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毎日太平洋に垂れ流される
トリチウムの影響について
青山貞一 Teiichi Aoyama
掲載月日:2013年9月6日
 独立系メディア E-wave
無断転載禁


 東電、福島第一原発の敷地内から海に漏れ出る汚染水のうち、トリチウムを含む汚染水の影響については、新聞、テレビではほとんどまともな解説がありません。あっても、<問題ない>のオンパレードです。

 巷では、「原子力学会が薄めて海に流しても問題ない」報道一色です。

 しかし、トリチウムは、本当に海に流しても問題ないのでしょうか? また魚介類などへの影響はないのでしょうか? さらに人体への影響はないのでしょうか?

 本論考では、現時点で入手可能な情報、資料をもとに上記の疑問に答えるべく努力してみました。


はじめに
 ~フランスのテレビ番組「終わらない悪夢」より~

 以前、フランスのテレビ番組「終わらない悪夢」が日本でも放映されました。以下はその後半部分のトランススクリプト(書き写し)です。

鷹取 敦:フランスのテレビ番組、「終わらない悪夢」(後編テキスト) 
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-fnp124..html

 「終わらない悪夢」の後半(上記)を読むと、

 仏アレバ社のラ・アーグ放射性廃棄物再処理工場から出たパイプは、毎日400立方メートルの放射性廃液を英仏海峡に投棄とあります。

 比重を1とすれば400トン/日となります。1日400トンはどこかで聞いた数値です。


およそ50年の間、各国はドラム缶に詰めて海洋投棄されていた
Source:Arte France/Bonne Pioche

 しかも、1993年国際条約で放射性廃棄物の海洋投棄は全面禁止。

 しかし、これはあくまでも船からの投棄は禁止ということに限定されています。矛盾しているようだが陸上からの排出は未だに合法とされています。

 驚くべき話ですが、

 ラ・アーグ工場では延べ4.5キロメートルのパイプがラ・アーグ岬から1.7キロの海域に汚染水を排出しています。


4.5キロメートルのパイプがラ・アーグ岬から1.7キロの海域で
汚染水を排出している
Source:Arte France/Bonne Pioche


アレバ社の核燃料再処理工場があるコタンタン半島のラ・アーグ
工場から長いパイプで海に排水を1日400トン捨てている
Source: Google Map


 さらに、トリチウムやクリプトン85のような一部の放射性物質を外に出さないためには膨大なコストがかかる。ラ・アーグ再処理工場はその殆どを環境中に放出することをフランスの原子力安全機関(アンドレ=クロード・ラコスト委員長)から許可されている。


とあります。


●トリチウム(三重水素)とは

三重水素
概要
名称、記号 トリチウム、トリトン,3H
中性子 2
陽子 1
核種情報
天然存在比 微量
半減期 12.32 
崩壊生成物 3He
同位体質量 3.0160492 u
スピン角運動量 1/2+
余剰エネルギー 14,949.794± 0.001 keV
結合エネルギー 8,481.821± 0.004 keV
ベータ崩壊 0.018590 MeV
 出典:Wikipedia

・半減期 12.3年

・崩壊方式
 非常に低いエネルギーのベータ線を放出して、ヘリウム-3(3He)となる。

・生成と存在

 水素の放射性同位体(記号Tで表わす)。

 原子炉内では、リチウムのような軽い元素と中性子の反応および三体核分裂によって生じる。電気出力100万kWの軽水炉を1年間運転すると、原子炉ごとに異なるが、加圧水型軽水炉内には約200兆ベクレル(2×1014Bq)、沸騰水型軽水炉では約20兆ベクレル(2×1013Bq)が蓄積する。

 水素の中に0.015%が含まれる重水素(2H、記号Dで表わす)の中性子捕獲でも生成するが、軽水炉内でのトリチウム生成への寄与は小さい。ただし、カナダで開発されて韓国に導入されているCANDU (Canada Deuterium oxide- Uranium) 炉では重水(D2O)を減速材としているために軽水炉の場合より大量のトリチウムが生じる。

