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発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率(CFR)による
世界各国・地域・グループ別

COVID-19
リスク評価


青山貞一 Teiichi Aoyama
(東京都市大学名誉教授、環境総合研究所顧問、元ローマクラブ日本事務局)
池田こみち Komichi Ikeda 
(環境総合研究所顧問、元東京大学医科学研究所
、元ローマクラブ日本事務局)
鷹取敦 Atsushi Takatori
(環境総合研究所代表取締役、所長

独立系メディア 
E-Wave Tokyo
 

掲載月日:2020年8月10日  
無断転載禁

キーワード:新型コロナウイルス、COVID-19、致命率、CFR、死亡者数/感染者数、
     リスク総合評価
、Case Fatality Rate、世界各国、世界地域、日本、
     G7,G20、BRICS、ASEAN、
旧社会主義諸国、北欧諸国、
     中南米カリブ諸国、アフリカ諸国、中東諸国

       第一回目調査、第ニ回目調査、第三回目調査、第四回目調査

はじめに  前提について

 致命率(CFR)の解説は本稿末尾にある。

 5月15日からほぼ3週間おきに世界の主要国の新型コロナウィルスによる致命率(死亡者数/感染者数)
を見てきたが、日本においては、今回の新型コロナ感染症(COVID-19)に感染して、すぐに死に至るわけ
ではなく、おおよそ3週間のタイムラグをおいてから重篤化し亡くなるケースが多く見られている。

 図1は、その日本における感染者数と死亡者数を示したものだが、死亡までのタイムラグにはばらつきが
あるものの、それぞれのピークに概ね3週間のずれがあることがわかる。

 ただし、この3週間というタイムラグは、あくまでも日本の実証例であり、他国にそのまま当てはめられるも
のではない。このタイムラグは、高齢者割合、重篤者割合、既往症割合、医療実態(病床数、医療スタッフ
数、医療機器、医療技術、ICU、対症療法医薬品使用など)により異なってくることが推定されるからである。

 また、中国やイタリアで猛威を振るっていた感染拡大の初期のころ(2019年末から2020年4月頃まで)と半年
が過ぎて世界に広まった7月~8月では、感染から死亡に至る期間も当初に比べて長くなっている可能性も考
えられるため、どの時点で評価するかによっても異なる。

 しかし、現時点では他国の詳細データがないため、本調査では、従来のCFR調査の対象国とグループの
すべてに3週間のタイムラブをあてはめ掲載してみた。



図1 日本の感染者数と死亡者数の時系列グラフ
      出典:作成:鷹取敦環境総合研究所代表

 このことから、この間実施してきたCFR調査対象国について、感染から死亡までに概ね3週間のタイムラグ
があると仮定して改めてCFRを算出してみた。

 計算の前提は、以下の①~③の式の通り、第2回目調査(6/3)から第3回目調査(6/24)の間に死亡した人
数(差)を第1回目(5/15)から第2回目(6/3)の間に感染した人数(差)で割って算出し、以下同様とした。

 ①死亡数(6/03→6/24)÷発症数(5/15→6/03)
 ②死亡数(6/24→7/15)÷発症数(6/03→6/24)
 ③死亡数(7/15→8/05)÷発症数(6/24→7/15)

注) 新型コロナウィルスに感染したことが確認されてから死亡に至るまでの日数について

 既に述べたように国によってまた、患者個人の特性によってばらつきがある。例えば、初期段階の中国とイタ
リアについて、以下のような情報が報じられている。これらの情報からも、死亡に至るまでの日数はどの時点で
把握するかによっても異なることがわかる。

<事例1 1月末時点の中国の場合>

 2020年1月25日までで、中国本土で1975例が2019-nCoVに感染し、56例が死亡した。
最新の死亡率は、2684例の疑い例を含めて約2.84%。中国国民健康委員会は1月22
日までに17例(男性13例、女性14例、年齢中央値75歳)が死亡したことを発表。頻度の
高い初期症状は発熱(64.7%)と咳(52.9%)だった。症状発現から死亡までの日数は
14.0日(中央値)で、70歳以上の患者(11.5日)の方が70歳未満の患者(20日)より短か
った。

 出典:文献:Wang W, et al. Updated understanding of the outbreak of
 2019 novel coronavirus (2019‐nCoV) in Wuhan, China. J Med Virol. 2020
Jan 29. [Epub ahead of print]

