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スコットランド+北イングランド現地調査図(総延長約2200km)
しかし、それ以前にもセラフィールドの再処理施設は、操業当初から北欧にまで至る広域的な海洋汚染や何度もの事故を背景とした周辺住民らへの深刻な健康被害などから論争を引き起こしてきたと言える。 <セラフィールド工場における処理量と放射能排水量> ところで、セラフィールド核燃料再処理工場における年間の処理量は、表にあるように毎年880トンから1100トン、以下の処理期間中のマグノックスの通算量は4万トンを超えている。THORPは10年間で約5千トンとなっている。さらにガラス固化の本数は通算で3000本弱となっており、いずれも巨大な量である。 表 セラフィールド工場における年間処理量の推移 出典:旧動燃資料 一方、以下のグラフは、セラフィールド工場から海洋への放射能排出の推移である。α放射能排出量、β放射能排出量ともに、1971年から1985年まで膨大な量を海洋に排出していたことが分かる。 図 セラフィールド工場から海洋への放射能排出量の推移 出典:BNFL <セラフィールド工場周辺地域への影響> これだけの処理量と海洋への排出量がある施設であれば、周辺地域への環境影響や健康被害があっても不思議ではない。 たとえば、1983年、英国の地元テレビ番組でセラフィールド工場近くに住む子供たちの小児がんや白血病の発生率は、英国の全国平均よりかなり高いと報道された。ちなみに工場から2.4km離れたシースケール村では10倍高いということである。 1990年にはマーティン・ガードナー教授(元サザンプトン大の疫学学者、故人)が、「母親の妊娠前に父親がセラフィールド工場で働き放射線被ばくを受けていたことが、子どもたちの白血病および非ホジキン性リンパ腫のリスク因子である」という仮説を発表している。 さらに2002年には国際的なガン研究の専門誌(International Journal of Cancer)に、セラフィールド再処理工場で働き被ばくした男性労働者の子どもたちは、他の地域の子どもたちに比べて、白血病やリンパ腫など血液の癌の発生率が2倍近く高く、工場があるシースケールでは、15倍も高いリスクがあると発表された。 これは工場から地域への直接的影響ではなく、セラフィールドの原子力施設で働く被ばく労働者の父親と小児白血病の子どもとの関係についてみたものである。 上記のうち、1983年の件を報じた英国テレビ局の番組内容を以下に示す。
現地調査で撮影したセラフィールド工場の全景 つづく |