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●日本の大メディアは欧米に比べ桁違いに巨大である! 日本社会には大小、全国、地方で多くの新聞社がある。 周知のようにわが国では表1及び表2に示すように、「新聞」メディアが全国、地方ともに異常なほどの規模のシェアをもっている。 ここでの問題は、全国紙を例にとると発行部数が米国より一桁大きいことだ。 米国は人口規模で日本の3倍弱ある。しかし、米国の著名な新聞の発行部数はニューヨークタイズムであっても読売新聞の発行部数の1/10程度、英国のガーディアンは読売新聞の発行部数の1/25程度と非常に少ない。 表1のデータはかなり古いものだが、米国のニューヨークタイムズを例にとると、現在の発行部数は約110万部であるから、表1の発行部数とそれほど大きくは違わない。また英国のガーディアンの現在の発行部数は約40万部であるから同様に大きく違わない。 表1 世界の主要新聞発行部数比較
外国紙は1996年・日本紙は1997年の調査 2)都道府県別新聞発行部数 2003年1−6月「社団法人ABC協会」「社団法人日本新聞協会」調べ ●地方紙も同様に巨大である! 地方紙の場合はどうだろうか? 日本の地方紙の発行部数でも、たとえば中日新聞は270万部、北海道新聞は120万部であり、米国を代表するニューヨークタイムズより発行部数が多い。 中日新聞の発行部数は、地方紙では突出しているが、北海道新聞、西日本新聞、静岡新聞、中国新聞、神戸新聞、河北新聞、京都新聞、新潟日報、信濃毎日新聞といった地方新聞でも英国を代表するガーディアンやフランスを代表するル・フィガロ、ル・モンドよりも発行部数が多いのである。 表2 主要地方新聞と世界主要紙の発行部数比較
1)『週刊金曜日』−1997年10月17日号・黒薮哲哉 外国紙は1996年・日本紙は1997年の調査 2)都道府県別新聞発行部数 2003年1−6月「社団法人ABC協会」「社団法人日本新聞協会」調べ ●新聞の発行部数と世論形成 かくも日本の新聞の発行部数が多いということは、何を帰結するであろうか? 容易に分かることは、日本では新聞メディアが毎日くりだす膨大な量の記事によって一大「世論」が形成されることである。これは日常的によくあることであり検証可能なことでもある。 事実、新聞やテレビの大メディアは、同一論調の紙面やニュース番組を”護送船団”的に、連日大洪水のように繰り出している。そして、連日繰り出したその後に、いわゆる世論調査を行っている。世論調査の結果は、新聞の紙面やニュース番組の論調にほぼ従っているのである。 それは言うまでもなく、新聞記事やテレビのニュースの内容が間違ったり、逆に論調が同一だった場合、日本の津々浦々まで間違いや同一論調が行き渡ることを意味し、国民の圧倒的多くはそれらの論調の影響を受けるということである。 このように、日本社会にあっては、国民の「世論」の圧倒的多くは、圧倒的多くの発行部数や視聴率をもつ新聞や全国ネットのテレビ報道によって形成されているのである。 したがって、もし、誤報はもとより大部分の新聞の論調が同じだった場合、日本全体の「世論」はそれら大メディアの論調に大きな影響を受ける。 これを逆説すれば、これは大メディアが”護送船団化”すれば、また大メディアと政府や政党、司法権力が暗黙のうちに連携すれば、いとも簡単に「情報操作による世論誘導」が行えることを意味する。 しかも、メディア側の”護送船団的論調”を一段と加速させているのが、「記者クラブ」の存在である。この記者クラブも、日本固有のものである。 記者クラブが存在することにより、新聞、テレビなどの大メディアは足を使った取材を怠り、国から市町村まで行政、司法(検察庁など)、業界(経団連など)による一方的な記者レク発表内容をろくに吟味することなく記事化するのである。これも日常的によく見ることである。 かくして日本社会では、国、自治体などの行政機関や検察機関の一方的な大メディアへの情報提供によって、国民が誘導され、ゆがんだ世論が形成されることとなるのである。 こうした傾向は近年とみに加速化している。 <参考> ◆青山貞一:日本のメディアの本質を考える@発行部数と世論誘導 ◆青山貞一:日本のメディアの本質を考えるA地方紙と発行部数 つづく |