<事例2 3月中旬時点のイタリアの場合>

 イタリア政府は22日までに、新型コロナウイルスの犠牲者について平均的には発症し
た「8日後」に亡くなっている傾向があることを明らかにした。 3月17日まで得られたデ
ータに基づく。イタリア国内の感染事例に限ってのデータとしている。

 出典:2020.03.22 Sun posted at 17:33 JST
    新型コロナ感染者、発症から死去まで平均「8日間」 イタリア調査


(1)発症・死亡のタイムラグを考慮した世界の地域別・経済圏別の致命率(CFR)

 以下のグラフの上にある数値及び左のグループ説明の右にある数値はCFR=死亡者数/感染者数(Case Fatality Ratio)である。


出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 
  発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価
     2020-8-10


<参考>死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%) 第五回

出典:青山貞一・池田こみち 
   第五回 致命率
(CFR)による
世界各国・地域別
COVID-19リスク総合評価

     2020-8-9


(2)G7諸国について

 これまでのように調査当日の累積感染者数と死亡者数からCFRを計算した場合、G7諸国
の平均CFRは5月15日から8月5日の間に10%から9%へと1ポイント低下しただけで大きな
変化が見られないが、感染から死亡までに3週間のタイムラグがあったと仮定すると、G7の
平均CFRは6月中旬までは9.2%だったものがその後は、8月初旬に掛けて3.6%⇒2.1%へと
大きく減少していることが分かる。このことは、3月中旬から蔓延し始めた新型コロナウィルス
による死者が5月下旬まででピークを迎え、その後は次第に死亡者数が低下していることを示
していると言える。

 イタリアは北部のロンバルディア州を中心に中国移民が多いことから、ヨーロッパ諸国の中で
最初に感染爆発を起こした国だが、累積のCFRではこの二ヶ月間14%のまま推移している。
しかし、タイムラグを考慮した場合には、5月下旬のCFRは11%と高かったものの、その後は
5.8%⇒4.1%と低下している。 このように、G7グループでは、多くの国が4月から5月下旬に致
命率が上昇したが、その後は改善するというパターンを示している。日本のように8.5%だったも
のが、その後2.6%⇒0.9%と大きく減少しているケースでは、感染者数が増加し、一方で、死亡
者数が少ない、すなわち軽症や無症状の陽性者が多いことを示しているとも言える。

発症・死亡のタイムラグを考慮したG7諸国の国別致命率(%)の推移

出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 
   発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率
(CFR)による
世界各国・地域別
COVID-19リスク総合評価

     2020-8-10

<参考>死亡数及び発症数の累積値によるのG7諸国の致命率の推移(%) 第五回

出典:青山貞一・池田こみち 
   第五回 致命率
(CFR)による
世界各国・地域別
COVID-19リスク総合評価

     2020-8-9


(3)G20諸国について


 累積数でCFRを見た場合、G20諸国のCFR平均は中進国が含まれたことにより、G7諸国よりCFR
は低く推移し、5月15日から8月5日までの2ヶ月半で、6.2%⇒6.1%⇒6.0%⇒5.7%⇒5.3%とG7諸国同様、
概ね1ポイント低下している。

 一方で、3週間のタイムラグを勘案すると;

5月15日~6月3日までに発症して、6月3日から6月15日までの間に死亡した人の割合が最も多く6.7%
であるのに対して、その後は大幅に減少し、6月下旬以降のCFRは、3.5~3.2%と半減している。

 このグループで特筆すべきは、G7グループが総じて右肩下がりであるのに対して、中国は感染が発生した
場所であり、昨年11月から感染がいち早く広がったこともあって、5月にはCFRは1.6%まで低下していた点で
ある。それにもかかわらず、その後経済を再開した後の武漢以外の各地での再拡大があり、7月末から8月
にかけてCFRが6.0%まで拡大した点も注目したい。

 また、オーストラリアは一旦収束したかに見えたが、7月に入り、ヴィクトリア州メルボルンを中心に感染が拡
大し、タイムラグを考慮したCFRが右肩上がりとなっている。

発症・死亡のタイムラグを考慮したG20諸国の国別致命率(%)の推移

出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 
   発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率
(CFR)による
世界各国・地域別
COVID-19リスク総合評価

