世界ランキング by 英国NPO CAF 「見知らぬ人への親切さ」 日本最下位(125ヵ国中125位) 青山貞一・池田こみち 独立系メディア E-wave Tokyo 2021年5月14日 公開 無断転載禁 |
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その1 その2 ◆はじめに 英国に本部がある非営利団体CAF(Charities Aid Foundaton、邦訳、慈善活動支援財団)は、過去10年、毎年世界百数十ヵ国を対象に、各国国民のチャリティ(慈善)行為について、次の3つの観点から本格調査したうえでランキングしていいる。 (1)見知らぬ人への親切さ(過去1か月における親切行為の回数) (2)他人(団体)への寄付行為(過去1か月における寄付回数) (3)ボランティア活動(過去1か月におけるボランティア活動時間) 具体的にはCAFでは、過去10年間に世界各国で行われた約130万人へのインタビューを専門調査機関に委託し世界各国のランキングを公表してきた。 上記3項目のうち、日本に関し注目に値するのが、(1)の見知らぬ人への親切さである。毎年調査対象や数が変わるので、単に日本の順位を示しても理解しにくいのだが、2020年に行われた「過去10年間の総合評価報告」では、125ヵ国中125位、最下位となっている。 ちなみに 2012年 79ヵ国中 73位 2015年 145ヵ国中 137位 2017年 139ヵ国中 135位 2020年 過去10年間の総合 125ヵ国中 125位 である。 日本は(1)以外の(2)寄付と(3)ボランティアでは、対象国中、中位であるの対し、(1)が下位、さらに10年間総合伊で最下位であることに、青山、池田は衝撃を受け、本報告を執筆することにした。 では、最初に非営利団体CAF(Charities Aid Foundaton、慈善活動支援財団)とはにか、について2020年報告から以下に示す。以下はCAFの2020年報告書(英文)を翻訳したものです。 ◆CAFの「World Giving Index」とは(本報告書4頁) CAFは、10年前から「World Giving Index」を作成しており、今年は特別に第10版を発表することができました。10年のデータを記念して、10年間の上位国と下位国を集計してみることにしました。 今回は初めて、上位の国だけでなく、下位の国についても報告することにしました。また、10年間で最も上昇した国と下降した国を見てみました。 これまでの報告書と同様、本報告書の目的は、世界中の寄付の範囲と性質についての洞察を提供することにあります。 本報告書では、さまざまな形での寄付を理解してもらうために、寄付行動の3つの側面を取り上げています。報告書の中心となる質問は次のとおりです。 過去1ヶ月間に以下のようなことをしましたか? (1)見知らぬ人や助けを必要としている知らない人を助けましたか? (2)慈善団体にお金を寄付しましたか? (3)ボランティア活動をしましたか? 本報告書は、過去10年間に世界各国で行われた約130万人のインタビュー結果をまとめたものです。 このレポートは、過去10年間に世界中で行われた約130万人のインタビュー結果をまとめたもので、寄付に関する調査としては最大規模のものです。CAFはこのインタビュー調査を世界的な世論調査機関、ギャラップ(gallup)社注1に委託し実施しています。 注1 Gallup website: www.gallup.com/home.aspx 2 Gallup World Poll website: http://www.gallup.com/services/170945/world-poll.aspx CAF World Giving Index 10th edition - about the data 注1)ギャラップ(The Gallup Organization)について ギャラップは、アメリカの世論調査及びコンサルティングを行う企業 である。1935年にジョージ・ギャラップによって設立されたアメリカ世 論研究所 (American Institute of Public Opinion) を前身とする。 アメリカ合衆国のワシントンD.C.に本社を置き、世界30余の国に拠 点を設けて世論調査などを行っている。1995年に日本オフィスを開 設した。 民間企業による世論調査の先駆け的存在で、世論調査はギャラッ プ調査 (Gallup Poll) と称されて信頼が厚い。世間の注目を集めた調 査に、世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント (仕事への熱意度)調査がある。日本は「熱意あふれる社員」の割合 が6パーセントで、調査した139国中132位であった。 今回の報告書では、2009年から2018年までの10年間に行われたインタビュー調査の各国の集計データを掲載しています。このデータは、インタビューを実施した翌年に発行されたレポートに対応しています(例:CAF World Giving Index 2010は2009年に収集されたデータを指す)。 ギャラップ社がインタビューを行う国は毎年少しずつ異なるため、本レポートでは、過去10年間のうち少なくとも8年間はデータが入手できた国のみを対象としています。