 出典:原子力資料情報室


●トリチウムの影響について

 調べてみれば、トリチウムの人体への影響は、DNA分子(つまり遺伝子)の中で結合し、DNA分子の中では、後になってから、癌に結びつく変化が引き起こされる場合があり、結果として(トリチウムがDNA分子内で起こす変化は)脳腫瘍、赤ちゃんの先天性奇形、多くの臓器でのガンの原因となります、とありけっして看過できるものではないようです。

 以下、トリチウムの影響についての紹介です。

 過去、そして現在、原子力、原発関係者は、自分たちに都合の悪い情報を公開しません。新聞、テレビなどのメディアは、いわば原子力村からの情報ばかりを記事に司法どうしています。

 事実、新聞、テレビがトリチウムの影響についてまともに扱った報道は、この間ほとんどありません。

 トリチウムの人体影響について京都大学の小出氏はセシウムよりも危険性が高いと次のように指摘しています。

◆京都大学の小出氏の証言
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=9HRtIBIuDVs

 (特に生物学的毒性)が比較的小さい事を指摘しておられるようですが、トリチウム(三重水素)は一種のβ線核種で、一般のγ線測定器では測れない点、更には、生物学的毒性としても、トリチウムが水や水蒸気の形で人体に入ると99%吸収されます。皮膚からも吸収され、しかも摂取量の2%はDNAに取り込まれます。

 そして「動物実験で特に造血組織を中心に障害(白血病等)が生じることが明らかにされ、人が長期間摂取した重大事故も発生している」という人体の影響は極めて大きいとの報告されるくらいですから、(γ線核種に比して)死角的側面を加味すると、セシウムよりもはるかに怖い核種だと個人的には感じています。

 特に、F1事故後、東日本を中心に日本全国で相次いだ「魚の大量死」に関しては飲料水などとして大量に(体重に対して数十%以上)摂取すると生体内反応に失調をきたし、30%を越えると死に至る。重水中では魚類はすべて死に、植物は発芽しない。

 個人的にはトリチウム汚染が原因だと睨んでいます。特に水との区別が難しいだけに、水質調査の結果「原因不明」の場合、大抵はトリチウム汚染が原因ですので。 また、身体の皮膚からも容易に浸透する事は前述した通りです。

 人体の約60兆もの細胞内の60%~70%は水であってトリチウム水(広義の重水)が30%を占めれば即死すると言う事です。だから、特に海水浴に関し、再三、必死で警告したわけですよ。また、東日本の広域の水道水にも、一定割合、混入している可能性が極めて濃厚です。


 さらに、小児科医のヘレン・カルディコット博士は、トリチウムおよびその人体、生物への影響について次のように述べています。

◆トリチウムの影響 
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n153962
〔トリチウム汚染水が医学的に意味するところの9つのこと〕
ヘレン・カルディコット博士

 放射能汚染水からトリチウムを分離する方法はありません。トリチウム(エネルギーの低いβ線を放射しながらβ崩壊する)は、100年以上、放射性を持ったままの強力な発ガン物質です。トリチウムは、(水に取り込まれると)藻類、海草、甲殻類、そして魚などの水生生物に集中して蓄積されます。

 (他の核種と同様に)無味無臭で、目に見えないので、シーフードを含む食べ物の中に、今後何十年もの間、必然的に取り込まれてしまいます。それは、DNA分子(つまり遺伝子)の中で結合します。DNA分子の中では、後になってから、癌に結びつく変化が引き起こされる場合があります。(トリチウムがDNA分子内で起こす変化は)脳腫瘍、赤ちゃんの先天性奇形、多くの臓器でのガンの原因となります。