     2020-8-10

<参考>死亡数及び発症数の累積値によるのG20諸国の致命率の推移(%) 第五回

出典:青山貞一・池田こみち 
   第五回 致命率
(CFR)による
世界各国・地域別
COVID-19リスク総合評価

     2020-8-97


(4)EU諸国

 累積数でEU諸国平均のCFRを見ると、5月15日~8月5日の3週間毎の変化は6.7%~5.6%へ
とやはり1ポイントの低下となっている。しかし、タイムラグを考慮したCFRの変化は5.8%が2.1%
と変化が大きくなっている。 5月中旬にCFRが高かったのはフランス、スペイン、イタリアといった
西欧諸国だけでなく、ブルガリア、クロアチア、ハンガリー、ルーマニアといった東欧諸国について
も8%~17%と高い割合を示していたことがわかる。その後はこれらの国々も低下しているが、7
月に入ってもハンガリー、ルーマニア、アイルランド、クロアチアといった国々では引き続き、5~10
%と高い比率となっていた点が注目される。

発症・死亡のタイムラグを考慮したEUの国別致命率(%)の推移

出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 
   発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率
(CFR)による
世界各国・地域別
COVID-19リスク総合評価

     2020-8-10

<参考>死亡数及び発症数の累積値によるのEU諸国の致命率の推移(%) 第五回

出典:青山貞一・池田こみち 
     第五回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価
     2020-8-9


(5)G7・G20に属さない先進国(アイルランド、スイス、ニュージーランド)

 累積数で見ると、この3ヶ国は比較的数値が安定していて5月15日~8月5日の間の変化は極めて
小さい。アイルランドが6.3~6.7%、スイスが6.1~5.5%、ニュージーランドが1.4%で横ばいである。
 しかし、タイムラグを考慮すると、イタリア、フランスなどと国境を接しているスイスのCFRは5月中
旬から下旬にかけてCFRが11%まで上昇しており、その後は2.0%⇒0.8%と大きく減少していること
が分かる。また、アイルランドは6月に入ってから高くなり、7月には再び減少に転じていることがわか
る。

発症・死亡のタイムラグを考慮したG7・G20・EU以外の国別致命率(%)の推移

出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 
   発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率
(CFR)による
世界各国・地域別
COVID-19リスク総合評価

     2020-8-10

<参考>死亡数及び発症数の累積値によるのG7・G20外諸国の致命率の推移(%) 第五回

出典:青山貞一・池田こみち 
   第五回 致命率
(CFR)による
世界各国・地域別
COVID-19リスク総合評価

     2020-7-17


(6)BRICS諸国・ASEAN諸国

 累積数で見た場合、このグループのCFRの平均値の推移は5月中旬から8月上旬までの間、3.7%
から2.8%へと約1ポイント低下した。そんななか、累積でみても、ロシアの感染者数が増加しているこ
とからCFRが右肩上がりとなっている点について既に指摘した。その背景には、若年層の無症状者の
感染が急増し、一日5000人を超える感染者が出ており、累計が88万人を超過したという状況がある。

 このグループではブラジルが感染者数の急増から、CFRが大幅に減少していることが明らかになっ
ている。また、南アフリカにおいても、感染者数が急増し、アフリカ大陸のほぼ半数を上回る50万人を
突破し、死者も1万を超え急増していることから、CFRは7月末に入り、再び上昇に転じていと考えられ
る。

 ASEAN諸国は、シンガポール、カンボジア、ラオス、ベトナムなどが感染者数、死亡者数が低く維持さ
れてきたため、この間、グループの平均が累積で2.1%から1.5%へと低下していた。しかし、タイムラグを
考慮した致命率の推移で見ると、5月中旬から6月初旬にかけては、インドネシアでCFRが7.5%と高い状
況であったことが分かる。その後7月に入り、CFRは5.7%へと低下しているが、感染者数、死者数とも、6
月に一旦平準化したものが、7月に入り再拡大していることにより、CFRは5.7%のまま横ばいとなっている。

 ベトナムではこれまで死亡者ゼロで推移してきたが、7月末から死者が出始め、8月7日時点では、747人
感染者に対して、死亡者は10人を数えている。そのため、タイムラグを考慮したCFRでは、7月末から8月
に掛けて大きくCFRが38%となり、地域の平均を押し上げている。

発症・死亡のタイムラグを考慮したBRICS・ASEANの国別致命率(%)の推移

出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 
   発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率
(CFR)による
世界各国・地域別
COVID-19リスク総合評価

     2020-8-10

<参考>死亡数及び発症数の累積値によるのBRICA・ASEAN諸国の致命率の推移(%) 第五回

出典:青山貞一・池田こみち 
     第五回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価
     2020-8-9


(7)旧社会主義国・北欧諸国

 旧社会主義国の累積数に基づくCFRの平均は、5月中旬から6月末までは3.9%で推移しその後、
8月5日には3.4%へと僅かに低下した程度であったが、タイムラグを考慮して計算すると、グルー
プの平均CFRは、この2ヶ月半で、4.7%⇒3.4%⇒2.4%と2ポイント以上低下している。

