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既得権益にあぐらをかく放送業界
〜改めて日本のメディアを問う

青山貞一
 
掲載日2005.3.21

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 NHKと朝日新聞の係争を見るにつけ、日本の巨大メディア、ジャーナリズムが偉そうに言ってきたこと、すなわち「
素人ではなく、高度に訓練を受けた記者が取材し、裏を取り、編集段階で事実を厳密にチェックし、正確に事実を事実として報道する」という原点が全面的に瓦解したとことが分かるというものだ。

 先のコラムで書いたように、もし、NHKvs朝日新聞がともにウヤムヤ、インチキな解決をした場合、これは決定的なものとなるだろう。

筆者近影:東京都品川区の環境総合研究所にて。撮影、朝日新聞社

 だが、このようなこと、すなわち公共の電波資源を使いまた1000万部を超える部数を誇る日本の巨大メディアそしてジャーナリズムが、公器にふさわしいこと、本来なすべき事をしていないことは、何もNHKと朝日新聞に限ったことではない。

 たとえば、テレビ業界を例に取ると、連日、異常かつ過剰なエロ・グロ・ナンセンスな番組をこれでもか、これでもかと、まさに公共の電波資源を使い垂れ流している。

 こんなテレビ局が、果たして偉そうなことが言えるのかと誰でも思う。

 エロ・グロ・ナンセンス番組の洪水は、日本の子供の思考能力が低下した主要な理由のひとつと思えるほどである。それほど日本のテレビ局が毎日垂れ流している番組の質は低いと思える。まさに商業主義がもたらした公共資源悪用の極致をここに見る、と言ってもよいだろう。

 朝から夕方までコメンテーターが参加するいわゆる「情報番組」も同様だ。

 たとえば北朝鮮内情番組を連日、執拗に報じるテレビ各社は、それでは一体どれだけ米国のブッシュ政権が中東で中南米で大量殺戮をしているかを特集で報じたことがどれだけあるのか。

 イラク戦争突入直前に、米国政府の主張のつゆ払いをした日本の主要新聞社は、その後、大量破壊兵器が存在しなかったことが米国で明らかになったとき、まともな検証番組を制作し放映したのだろうか。

 ※ NHKは、2005年3月20日のゴールデンタイムにBSで
     大量破壊兵器問題の2時間番組を特集、放映した。内容
     には不満があるが、かつてワシントン支局長がホワイトハウ
     スの広報官と化していたNHKにしてはよくやったと思う

    BS特集 イラク戦争への道
    アメリカのメディアは何を伝えたか


 たとえば、テレビ朝日の「サンデープロジェクト」の著名なキャスターのように、自分の価値観、価値判断で強引に議論を引き回し、考えの異なるゲストの発言機会を抑制し、しかもゲストを公然と罵倒する。これほど不愉快きわまりない政治番組はないと思う。

   サンプロ(テレ朝)田原総一朗氏の侮辱的言動について

 
※ 同じ日曜日、フジテレビが放映する「報道2001」は、
     逆に自分と意見が異なるゲストを呼び、皆で意見を聞
     いた上で議論している。同じ政治番組でありながら、フ
     ジテレビの方がよほどマシだと思う。


お台場のフジテレビ遠景

 そのフジテレビとの視聴率競争に明け暮れ、あげくの果てにいわゆる視聴率調査を偽証した日本テレビもジャーナリズムを語る資格など到底ないだろう。TBSに至っては、発言事実をねじ曲げテロップしたとして石原慎太郎都知事に刑事告訴され書類送検される始末だ。

 このように、日本のテレビの局は一部評価される番組を制作し放映しているとしても、その大部分は、エロ・グロ・ナンセンス番組か、はたまた洗脳番組か、あるいは政府広報的番組であるといってよい。視聴者を愚弄するのもほどほどにしろ、と言いたくなる現状がある。

 ライブドアの堀江氏に今の巨大メディアは、単なる金儲けで公共の電波資源を使うテレビ、放送局を買収されてたまるかと言っている。

  
※ 公共の電波資源を私的に使い、広告代理店と一緒になって、
     いかに多くの広告料を稼ぐか、そのために視聴率をいかに稼
     ぐかに奔走しているだけではないのかと思える。事実、日本
     のテレビ局社員の年俸は、世間に比べ「異常」に高い。日経
     エンタテイメントの最新号によれば、フジテレビ社員の年収は
     全国関連企業172社中第一位だ。平均年齢が約40歳で
     1,529万円だそうである。テレビ朝日が1,485万円、日本テレ
     ビが1,481万円......と続く。通常のサラリーマンの平均年
     収が約600万円と比べれば、いかにこの業界の収益性が高い
     か、逆説すれ競争のない免許事業のなかでいかに金儲けに
     走っているかが分かろうというものだ。


 ここでも、こんなテレビ局が、果たして偉そうなことが言えるのかと誰でも思うだろう。
 元NHKのくだんのプロデューサが1億5,000万円詐取し、誰も分からなかったような業界に金のことをとやかく言われたくないのである。まさに今のテレビ事業は濡れ手にアワの水商売と言われても仕方ない。

つづく