|
|
前号で指摘したように、日本の新聞発行部数は異常に巨大である。読売新聞の発行部数は1000万部を超えているが、米国のニューヨークタイムズは100万前後部、英国のザ・タイムズは70万部前後に過ぎない。 だが、ここ数年、日本の新聞発行部数は凋落の一途をたどりつつある。 ●大メディア(新聞)の経営悪化 ここ数年、朝日新聞の発行部数が800万部を切りつつあるなど、どの新聞社も発行部数が減少している。原因は広告収入の減少、とくにリーマンショック以降の急激な広告収入が減少などが指摘できるが、その他として若者のインターネットなどICTを使った新たなメディア重視などによる新聞離れも大きな要因となっている。 下は1999年から2009年までの10年間における新聞の発行部数である。グラフでは、@一般新聞、Aスポーツ新聞、B総部数の減少率の推移が分かるよう示している。 図3 日本における新聞発行部数 出典:日本新聞協会の資料及び http://d.hatena.ne.jp/yuichi0613/20100121/1264033041 上のグラフから分かるように、新聞の総部数は2004年以降単調減少しており、2007年以降かなり急激に部数が減少していることが分かる。 その結果、新聞社の経営状態も2009年3月期実績で見ると何も、産経だけでなく朝日、毎日などの大手新聞社も新聞単独で赤字となっている。 以下に朝日、産経、毎日の各新聞社の2004年3月期から2009年3月期まで6年間の売上高、営業利益、経常利益、純利益を示す。 図4 朝日新聞社(単体)(単位:億円/売上高のみ10億円) 出典:http://www.garbagenews.net/archives/824612.html 図5 産業経済新聞社(単体)(単位:億円/売上高のみ10億円) 出典:http://www.garbagenews.net/archives/824612.html 図6 毎日新聞社(単体)(単位:億円/売上高のみ10億円) 出典:http://www.garbagenews.net/archives/824612.html 朝日新聞社を例にとってより細かく見ると、以下のグラフは連結営業成績前年期比である。グラフより分かるように、売り上げだけでなく、営業利益、経常利益、当期純利益いずれも前年比で大幅ダウンしていることが分かる。 図7 朝日新聞の連結営業成績前年期比 出典:朝日新聞の決算短信から「おサイフ事情」をチェックしてみる 2009年5月23日 朝日新聞社は2010年3月期連結決算で、景気低迷で企業からの広告収入の落ち込みが響き、本業のもうけを示す営業利益が40億円の赤字(前期は34億円の黒字)に転落した。営業赤字は、連結決算の公表を始めた00年3月期以降で初めてである。 さらに税引き後利益も33億円の赤字(前期は139億円の赤字)と、2期連続の赤字となった。売上高は、連結対象から子会社が外れた影響などで前期比12・5%減の4702億円となった。 これらの経営悪化に対し、大新聞各社は勧奨退職などによる従業員の大幅削減、夕刊の廃止、関連雑誌の廃止、販売網の一層の合理化、オンライン新聞の創刊などがなされているが、決定打とはならず部数の減少、経営悪化には歯止めがかかっていないのが現実である。 ●大メディア(テレビキー局)の経営悪化 一方、大テレビ局も、経営の根幹をなす広告収入の大幅な落ち込みによりテレビ単独事業では息絶え絶えの状態にある。 下はテレビキー各局の連結経営業績の2009年度3月期における前年度比データである。日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京の民放キー局は営業利益、経常利益、当期純利益いずれも前年比で大幅ダウンしていることが分かる。 テレビキー局の連結決算業績(前年比) 出典:主要テレビ局銘柄の期末決算をグラフ化してみる……(1)スポット広告とタイム広告、業績概略 下の記事は、地上波放送のテレビ・ラジオ局194社のうち47・4%に相当する92社が 2008年9月中間の単体決算で経常赤字になったことを明らかにしている。民放連会長の広瀬氏はは「放送局 の経営状況は民放連の58年の歴史で最悪だ」と述べている。
●大メディアのコンテンツ劣化 以上は経営状況だが、もうひとつ重要なことは、大メディアの新聞記事やテレビニュースの質はいかんともしがたいほど劣化していることだ。 大メディアは、新聞、テレビともに貧すれば鈍するのたとえの通り、経営的の凋落と比例するかのようにコンテンツ、すなわち社説、記事、報道ニュース、番組の劣化が顕在化している。 ここで改めて言うまでもなく、政治関連の新聞記事、ニュース、報道番組、情報番組は、事実報道、「社会の木鐸」としての役割を逸脱している。とりわけ、ここの2年間の小沢一郎氏をめぐる報道は、朝日新聞の社説に象徴的に見られるようにメディアの本分から大きく逸脱し、偏向が激しい。 ※小沢氏問題については、以下も参照のこと。 ◆青山貞一:小沢一郎とメディアと法 たとえば大メディアは、「編集権」の名の下に、特定部分を強調したり、逆に当人にとり重要な部分が意図的に削除、トリミングされ、記事やニュースから削除される。さらに社説では編集委員の恣意的な判断で勝手に曲解されることが日常茶飯事となっている。 小沢氏を批判、攻撃する大メディアの記者の圧倒的多くは、小沢氏に対しなにひとつ満足な取材をしていない。 ジャーナリストの本分であるべき、足と頭を使い個別具体に取材することを忘れ、ここ2年間、独裁権力である検察庁、地検特捜部などからのリークをもとに、裏取りもせず、勝手な価値判断、偏見、予断的な記事を書き放題書いてきた。 いうまでもないことだが、取材相手の当人が実在するなら、当人にインタビュー、すなわち取材するのがメディアの大前提である。だが、こと小沢一郎氏に対しては、当人に直接取材することなく、第三者への聞き取りもせず、小沢氏の政治家としての名誉や信用を一方的に毀損し、人権を侵害するような記事を書き散らしてきたのである。 また大メディアは国民の生活や企業の将来にとって重要な政治について、政局ばかりに着目し、本来の政治、政策の報道をないがしろにしてきた。対外的にも政府同様、米国一辺倒、米国追随的な報道姿勢には、うんざりするものがある。もとより米国の政治、外交、軍事、経済、財政はすでに「死に体」化しつつある。 大メディアはリーマンショックを大々的に報道した。しかし果たしてサブプライムローン問題をどれだけ現場で取材し、早期段階から日本国民に報道したであろうか? 実質的に見てエネルギー資源の収奪、エネルギー植民地化の面からどれだけ米国の中東侵略を現場主義で取材し、日本国民に伝えたか? 日本の大メディアは、いずれも記者クラブでふんぞり返るだけで、およそ国民の知る権利(Right to know)に応えてこなかった。今の日本のメディアは到底、社会木鐸とは言えない。 つづく |