 5月から6月にかけては、ブルガリア、クロアチア、ハンガリー、ルーマニアと言った東欧諸国やバ
ルカン半島諸国で致命率が高かったことが分かる。 ハンガリー、ルーマニア、クロアチア、セルヴ
ィアなどは、6月から7月にかけてもCFRの数値が高く8~9%となっていたが、8月に入ってこれらの
国々では、低下してきている。

 一方、中国は先に述べたように、5月には既に第一波が収束に向かいつつあり、CFRは1.6%と
低かったものの、その後武漢以外の都市で再拡大し、CFRが4.4%へと上昇している点が注目され
る。

 ロシアは、タイムラグを考慮してもCFRは概ね2%前後で推移している。7月に入り、大幅に感染者数
が増加しているが、無症状の若者層の感染者が増加していることもあり、死亡者の増加には至って
いない。

 北欧諸国のCFRは累積数の平均値でみると、5.2%⇒4.9%⇒4.2%⇒3.9%⇒3.8%と右肩下がりに
低下しているが、タイムラグを考慮した場合には、5月~6月にかけての平均が3.1%だったものが、8
月には1.1%まで低下していることが分かる。

 このグループで当初最もCFRが高かったのはスウェーデンの7.9%だが、その後は1.5%まで大幅に
低下し、死亡者数の増加が抑制されている。その他の国々も、5月中旬のCFRが最も高く、その後は
改善している。しかし、デンマーク、フィンランドともに、8月に入って再び僅かながら上昇している点が
気がかりである。

発症・死亡のタイムラグを考慮した旧社会主義国・北欧諸国の国別致命率(%)の推移

出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 
   発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率
(CFR)による
世界各国・地域別
COVID-19リスク総合評価

     2020-8-10

<参考>旧社会主義国・北欧諸国のG7諸国の致命率の推移(%) 第五回

出典:青山貞一・池田こみち 
     第五回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価
     2020-8-9


(8)中南米諸国

 中南米諸国の累積数に基づくCFRはこの間3.7%から3.3%gへと僅かに低下したが他の地域のように
大幅な低下は見られていない。その背景としては、ペルーはグアテマラ、チリのように5月以降、右肩上
がりにCFRが増加している国が見られることがある。南半球では冬の季節が到来しており、感染者数が
拡大し、貧困層などで死亡が増加していることが伝えられている。

 タイムラグを考慮したCFRの平均値は、5.6%から4.5%へと2ポイント低下しているが、国別にみると、
ペルーでは、7月中旬から8月にかけてCFRが大幅に上昇しており、5月以降、感染が拡大しつつあるこ
とを示している。ヨーロッパ諸国に比べて感染の始まりが遅い分、今後もCFRの上昇が見られる可能性
がある。

発症・死亡のタイムラグを考慮した中南米諸国の国別致命率(%)の推移

出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 
   発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率
(CFR)による
世界各国・地域別
COVID-19リスク総合評価

     2020-8-10

<参考>死亡数及び発症数の累積値によるの中南米諸国の致命率の推移(%) 第五回

出典:青山貞一・池田こみち 
     第五回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価
     2020-8-9


9)アフリカ諸国

 アフリカ諸国の累積数によるCFRはこの間4.1%から2.7%へと低下しているが、タイムラグを考慮
した場合には、5.1%から4.7%と減少幅が小さくなっている。中南米諸国同様に、感染の始まりが遅
く、ゆっくりと進行したため、7月中旬以降になってCFRが上昇している国が見られる。

 WHOでは、アフリカへの人的・物的支援を強化しているが、貧しい農村部に感染が拡大していった
場合には、医療が追いつかず結果として死亡者が増加することにもなりかねない。

 典型的な例として、ザンビアでは、6月以降右肩上がりに感染者数、死亡者数が増加しており、タイ
ムラグを考慮した倍、7月中旬から8月上旬に掛けての致命率は31%まで増加し今も死亡者数が増
加し続ける可能性があることが危惧される。

参考

ザンビアの日ごとの感染者数のグラフ


ザンビアの日ごとの死亡者数のグラフ


発症・死亡のタイムラグを考慮したアフリカ諸国の致命率(%)の推移

出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 
   発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率
(CFR)による
世界各国・地域別
COVID-19リスク総合評価