つまり、本報告書は128カ国を対象としています。 この方法については、本レポートの22ページに詳しい説明があります。CAF World Giving Indexのランキングは、世界中の寄付行動についての概括的な評価を確立するために、各国で行われた3つの重要な質問の回答を単純に平均化しています。 それぞれの国にはパーセンテージのスコアが与えられ、このスコアに基づいて国がランク付けされます。第10回目となる今回は、10年分のスコアを平均して集計しました。 CAF(Charities Aid Foundation)は、英国で登録された国際的な大手慈善団体で、6大陸に9つのオフィスを構えています。CAFは、世界中の人々の生活やコミュニティを変革するために、より多くの寄付を行うことを目的としています。90年以上にわたり、寄付者、企業、慈善団体、社会組織がより大きな影響を与えることができるよう支援してきました。私たちはCAFであり、寄付を大切にします。 ◆調査の方法(本報告書22頁) 本レポートは、主にギャラップ社の世界世論調査10 のデータに基づいています。世界世論調査は、2018年に世界人口の約95%(約52億人)を占める143カ国で実施された継続的な調査プロジェクトです11。 この調査では、寄付行動を含む今日の生活のさまざまな側面について質問しています。各地域の調査対象国と質問内容は年ごとに異なり、ギャラップ社が決定します。ギャラップ社の調査方法の詳細は、オンラインでご覧いただけます12。 2018年、ギャラップ社は、世界世論調査の質問項目のうち、慈善寄付に関する一連の項目の位置を、インタビューを行ったすべての国で大幅に変更しました。インタビューが対面で行われた国では、この変更は結果に影響を与えなかったようです。 しかし、電話によるインタビューを行っている国では、この変更が何らかの影響を与えている可能性があります。この影響についての詳しい説明は現時点では不明ですが、来年の第11版の発行までには検討される予定です。 さらなる結果を待つ間、2018年に実施されたインタビューのデータは、今年のレポートには掲載していません。調査対象のほとんどの国では、全国に住む個人の代表的なサンプルに1,000枚のアンケートを実施しています。 対象地域は、農村部を含む国全体です。サンプリングフレームは、国全体の15歳以上の非入院の民間人を対象としています。 大きな国では、より多くのサンプルが集められますが、少数の国では、500人から1,000人を対象としていますが、代表的なサンプルを特徴としています。また、取材スタッフの安全が脅かされる場合や、一部の国では人口の少ない島嶼部、取材スタッフが徒歩、動物、小型船でしか行けない地域など、限られたケースでは調査を実施していません。 2009年から2018年の間にギャラップ社が実施したインタビューは、全部で150万人以上に上り、サンプルは確率的なものです。 今回の第10版レポートには、その期間中に8回以上対象となった国の約130万人の結果が掲載されています。 調査は、その国の電話対応状況に応じて、電話または対面で実施されます。もちろん、各国の調査結果には誤差(無作為抽出の誤差)があり、Gallup社は95%の信頼水準(調査結果が全人口を正しく反映していると確信できる水準)の割合で算出しています。最大誤差は、報告された割合が50%であると仮定し、調査設計の有効性を考慮して算出されます。 --------- 注10) ギャラップのウェブサイト: http://www.gallup.com/services/170945/world-poll.aspx 注11) 世界人口の見通し、2017年改訂、国連経済社会局: https://esa.un.org/unpd/wpp/ 国連は、15歳以上の人々の2015年の世界人口を54.5億人と報告している。 これは入手可能な最新のデータである。 注12) Gallup World Poll Methodology: http://www.gallup.com/poll/105226/world-poll-methodology.aspx各国のデータセットの詳細利用可能: http://www.gallup.com/services/177797/country-data-set-details.aspx ここでは、②寄付と③ボランティアを飛ばし、敢て「見知らぬ人への親切さ」についての報告書の記述を見てみる。青山・池田 ◆見知らぬ人への親切さ ここで2020年報告書から世界125ヵ国を対象とした「見知らぬ人への親切さ」の上位10ヵ国及び下位10ヵ国を表示してみましょう。以下の図は「見知らぬ人への親切さ」のパートの表紙の写真です。 出典:CAF2020年報告書の表紙「見知らぬ人への親切さ」(PDF) 2020年報告書から世界125ヵ国を対象とした「見知らぬ人への親切さ」の上位10ヵ国及び下位10ヵ国。 注)手のひらを上げているのが「見知らぬ人への親切さ」のアイコン。