 この放射能汚染水を永久に封じ込めておく方法はなく、今後、50年以上の間、太平洋に漏出することは避けられないため、非常に恐ろしい事態が待っているのです。

 ちなみに、原子力資料情報室のトリチウムの生態に対する影響の記述は以下の通りで、一般のひとには、ほとんど何の影響があるのかわからない内容でした。

・生体に対する影響 出典:原子力資料情報室
 放出すされるベータ線は水中で0.0mmまでしか届かない。体内取り込みによる内部被曝が問題になる。10,000ベクレルを含む水を経口摂取した時の実効線量は0.00018ミリシーベルト、10,000ベクレルを含む水素ガスを吸入した時の実効線量は0.000000018ミリシーベルトになる。2つの間に10,000倍の差がある。
最近の雨水中のトリチウム濃度を2ベクレル/リットルとして、この水を1年間摂取すると、実効線量は約0.00004ミリシーベルトになる。ふつうの人がトリチウムによって受ける年間実効線量はこの程度であろう。

 またWikipediaには、トリチウムによる影響についての記述はまったくありませんでした。


●世界各地におけるトリチウムによる人体影響の具体例

 次に、トリチウムによる人体影響の具体例です。

 以下に示すように、世界各国で多くの報告があります。ただし、それぞれの報告についてどれだけの反論、議論があるかについては、定かではありません。

●ガードナー報告
イギリス/セラフィールド再処理工場で原子力量労働者が受けた外部被曝線量と、その子供たちの小児白血病との関連を見出しました。小児白血病は増加しており、被曝をもたらす可能性の核種としてトリチウムとプルトニウムがあげられました。

<参考:現地調査報告>
・青山貞一・池田こみち:英国セラフィールド核燃料再処理工場
・青山貞一・池田こみち:セラフィールド工場がもたらす健康リスク

●イギリス4チャンネルテレビ
インド/ラジャスタン重水炉の風下や下流の村落で、赤ん坊たちの間で先天性の奇形が高レベルで生じています。

●父親がハンフォード軍事施設で働いている息子であるSever報告
アメリカ/ハンフォード軍事施設周辺で神経系統異常出産(無脳症など)が増加しています。

<参考:現地調査ビデオ番組>
池田こみち:フランスのテレビ番組、「終わらない悪夢」(前編テキスト)

カナダ原子力委員会報告
http://www.gasho.net/stop-iter/documents/q&a/q21.htm
カナダ/ピッカリング重水原子炉周辺ではトリチウムを年間2,500兆ベクレル放出していますが、周辺の都市では80%増ものダウン症候群の赤ん坊の出産が見られます。また中枢神経系統に異状のある赤ん坊の出産も明らかにされています。

アメリカガン研究所NCI報告
アメリカ/サウスカロライナ州サバンナリバー工場周辺では大人の白血病が増加しています。また同州バーンウエル地区の周生期(出世期~早期新生児期)の死亡率が高いことも非公式に伝えられています。


●薄めて海に捨てるしか能のない原子力学会

 ところで、東電は当初、冷却水タンクが満タンのため、「多核種除去設備(ALPS)」を稼働させて処理した水を海へ放出する方針としました。しかし、ALPSでもトリチウムは1リットル、200万~300万ベクレル、トリチウムが含まれることになります。非常に高い濃度です。

 その後、東電は、福島原発事故で汚染された地下水のトリチウムの濃度が1リットル当たり60万ベクレル前後であり、場合によりこれを海に放出せざるを得ないと言っていました。

 これに対し、数日前、日本の原子力学会は、トリチウムに関しては安全基準(安全基準が1リットル当たり6万ベクレル/L)以下に水で薄めて排出すべきという提言を公表しています。
 
 しかし、まさに国際的な原子力関係者間では、薄めて海に捨てる程度の認識しか無いと言うのは恐ろしいことです。もとより、原子力学会は、「原発安全神話」の総元締め、原子力村の中核にある団体です。

◆汚染水放出、トリチウム薄める必要…原子力学会

 日本原子力学会の東京電力福島第一原子力発電所事故に関する調査委員会(委員長=田中知・東大教授)は2日、汚染水の海洋放出に関する提言を盛り込んだ最終報告書案をまとめた。