     2020-8-10

<参考>死亡数及び発症数の累積値によるのアフリカ諸国の致命率の推移(%) 第五回

出典:青山貞一・池田こみち 
     第五回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価
     2020-8-9


(10)中東諸国

 中東諸国では、累積数で算出したCFRでは、戦争状態にあるイエメンのCFRが極めて高く、4人に1人が
死亡する状況となっており、その他シリア、イラン、イラクなどでもCFRの低下は見られていなかった。地域
の平均は3.2%から3.7%へと僅かに上昇している。

 しかし、タイムラグを考慮したCFRでは、5月~6月にかけて、イエメンではCFRが55%と極めて高かったも
のが7月中旬以降は15%程度まで低下していることが分かる。一方、シリアやイランでは、5月の調査以降
右肩あがりにCFRが上昇し、12%~9%と高いことから今後も注意が必要と思われる。いずれにしても戦争
状態や紛争状態が続く地域では、十分な医療体制や医療資源の供給がままならないことから一般市民の
感染症へのリスクは一段と高まることは間違いない。

発症・死亡のタイムラグを考慮した中東諸国の致命率(%)の推移

出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 
   発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率
(CFR)による
世界各国・地域別
COVID-19リスク総合評価

     2020-8-10

<参考>死亡数及び発症数の累積値によるの中東諸国の致命率の推移(%) 第五回

出典:青山貞一・池田こみち 
     第五回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価
    2020-8-9



◆解説 COVID-19リスクの調査評価指標

 本調査の目的は世界各国。地域、経済グループ等を対象に、致命率(CFR:死亡者数/感染者数)を
明らかにすることである。すでに以下のように五回調査をしている。

過去の調査結果は以下
第一回 致命率(CFR)による世界各国・グループ別COVID-19リスク評価 青山貞一・池田こみち
第二回 致命率(CFR)による世界各国・グループ別COVID-19リスク評価 青山貞一・池田こみち
◆第三回 致命率(CFR)による世界各国・グループ別COVID-19リスク評価 青山貞一・池田こみち
第四回 致命率(CFR)による世界各国・グループ別COVID-19リスク評価 青山貞一・池田こみち
第五回 致命率(CFR)による世界各国・グループ別COVID-19リスク評価 青山貞一・池田こみち

 本稿では、
致命率(CFR: Case Fatality Ratio)をCOVID-19感染がもたらすリスクの代表的な
指標として、総合評価を行うこととした。それは、単なる感染者数、死亡者数だけでなく、感染者がそ
の国、地域で死に至った背景、具体的には、今回のようなパンデミックに対応できる救急搬送体制か
ら病院数・病床数・医療設備・医師・看護士などの医療リソースの充足度、また、医療体制の有無、さ
らには国や自治体のリスク管理政策の妥当性など、如何に死者を減らせるか、医療崩壊に至らずに
済むかを反映した指標であると考えたからである。

 
なお、CFRが10%の場合、感染者100人の場合、10人が死亡者となる。CFRが5%の場合は、感
染者100人の場合、5人が死亡者となることになる。


 その結果、これまで分からなかったCOVID-19がもたらす「医療に関するカントリーリスク」についての
国際比較が可能となりつつある。

 本調査では、2020年8月5日時点での105各国の致命率を求め、評価している。第一回目は20
20年5月15日、第二回目は2020年6月3日第三回目は2020年6月24日、第四回目は2020
年7月15日
第五回目は2020年8月5日である。

 以下は致命率とは何かの説明である。

 まず、類似の指標として死亡率があるが、致命率と死亡率との関係は以下の通りである。分母が罹患
数の場合が致命率、分母が人口の場合が死亡率である。ここでは、世界各国のCOVID-19に感染した
人を対象としているので、致命率となる。


 


<用語解説> 

 致命率 (CFR: case fatality rate) は、疫学において特定の疾病に罹患した母集団のうち、その感染が
死因となって死亡する割合。致命率は通常、%で表されリスクの測定値を表す。


 なお、致命率は英語では
Case Fatality Ratioであり、略称CFRである。致命率が、10%の場合、
感染者の10人に1人が死亡数、5%の場合、20人に1人の場合の死亡数となる。

 CFRはさまざまな目的に援用できるが、これが増えるのは、総じて死亡者が増加することの警報
である。


 CFR(致命率)は、各国の救急搬送(ネットワーク)、救急医療、病床数、院内リスク管理体制、医師・看
護数、既往症・持病者対応、高齢者対応など院内感染、医療崩壊に通ずる重要な観点の総合指標と言
える指標である。