくても、まとまると巨額の献金がなされている。

 そこに登場するのが民主党の以下の2名の議員である。

小林正夫 参議院議員 民主党
川端達夫 衆議院議員 民主党


 
 平成23年11月30日公表(平成22年分 定期公表)政治資金収支報告書から上記2名など電力事業関連系議員に献金したり政治活動をしている政治団体は、以下のように膨大な数がある。よく見ると休眠中のような組織があったり、平成22年分の報告書には直接上記の議員の名前がでてこない組織もあるが、電力労組が原発政策、原発事業の推進に関連し、いかに国政にコミットメントしてきたかが分かる。

 以下の政治団体は、平成22年分の政治資金収支報告書からひとつひとつひろったものである。抜けがあるかも知れないが、すさまじい数である。

●電力会社・電機労連関連政治団体

東京電力労働組合政治連盟
環境・エネ政策研究会 東電労組
関西電力総連政治活動委員会
関西電力労働組合政治活動委員会
九州電保労政治活動委員会
九州電力総連政治活動委員会
九州電力労働組合政治活動委員会
中国電力検針集金員労働組合・政治活動委員会
中国電力労働組合政治連盟
中国電力労働組合政治連盟山陰統括本部
中部電力総連政治活動委員会
中部電力労働組合政治連盟
中部電力労働組合政治連盟愛知県本部
北陸電力総連政治活動委員会
北陸電力労働組合政治連盟
電機連合山陰政治活動委員会
電機連合政治活動委員会
電機連合中国政治活動委員会
電機連合西九州政治活動委員会
電機連合西四国政治活動委員会
電機連合東四国政治活動委員会
電機連合南九州政治活動委員会
電力総連政治活動委員会
四国電力総連政治活動委員会
四国電力労働組合政治連盟
東北電力労働組合政治連盟

 以下は電力関連労組から電力事業、とりわけ原発政策、原発事業推進の国会議員への献金に関連する時事通信の記事である。民主党と電力労組がこれだけの関係がある以上、民主党が原発政策、原発事業から抜け出すことは無理だということが分かるというものだ。

◆電力献金、民主側に1.2億円=労組から出身議員ら中心に
 時事通信 11月30日(水)17時9分配信

 電力会社などの労組連合体「全国電力関連産業労働組合総連合」(電力総連)や東京電力労組の政治団体が昨年、寄付やパーティー券購入などの形で、民主党国会議員や同党系地方議員に少なくとも1億2000万円を献金していたことが30日、総務省などが公開した政治資金収支報告書で分かった。

 一方、原発を持つ全国の電力会社9社の役員(OB含む)315人が、自民党の政治資金団体に約2400万円を寄付していたことも判明。東電福島第1原発事故を受け、原発と政治の在り方が問題となっているが、電力会社労使が一体となって政界に影響力を強めていた構図が浮き彫りになった。

 収支報告書によると、電力総連の政治団体「電力総連政治活動委員会」は昨年、全国の電力会社労組の政治団体などから約6400万円を集金。この中から東電出身の小林正夫民主党参院議員の「小林正夫と民主党を支援する会」に2000万円、小林氏の選挙事務所に650万円を寄付していた。
  
 この他、パーティー券購入代金などとして元原子力政策・立地政策プロジェクトチーム座長の川端達夫総務相側に20万円、江田五月党最高顧問側に5万円を支出。川端氏側は、電力総連の関係団体や関西電力労組の政治団体などからもパーティー券代金など116万円を得ていた。

 また東電は、同党の下条みつ衆院議員側のパーティー券40万円分を購入。同社労組の政治団体「東京  電力労働組合政治連盟」は、同社出身の民主党系地方議員や候補者側に約9300万円を献金していた。関係政治団体を経由して寄付したケースもあり、金額はさらに膨れ上がるとみられる。

 一方、自民党の政治資金団体「国民政治協会」には、沖縄電力を除く電力会社9社の役員らが2426万円を個人として献金。献金額が最も多い東電は、会長と社長が各30万円、副社長6人全員が各20万円を寄付するなどしていた。

 以下は、電力関連産業の労働組合の一覧である。ただし、これらは政治団体ではない。

北海道電力関連産業労働組合総連合(北海道電力総連)
東北電力関連産業労働組合総連合(東北電力総連)
関東電力関連産業労働組合総連合(関東電力総連)
中部電力関連産業労働組合総連合(中部電力総連)
北陸電力関連産業労働組合総連合(北陸電力総連)
関西電力関連産業労働組合総連合(関西電力総連)
中国地方電力関連産業労働組合総連合(中国電力総連)
四国電力関連産業労働組合総連合(四国電力総連)
九州電力関連産業労働組合総連合(九州電力総連)
沖縄電力関連産業労働組合総連合 (沖縄電力総連)
日本原子力発電関連企業労働組合総連合(原電総連)
電源開発関連労働組合総連合 (電発総連)


つづく