 今後、本格稼働する放射性物質の除去装置でストロンチウムなどを取り除き、その後も残るトリチウムは安全基準値(1リットル当たり6万ベクレル)より大幅に薄めて放出する必要があるとしている。事故原因については地震による原子炉の破損を否定、津波によるものと結論づけた。

 学会事故調は昨年8月に検討を開始。関係者から新たなヒアリングは行っておらず、すでに発表されている政府、国会、東電の事故調査報告書の分析を中心にまとめた。年内にさらに数回検討会を開き、確定版を約400ページの報告書として出版するとしている。

(2013年9月2日18時07分 読売新聞)


●トリチウム汚染水濃度の意味するもの

 すでに述べたように、「多核種除去設備(ALPS)」を通過しても、トリチウムは1リットル当たり、200万~300万ベクレルのトリチウムが含まれることになり、それを希釈してもせいぜい1/4~1/5にしかならないはずです。 

 下の記事には、福島原発敷地内の汚染された地下水のトリチウムの濃度が1 リットル当たり60万ベクレルとあります。まさに、200万~300万ベクレルの1/4~1/5と
いうことになります。
 
 おそらく実際には、今まで海に流出している汚染水は、それよりはるかに高いものを流している可能性があると思えます。 

福島第1原発:汚染水、海洋流出疑い強く…対策部会設置へ
毎日新聞 2013年07月10日 21時10分(最終更新 07月11日 01時06分)

高濃度の放射性物質が検出された井戸

 東京電力福島第1原発の敷地内で高濃度の放射性汚染水が検出されている問題で、原子力規制委員会は10日、「汚染水が地中に漏れ、海に拡散している疑いが強い」との見解を表明し、汚染源の特定と対策を検討する作業部会を近く設置することを決めた。水産資源の風評被害などを招かないためにも早急な対応が求められる。【鳥井真平】

 高濃度の汚染水は、海から30メートル以内にある複数の井戸から検出。10日夕までの最高値はトリチウムが1リットル当たり60万ベクレル▽ストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質90万ベクレル▽セシウム134が1万1000ベクレル▽セシウム137が2万2000ベクレルとなっている。

 東電は原因として、「事故直後の2011年4月に2号機取水口付近で汚染水が漏れた際、一部が地中に残留していた」と説明。「環境への有意な影響は見られない」との見解を示している。

 しかし、10日の規制委の定例会では、港湾内の海水や、潮の干満に影響されにくい海側遮水壁の内側の海水では放射性物質の濃度が高い傾向があり「(東電の見解には)疑問がある」と指摘。原子炉建屋から地中へ漏れた汚染水が地下水と混ざり、海側へ流れている可能性もあると見ている。

 ここでは、仮に海に流れ出る汚染水に含まれるトリチウムの濃度を、1リットル当たり60万ベクレルとした場合、それは、日本の排出基準(安全基準)の1 リットル当たり6万ベクレルの10倍にあたります。

 ※トリチウムについては、日本では、排出基準(安全基準)が
   1リットルあたり6万ベクレルとなっている。

   正確には、放射線障害防止法に定められている排水中
   トリチウム濃度限度60Bq/cc=6万ベクレル/L


 排出基準と飲料水基準を比較しても、あまり現実的ではありませんが、ここでは、カナダのオンタリオ州の飲料水基準と比較してみたいと思います。本来、日本政府は、早急にカナダ・オンタリオ州にならって飲料水についてのガイドラインをつくるべきです。ここでも日本政府が原子力村にばかり顔を向け、気をつかっていることがよくわかります。

 ※カナダ飲料水基準の根拠

 カナダでは、飲料水中のトリチウムの基準は1リットル当たり7,000ベクレルときまっています。

 しかも、最近 のオンタリオ飲料水諮問委員会(ODWAC)報告では、現在、この基準を更に1リットル当たり20ベクレルまで大幅に減らすべきであると結論付ける科学的根拠 を出しています。

