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廃プラ焼却問題と
小金井市のゴミ非常事態


鷹取 敦

掲載日:2007年2月20日


 先週(2月18日)のTBS「噂の東京マガジン」の名物コーナー「噂の現場」で、小金井市のゴミ非常事態宣言が取り上げられた。

 これまで、小金井市の「燃やすごみ」は、小金井市・調布市・府中市の3つの市によって構成されている一部事務組合「二枚橋衛生組合」の焼却炉で処理されていた。ちなみに小金井市では2007年4月からはプラスチックは「燃やさないごみ」として分別されるごみの出し方(小金井市)(PDF)プラスチックごみと金属ごみの分別収集が始まります(小金井市)(PDF)

 ということは、現在までプラスチックごみは「燃やすごみ」だということになる。昭和42年,昭和47年にわたって作られた築35〜40年二枚橋焼却場の現在の状況及び更新計画結果等について(調布市)という極めて老朽化した焼却炉だから周辺の汚染はなおさら懸念されて当然だった。

 プラスチック焼却の問題点については、特に東京23区における廃プラ焼却の計画に関連して本コラムで何度も言及してきた。ちなみに23区の廃プラ焼却問題に関して2月24日に以下のイベントが計画されているそうなので紹介しておきたい。
■止めよう!大気汚染、燃やすな廃プラスチック渋谷アピール行動 2/24(東敦子 渋谷区議サイト)
http://www.atsukohot.net/news.html
 二枚橋衛生組合が周辺地域の土壌汚染(ダイオキシン類)調査を2000年に行った際に、周辺の住民および市議が、筆者の所属する環境総合研究所に土壌試料採取への同行と土壌調査のクロスチェックを依頼され、筆者が現地に向かった。
※同じ試料の分析を事業者(今回の件では二枚橋衛生組合)が委託した分析業者だけでなく、第三者的な調査機関が平行して行うことにより、調査の客観性を保つことを目的とした調査。単に分析能力の確認のために行うのではなく、より客観的な調査であることを担保することを目的としている。
 クロスチェックの結果は、事業者の調査結果とほぼ一致していたので、分析精度そのものには問題がなかったことが確認されたが、問題は採取地点にあった。

 草が生えていたところの草をわざわざ抜いたり、踏み固められた土の部分を選んだりなど、「地歴がはっきりしているところから採取しているのです」という言い訳をしながら、明らかに濃度を低そうな場所を選定して土壌試料を採取していた。

 クロスチェックでは採取地点の選定については、意見を言わないことを前提に二枚橋衛生組合から住民および調査機関の同行が認められたから、採取地点についてはその場では適正に変更させることは出来なかった。それどころか、たまたま同じ場所にいて、たまたま同じ場所から土壌試料を採取したという扱いだったが、実は全国的にみればこれでもましな方なのである。

 そんな二枚橋衛生組合の老朽化した焼却炉は、来る3月には全炉停止される。詳しくは番組のウェブサイトに説明されているので、下記をみていただきたいが、簡単に言えば、小金井市以外の2市は既に今後の計画を立てていたにもかかわらず、今後のごみ処理について他市頼りだった小金井市だけが4月以降のごみ処理の見通しが立っていないという問題である。
■噂の東京マガジン・噂の現場
4月から一体どうする?ゴミ非常事態宣言の町(2007年2月18日放送)
 小金井市が頼み込んでいる先の1つに柳泉園組合(東久留米市・清瀬市・西東京市)がある。柳泉園組合は、不燃ごみとして分別していたプラスチックを焼却していたことで市民の不信を買ったことで有名で、その後もプラスチック焼却を続けていた。周辺の土壌調査を住民が行ったところ(下記URL参照)、周辺地域における柳泉園の焼却炉からの重金属類汚染が強く示唆される結果であった。
■柳泉園周辺土壌中の重金属汚染実態調査報告(環境総合研究所)
http://eritokyo.jp/independent/soil/ryusenen-soil2.htm
 このような問題をかかえてきた柳泉園に、他市のごみを受け入れる余裕があるとは考えにくい。

 さすがの小金井市も「非常事態」を宣言して、市民に「燃やすごみの10%減量」を求めている(下記サイト参照)が、たった10%の減量とは、まだまだ現状認識が甘いと言わざるを得ない。
■小金井市はごみの非常事態です(小金井市)
 名古屋市はでは似たような危機を活かして、藤前干潟へのごみの埋め立てを断念した後、大幅なごみ排出減に取り組んできたし、上勝町(徳島市)は2003年にゼロ・ウェイスト宣言をし、町田市(東京都)ではゼロ・ウェイスト宣言に向けて青山貞一氏(独立系メディア主唱者、武藏工業大学環境情報学部教授)の講演を2006年12月に開催している。
■ゼロ・ウェイストアカデミー(上勝町NPO)
http://www.zwa.jp/newhp/index.htm
 小金井市も目前のごみ処理に右往左往して10%の減量を求めるだけでは、市民にとっても将来の展望は開けない。この危機を奇貨として、小金井市もゼロ・ウェイストに向けて本格的に取り組んではどうだろう。