速 報 中華民国 国家環境保護計画改訂会議に参加して 青山 貞一・池田こみち 環境総合研究所 掲載日:2004.8.17, 8.18 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
■はじめに 2004年8月10日から13日まで、中華民国(台湾)の行政院環境保護署(日本の環境省に相当)が現在進めている国家環境保護計画の改訂作業に青山貞一、池田こみちが招聘され助言を行ってきた。 中華民国(台湾)では、オランダの国家環境計画(NEPP)に似た環境保護計画をすでに策定、施行している。 今回この国家環境保護計画を改訂するに際し、行政院環境保護署は国民や自然保護団体などのNPOからパブリックコメントなどで意見を受けているが、同時に大学、地方自治体などの専門家からも逐次、意見を受けてきたと言う。 それらの延長で、海外における環境計画改訂の経験を参考にしたいと言うことにり、永年、当該分野で政策実務を担当してきた青山、池田が台湾に招聘されることとなった。 おりしも8月11日から12日は、沖縄県宮古島あたりをうろうろしていた台風が台湾近くをかすめる時期にあたり、気管支喘息の持病をもつ青山の体調は最悪、会議前日に社団法人台湾環境管理協会の劉さんが案内してくれた台北北部の景勝地、陽明山に行く途中の車中でも発作が起こる始末であった。 とはいえ、会合があった12日当日は、何とか重責を果たすことができた。 ■台湾の環境政策と私たちとの関係 7月初旬、日本の国、自治体の環境基本計画の策定及び改訂の現状と課題を報告して欲しいという要請が中華民国行政院環境保護署総合計画局副局から青山、池田に来た。要請してきたのは、友人でもある行総合計画局副局長の黄光輝氏である。黄氏は20年以上前から青山、池田の友人である。 環境影響評価法の制定を模索していた中華民国は日本政府に、法制度と施行技術について助言を要請してきたが、承知のように日本と中華民国の間には国交がない。日本政府(外務省、環境庁当時)は、当該分野の専門家として青山貞一(環境総合研究所)と当時北九州市から環境庁に出向していた職員の2名が台湾の環境影響評価制度(法案)の助言に20日間でかけることになった。 それ以来、青山は法制度、技術指針制定、第二中山高速公路のモデル環境アセス事業の実施などで15回ほど台湾に行くことになる。その後、台湾では日本より先に環境影響評価法を制定した。 今回の要請は、環境アセスメントではなく、環境計画の策定に関連したものである。 青山*1、池田*2が所長、副所長を務める環境総合研究所は、国が環境基本法を制定し、環境基本計画を策定するはるか以前の段階からから市町村、政令指定都市など自治体が策定する地域環境管理計画、環境基本計画、自動車公害防止計画などの環境計画の策定を多数支援してきた。 *1:武蔵工業大学環境情報学部、同大学院教授(環境法、公共政策論を担当) *2:関東学院大学経済学部非常勤講師(公害論、環境政策と担当) 具体的には、越谷市環境管理計画(これが市町村レベルで日本で最初のもの)、赤穂市環境管理計画、東京都環境管理計画ビジョン(望ましい環境像)、川崎市環境基本計画、横浜市新環境管理計画、仙台市環境管理基本構想、静岡市環境管理基本計画、浜松市環境基本計画、古川市環境基本計画、成田市環境管理計画、千葉市自動車公害防止計画など約20自治体の計画策定を支援してきた。 さらに日本の環境省からの依頼で地方自治体の環境計画策定の課題を調査し、後続の自治体用の策定手引きを作成する調査も数年にわたり行ってきた。これらは池田こみち氏が中心となり行ってきた。これについては、以下の池田こみち氏のコラムを参照のこと。 池田こみち:台湾で環境計画を考える ■国家環境保護計画改訂専門家会議当日 2004年8月12日、国立台湾大学の隣りにある福華国際文教会館14階会議室で行政院環境保護署の主催で「国家環境保護計画専案修正工作 北区研討会」と言う名称の会議が開かれ、青山、池田は日本の経験を伝えるため参加、報告し、質疑に対応した。青山が感じた台湾の環境政策上の課題については、以下を参照のこと。 青山貞一:中華民国の「環境政策」課題について 青山貞一講演、英文レジメ(パワーポイントは別) 青山が発表に使ったパワーポイントの枚数は110枚である。以下にそのうちの6枚を示す。 午後のセッションでは、目標、方針、施策など環境保護計画の主な構成要素毎に問題提起と補足説明の後、参加者との間での活発な質疑が行われ、最後に総合討論がもたれた。 注目すべきは、日本の環境大臣に当たる環境保護署の張長官が挨拶から総合討論まで終始この会合に参加され、ご自身の考えを述べられていたことである。 張長官は、2年前、廃棄物問題で台湾に行ったとき、副長官として環境保護署で忌憚なく私たちの質問に逐次答えられていたが、今回は長官となられていた。なお、張長官は、台湾南部の国立成功大学の現役教授であり、大学院で環境工学を担当している。懇親会で隣り合わせとなったの伺ったところ、土日に成功大学で修士課程、博士課程の院生の指導を現在も行っているとのことである。 日本の環境大臣のように、環境問題にまったく疎い政治家が形だけ大臣に就任し、実質は官僚がつくった文章を読んだり、挨拶している現状と比べると、雲泥の差がある。すべて長官自身が考えその場で質問に回答している。
12日当日のプログラムは以下の通りである。 ※プログラム中の教授等の氏名の漢字のうち、日本語にない漢字については いわゆる当て字となっており、不正確となっている。 これについては、当日配布された中国語の正規プログラム(PDF)を参照のこと。
|