 ※オンタリオ飲料水諮問委員会(ODWAC)報告
★Report and Advice on the Ontario Drinking Water Quality Standard for Tritium  Prepared for the Honourable John Gerretsen Ontario Minister of the Environment  By the Ontario Drinking Water Advisory Council May 21, 2009

 したがって福島原発からの汚染地下水のトリチウムレベル、1リットル当たり60万ベクレルは日本の排出基準の10倍ではあっても、カナダの飲料水基準に照らし合わせると70倍、さらにカナダ・オンタリオ州政府のODWAC科学諮問委員会の申請した基準より、実に25,000倍高いということになります。

 さらに、トリチウムは、身体の皮膚からも容易に浸透することからして、最低限、福島県、宮城県、岩手県、茨城県、千葉県など太平洋側の海水浴については、慎重であるべきだと思います。

 ひとたび太平洋に流れ出たトリチウムは、海流、潮流により拡散され、2~3年でカナダ、アメリカ、メキシコなどの太平洋岸に到達することになります。

 以下は、 ドイツ・キール海洋研究センターの福島第一原発事故現場から流出した汚染水の拡散シミュレーションです。もとの時間を1/10としています。5年間分の拡散シミュレーションを1分でみることが出来ます。  


ドイツ・キール海洋研究センターの福一水汚染シミュレーションの
5年間を1分でみる短縮版  出典:YouTube


●過去、各地の原発が高濃度トリチウムを海に流していた可能性

 ところで、(独)日本原子力研究開発機構原子炉廃止措置研究開発センターの放射性液体廃棄物に関する平成21~22年度のデータを見ると以下のようになっています。

※正式名称
平成22年度 原子力施設における放射性廃棄物の管理状況及び放射線業務従事者の線量管理状況について 平成 23 年 9 月 経済産業省

> ●放射性液体廃棄物中のトリチウムの年度別放出量

> (独)日本原子力研究開発機構原子炉廃止措置研究開発センター
>>      8.6×10^11 Bq/年
> もんじゅ  1.5×10^8 Bq/年
>
> 泊    3.3×10^13 Bq/年(H22)     
> 女川   2.2×10^10 Bq/年(H22)
> 東通  3.0×10^10 Bq/年(H22)
> 福島第一 2.0×10^12 Bq/年(H21)
> 福島第二 1.6×10^12 Bq/年(H22)
> 東海 7.5×10^7 Bq/年(H21)
> 東海第二 4.2×10^11 Bq/年(H21)
> 柏崎刈羽 6.6×10^12 Bq/年(H22)
> 浜岡 6.4×10^11 Bq/年(H22)
> 志賀 2.8×10^11 Bq/年(H22)
> 美浜 1.3×10^13 Bq/年(H22)
> 高浜 6.5×10^13 Bq/年(H22)
> 大飯 5.6×10^13 Bq/年(H22)
> 敦賀 1.2×10^13 Bq/年(H21)
> 島根 2.3×10^11 Bq/年(H22)
> 伊方 5.1×10^13 Bq/年(H22)
> 玄海 1.0×10^14 Bq/年(H22)
> 川内 3.0×10^13 Bq/年(H22)
> ---------------------------
> 合計 3.6×10^14 Bq/年(H22)


 そこで、事故後の福島第一原発から毎日、

 1日 400トン
 1リットル中のトリチウム 60万ベクレル(上述の値)

の排水が

 1年 365日

太平洋に流れ出たとすると、

=0.8×10^14 Bq/年

となります。

 上記の年間 0.8×10^14Bq/年 という計算値は、玄海 1.0×10^14 Bq/年(H22)などより少なく、、排水の1リットル当たり60万ベクレル程度の濃度の排水を垂れ流していたことになります。

 すなわち、東電は過去、そして現在も、排出基準の1リットル当たり、6万ベクレルを大きく超えるトリチウムを毎日、太平洋に垂れ流していたことになります。

 このことの意味することは、稼働中の全原発では排出基準を5倍以上超えるトリチウムを何十年も垂れ流していたことになります。

 だから原子力学会は、薄めて垂れ流せばよいとシラーと言ったのでしょう!



