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宮古島の産廃問題    青山貞一

 
 環境総合研究所の自主研究HPでも詳細を紹介してきた沖縄県宮古島(平良市)の産廃問題は、ついに訴訟に発展した。原告(住民)側弁護士は、この分野日本一の辣腕弁護士、梶山正三氏である。梶山氏は約100人の弁護士で設立されたゴミ弁連の会長でもある。

 今の沖縄県は、宮古島の産廃問題に限らず、石垣島の新空港建設や西表島や泡瀬干潟でのリゾート開発、普天間基地を名護の辺野古の海に移転など、いずれも貴重な自然を破壊し、環境資源を搾取するなど、血迷っているとしか思えない。

 そもそも、沖縄県は日本有数の「環境資源」をもつ。本来、そのすばらしい希有の自然、環境資源をいかしてナンボである。にもかからず、これでもか、これでもかと、開発やゴミで自然を破壊している。地方分権社会になると環境破壊が進む悪しき典型ではないかと危惧される。

 宮古島の産廃問題は、当初何度となく沖縄県から指導、勧告などを受けてきた産廃業者が、安定型処分場内で火災事故を起こし、周辺の住民や農民に健康被害を含む影響、被害を与えてきたことで島外に知れた。

沖縄県宮古島の産廃処理処分場  撮影、池田こみち

 実態を解明し、真相を明らかにする目的で、首都圏から5人の研究者、専門家が平良市長の私的諮問検討会委員として呼ばれた。現地視察、試料採取などの調査で現地を訪問し、汚染の影響、それによる被害の実態をつぶさに調べ、市長に報告した。その中には、我が環境総合研究所副所長の池田こみちもいる。池田は、主に有害化学物質の分析調査を担当している。

処分場周辺を視察する委員ら 撮影、池田こみち

 一方、沖縄県は火災が終結後、数ヶ月も経ってから大気汚染、土壌汚染、水質汚濁などを調査し、深刻な環境影響はないとする現地報告会を開いた。さらに、沖縄県は東京農業大学や大阪の摂南大学などのダイオキシン研究者らからなる検討会をつくったまではまだしも、被害の現場にいる住民や市長の私的諮問委員会委員からみて、どうみても理解しがたい調査報告書を出し、問題の幕引きを図ろうとしている。

 梶山弁護士は、もともと東京工業大学大学院博士課程卒業後、東京都公害研究所、後の東京都環境科学研究所に入所、その後、独学で難関の司法試験に何度かトライ、最終的に合格した経歴を持つ。世には多数の弁護士はいるが、理学博士と弁護士の両資格を持ち、実務として裁判に挑んでいるひとはまずいないはずだ。

 その梶山弁護士が書いた訴状は実に明快、的確である。梶山氏はまさに私のモットー、「環境分野で社会正義を実現すること。国際的視野をもちながら、同時に第三者的立場の研究者として環境問題の現場に積極的に関わること」を地で行っている。

 最近梶山弁護士が準備書面を書いた。この書面も実に明解であり、痛快だ。近々、全文を披露したい。日本を悪くしているのは、行政、事業者ばかりではない、いわゆる○○学者も場合によってはそれ以上に悪いと思う。また自分の足を食べるタコのたとえの通り、今の沖縄県には明るい未来があるとは思えない。