エントランスへはここをクリック   

リサイクル燃料備蓄センター(RFS)

使用済核燃料貯蔵の

安全性に関する一考察(前半)

  斉藤真実
環境総合研究所(東京都目黒区)

掲載日:2014年6月7日
独立系メディア E-wave Tokyo
無断転載禁


速報1(5月17日)   速報2(5月18日)   速報3(5月19日)



 青森視察では、使用済み核燃料の中間貯蔵施設であるリサイクル燃料備蓄センター(以下「センター」とする)へも行くことができた。何と言っても、国内に初めてできた使用済み核燃料中間貯蔵施設とあっては、外観だけでもぜひ見ておきたい施設であった。

リサイクル燃料(※)備蓄センターとは?

 原発を稼働すると、使用済みの核燃料(※)が発生する。日本では使用済み核燃料は直接処分をせずに再処理を行うことになっている。再処理では、核分裂反応で発生したプルトニウムと、反応しないで残ったウランとを取り出し、新たな燃料に作り替えて再利用することを目的としている。

 六ヶ所再処理工場は、当初は1997年に操業開始の予定であったのが、事故や故障が度重なり、何回も延期され今に至る。そのため、再処理待ちの使用済み核燃料が各原発や六ヶ所再処理工場で溜まり続け、保管場所が満杯になりつつある。これを解決するために、使用済み核燃料を「一時的に」保管しておく施設として作られたのがセンターである。


図1:リサイクル燃料備蓄センター3,000トン保管施設イメージ図、出典:RFS

 この施設はリサイクル燃料貯蔵株式会社(RFS)により運営・管理されており、この会社は東京電力と日本原子力発電が出資してつくった会社である。使用済み核燃料を貯蔵する会社として、国から貯蔵事業の許可を受け、施設の建設・運営を行っている。

 全国から使用済み核燃料を集めているのではなく、あくまで東京電力と日本原子力発電からの使用済み核燃料のみを貯蔵している。最終的な貯蔵量は5,000トンであり、そのうち東京電力分は4,000トン程度、日本原子力発電分として1,000トン程度である。

 東京電力は福島第一・第二原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所を有し、日本原子力発電の発電所は東海第二発電所、敦賀発電所1号機2号機を有するので、これらの原発からの使用済み核燃料が貯蔵されることとなる。

 現在建っているのは3,000トン規模の1棟目であり、次に2,000トン規模の2棟目が建設される予定となっている。「中間」という名の通り、ここでの貯蔵は再処理工場へ運ばれるまでの一時的な保管であり、保管期間は最長50年、保管方式は乾式金属キャスク内に入れての空冷貯蔵である。

(※)「リサイクル燃料」「使用済み核燃料」という呼び名について混乱があるといけないので一言申し添えておく。使用済み核燃料を直接処分する場合は「ごみ」(高レベル放射性廃棄物のカテゴリ)となり、再処理をする場合は「資源」(リサイクル燃料)となる。よって再処理を前提としている日本においては、使用済み核燃料は「リサイクル燃料」扱いとなる。筆者が本稿で「リサイクル燃料」ではなく「使用済み核燃料」という表現を多用するのは、再処理をよしとしないスタンスの表れである。

 センターは、むつ科学技術館や関根浜港から直線距離で1kmちょっとの場所、海からは500mほどの場所に立地する。やや細い道に入ると程なく青と緑の「RFS」のロゴマークがついた建物が見えてきた。 門にたどり着き、車を降りて門の手前で早速写真を撮る。下の写真は青山貞一先生に撮っていただいた写真である。


写真1:リサイクル燃料備蓄センターの看板 青山貞一先生撮影

 すると門の奥のほうにいた警備員らしい人が近づいてきて、「アポイントはありますか?無いとだめなのです」といったようなことを言われ、早々に追い払われてしまった。はるばる来たのだから、もう少し写真を撮影したり、中にいる人(警備員か?)に質問してみたかったが、仕方がない。セキュリティ上必要な対応だろう。我々は純粋に研究目的で来ているわけだが、世の中には邪なねらいをもってこのセンターに近づく者もいるかもしれない。これも現場に行ってみなければわからない、視察ならではの良い経験だった。

 この施設に対しては、「安全なのか?」というシンプルな疑問があった。以下、使用済み核燃料の中間貯蔵における安全性について考察してみたい。

●原発の敷地外に、使用済み核燃料を搬出・貯蔵してもよいのか?

 この施設が安全かどうかの前に、まず疑問として、使用済み核燃料とはどこに置いても危険はないのだろうか?実は2000年6月に原子炉等規制法が一部改正されるまでは、使用済み核燃料は原発の敷地外に置いてはいけなかった。 この法改正がなされたわずか5か月後に、待っていましたとばかりにむつ市が積極的に
施設誘致に動き出す。この性急さからわかることは、使用済み核燃料の原発敷地外においての中間貯蔵の安全性が証明されたというよりは、使用済み核燃料の新たな置場を作らねば、という必要に迫られて法改正がなされたのだと言えよう。

 諸外国ではどうか。原発敷地外の使用済み核燃料の中間貯蔵施設はドイツ(ゴアレーベン他)や、スイス(ヴュレンリンゲン、2001年操業開始)などにもある。


図2:ゴアレーベン中間貯蔵施設、出典:RFS

 ゴアレーベンの中間貯蔵施設は1995年から使用済み核燃料の搬入を開始した。しかし、原発敷地外から使用済み核燃料を別の場所へ運ぶことが危険視され反対運動も起こり、1997年に搬入はストップしたのである。

 2002年4月には原子力法が改正され、2005年7月以降に行われる使用済み核燃料の再処理が禁止された。それと共に、原発立地点または近傍に中間貯蔵施設の建設が義務付けられ、再処理を目的とした使用済み核燃料を原発敷地外から搬出することは禁止された。これを受けてドイツ国内の原発敷地内では中間貯蔵施設が設置され、運用が始まっている。

 つまり、ドイツでは原発敷地外に集中貯蔵施設を設けるも、結局は原発敷地内で使用済み核燃料を貯蔵することにしたのだ。ゴアレーベンはドイツの北東部に位置し、そこから最も近いグローンデ原発からでも200km弱の距離がある。取り扱いが難しい危険物を長距離運ぶよりも、直近に貯蔵するほうが合理的である。

●使用済み核燃料の海上輸送について

 輸送に関しては、日本の場合、陸上輸送ではなく海上輸送である点も見逃してはならない。センターに運び込まれる使用済み核燃料は、近くの関根浜港に到着する。ちなみに関根浜港は原子力船むつのために築港され、日本原子力研究開発機構所有の港である。

 使用済み核燃料はキャスクという容器に入れて運ばれる。キャスクにはIAEAの規則によって安全性試験が課されているのだが、試しにリサイクル燃料備蓄センターの金属キャスクについてはどのような説明がなされているか、RFSのホームページを調べてみた。すると、落下試験については9mの高さからの落下、耐火試験については800℃で30分間とある。そして、耐水試験では、

「水深15m相当の水圧化に、8時間沈めます。水圧によってキャスクが壊れ、放射性物質が漏れ出さないことを確認します。更に200m相当の水圧化でも確認します。」

とある。ここには書いていないが、実は水深200mでは8時間ではなく1時間だけもてばよいことになっている。


図3:キャスクの機能と構造 出典:RFS

 この試験条件を見ればわかる通り、IAEAの規則はあくまで陸上輸送を前提としたものなのである。最近ではあの痛ましい韓国のセウォル号沈没のニュースがあったように、海洋事故はいつでもどこでも起こりうるのだ。

(つづく)