 以下は、◆鷹取 敦 :フランスのテレビ番組、「終わらない悪夢」(後編テキスト) http://eritokyo.jp/independent/aoyama-fnp124..html の関係する部分です。

◆鷹取 敦 :フランスのテレビ番組、「終わらない悪夢」(後編テキスト) http://eritokyo.jp/independent/aoyama-fnp124..html 

 グリーンピース フランス支部のヤニック・ルセレは20年間、この施設が環境に与える影響を研究してきた。

「これは放射性廃液の排出用パイプ、ラ・アーグの施設から来ている。延べ4.5キロメートルのパイプがラ・アーグ岬から1.7キロの海域で排出している。これがドラム缶に詰めたら相当な数になるがドラム缶を船から投棄することは禁止されている。」

 1993年国際条約で放射性廃棄物の海洋投棄は全面禁止。

 あくまでも船からの投棄は禁止。矛盾しているようだが陸上からの排出は未だに合法。

 ラ・アーグのパイプは毎日400立方メートルの放射性廃液を英仏海峡に投棄。排出されたヨウ素129の一部が北極圏で検出されている。

 海中のサンプル採取の様子をグリーンピースが撮影。原子力調査機関クリラッドの分析によると海底は放射性廃棄物で汚染されている。このパイプはセシウムやコバルトなどが排出し、海草や甲殻類、貝に吸収され食物連鎖に入り込んでいる。


●垂れ流される放射性廃棄物

 トリチウムやクリプトン85のような一部の放射性物質を外に出さないためには膨大なコストがかかる。ラ・アーグ再処理工場はその殆どを環境中に放出することをフランスの原子力安全機関(アンドレ=クロード・ラコスト委員長)から許可されている。

 ラ・アーグの排出量はどのように決めているのか。

「企業(アレバ社)が排出予定の廃棄物の根拠を記した申請書を提出する。まず協力団体である放射線防護原子力安全研究所に依頼し専門的な調査を行う。要請が技術的に妥当か、申請が妥当な基準に収まっているか確認するため。2番目の調査で申請された排出物が地域の住民に影響を及ぼさない確認する。この2つの調査を考慮に入れて排出される量を出来るだけ少なく設定する。」

 使用済み核燃料を処理する際に排出されるクリプトン85を含むガスは閉じ込められないので稼働時間に比例して排出されるのでは?

「企業側に処理方法の再検討を求め、排出物を外に出さない方法を見つけるよう伝える。期限を定め再検討の結果を提出させる。」

 クリプトン85を閉じ込められますか。
 
 「今は出来ません。企業側に減らすよう要請したが簡単ではない。」

 ラ・アーグには独自の検査チームがあり空から落ちてくる放射性物質のサンプルを採取している。チームのリーダーに取材できたが施設の広報責任者がつきそってきた。

施設の排出物が環境を汚染しているか。

「いいえ。汚染というつもりはない。測定では通常自然界で浴びるバックグラウンド放射線を検出している。影響はない、と言っている。」(広報担当者による質問しなおし。)「環境の中にその存在は見つけたが汚染ではない、ということだね。」

アレバ社の社員の困惑が理解できる。再処理工場が放射性物質を排出していることは認めるが、それは汚染ではなく「存在」としか言えないのだ。

「アレバ社が、基準を下回っている、という時、問題はその基準が妥当か、ということ。こうした基準は広島・長崎の非常に短時間に外部から強烈な被曝を受けた被曝データを参考にしている。施設のそばの住民は低レベルではあるが日常的に汚染された空気や食物を摂取している。微量であっても継続的に体内から被曝している。チェルノブイリでは広島・長崎のデータをモデルにしてチェルノブイリの周辺で癌発生の増加は無いだろうと科学者が予測した。しかし、5年後、子供の間で甲状腺ガンが急激に上昇した。モデルの選択が間違っていた。ラ・アーグの周辺の環境は汚染されている。健康に影響する可能性は高いだろう。」

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