◆上位10ヵ国、下位10ヵ国へのCAFのコメント 以下はCAF報告書による上記の上位10ヵ国、下位10ヵ国についてのコメントです。 過去10年間で、世界中で25億人以上の人が見知らぬ人を助けました。世界の成人の約半数(48.3%)が見知らぬ人を助けたことがあり、世界中で最もよく行われている慈善行動です。 見知らぬ人を助ける可能性が最も高い10カ国のうち7カ国は、アフリカに位置しています。これは、アフリカのほぼ全域に存在し、人々が生きるための哲学であるUbuntuが影響していると考えられます。 ウブントゥとは、アフリカの文化において、思いやり、互恵、尊厳、人間性、相互性を表現する能力であり、正義と相互の思いやりのあるコミュニティを構築し、維持することを目的としています。 残りの国は、第3位の米国、第9位のカナダと第10位のニュージーランドとなっています。 見知らぬ人を助ける可能性が最も低い国のリストには、旧・現共産主義国が多く含まれています。旧ソビエト連邦の衛星国や旧ユーゴスラビアを構成していた国々は、世界贈与指数の表でも下位に位置することが多い。 これは、文化的、経済的な要因が複雑に絡み合っているからだと考えられます。 なお、以下の表は、左から3項目の総合順位、①見知らぬ人への親切さ、②寄付、③ボランティアの各順位を総合順位91位から116位まで示したものであり、日本は総合順位107位にあり、①見知らぬ人への親切さが125位、②寄付が64位、③ボランティアが46位にいることを示しています。 表 総合順位91位から116位の ①見知らぬ人への親切さ、②寄付、③ボランティアの各順位 出典:CAF2020年報告書 ◆青山貞一・池田こみちの考察 CAF報告のうち2020年報告書から世界125ヵ国を対象とした「見知らぬ人への親切さ」の上位10ヵ国及び下位10ヵ国についての解説を読んでみたが、下位10ヵ国では、旧・現社会主義国で「見知らぬ人への親切さ」が低いとあり、実際順位を見ると、ソ連衛星諸国、中国が含まれている。 , 青山貞一・池田こみちは、過去、ロシア、中国はじめポーランド、チェコ、スロバキア、クロアチア、モンテネグロ、リトアニア、ラトヴィア、エストニア、(フィンランド)、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、ウズベキスタン、セーシェル(インド洋)などに旧・現社会主義国を調査などで訪問している。その観点からは、確かに「見知らぬ人への不親切さ」を感じた。 よく考えると、それは自助、共助、公助問題が関係していると思える。旧・現社会主義国では、自助、共助は少なく、医療、教育、福祉など多くの分野で公助が基本となっている(いた)からと考えられる。 私達は当初、現在、英米など西側諸国による偏見、誹謗中傷などの一環かなとさえ思えたが、旧・現社会主義国ではない日本が125ヵ国中125位(最下位)なのかについては、特段の記述がなかった。 , 青山・池田が考えるに、上記とは別に宗教にも関係性を見出せると思う。キリスト教は「汝の隣人を愛せよ」、イスラム教でもそれに類するものがあり、仏教でもミャンマー、スリランカなどの上座部仏教(小乗仏教)ではまさに平等感が基底にあり、見知らぬ人への親切や寄付はその延長にあると推察できる。一方、日本、中国のような大乗仏教国は、今や仏教は名ばかり、特に日本では、精神文化としての仏教は皆無と言ってよいだろう。 , アフリカが上位にいるが、これは貧しく子供が多いアフリカ諸国では、相互扶助、共助が日常的に当たり前になっていると思うし、CAF報告書でもそれに近いことを述べている。 , いずれにしても日本が最下位にいるのは、実質的に無宗教であること、農村共同体が崩壊し大都市で私人化していること、近年では富裕層が打算的で拝金主義的、他方、貧困層は、共同体も完全崩壊、家族も核家族化しているなか、他人をかまっている余裕がないからではないかと、思える。 , さらに青山の経験から韓国と日本を比較すると、儒教的価値観はいずも減退しているものの、とくに日本では電車のなかで若者がずらーと座ってスマホを見ている現実がある。ちなみに、ソウルでも東京でも、また電車でもバスでも立ってどうぞお座り下さいと言ってくれたのは韓国の若者が圧倒的に多いと言える。 上記に加えて、次のような日本人ならではの特徴というか背景もあると思る。 ひとつは、仮に相手が外国人だった場合、外国語での対応が必要となると一気にシャイな性格が前に出て、知らん顔をして仕舞う傾向が強いこと。これは圧倒的に日本の外国語教育に問題があると思う。 もうひとつは、他人の目を非常に気にする国民性であるということがあると思う。地域社会の中で目立ってはいけない、人と違ったことをしてはいけない、という暗黙のプレシャーがあるのではないかと思える。「かっこつけてる」「ひけらかしている」「目立っている」などはタブーとなっていると思える。 これらは、いずれもシャイで引っ込み思案な国民性のなせる技ですが、最近の若い人は高齢者世代に比べてより積極的な行動、発言をする人たちも多く見られるので、少しずつは改善されていくことを期待したい。 そのためには、まず、自分自身の倫理観、価値観をしっかりもち、行動に対して自ら判断することができる、ということが大切だ。他人がどう思うとかどう言うではなく、自分の考えに従って行動できれば、もっと自然に「他人に対して優しく」接することができるのではないかと思います。 黄色い部分は青山貞一・池田こみちの一致した見方と言える。 その2につづく , |