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全国でも稀有なニセコ・メソッド
原子力防災計画と
原発再稼働の背景とは(4)
ニセコ町原子力防災専門委員会傍聴の感想
齋藤真実
掲載月日:2014年2月25日
 独立系メディア E−wave Tokyo
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ニセコ町原子力防災専門委員会傍聴の感想


ニセコ駅前にて 左、斎藤真実、右、青山貞一 2014-2-19

 ここへきてやっと専門委員会を傍聴させて頂いた感想につながる。ニセコ町の取組の様子は随時チェックしていた。2013年12月に講義をお引受した東海大学観光学部では、前半は原発の仕組みと100%の安全はないこと、後半は防災計画の必要性、ニセコ町の先進的事例を紹介させて頂いた。

 その際には青山貞一委員から三次元流体の使用シミュレーション図の使用を快諾して頂いたおかげで、ニセコ・メソッドの素晴らしさを学生に伝えられたと思う。

 この間の白熱議論を経て、2014年2月19日は防災計画とりまとめの最終委員会とのことで、青山貞一委員に同行させて頂き、傍聴させて頂いた。

 確かに防災計画についての最終的な確認は行われたが、そのなかであらたな論点や、より明確に具体的にすべき点が次々と生まれてきたのである。これらは筆者もハッとするような論点であり、ぜひ会議録が出来上がったらご覧いただきたい。


ニセコ町原子力計画策定委員会  2014-2-19
撮影:斎藤真実

 防災計画のとりまとめは終わりなのではなく、「安全」をより具体化する次のスタート地点となるのだ――これが筆者が最も強く抱いた感想である。防災計画の作成だけで一件落着、と無意識に思っていたことを反省した。

 傍聴席には記者の方1名と、町民の方1名がいらっしゃった。町民の方に話を聞いてみると、第1回から傍聴を続けていらっしゃるという。防災計画が出来上がっても、それを町民の実際の安全な退避・避難行動に結びつけられるかがこれからの課題だ、ということをおっしゃっていた。

 まだまだこれからも防災計画は続いていく。今後のスケジュールとしては町民説明会を行うとともに専門委員会も延長される。「町民の安全」にこだわりぬいた、全国でも稀有なニセコ・メソッドである。今後の町民説明会及び専門委員会の傍聴には、より多くの町民の皆様が参加されることを願ってやまない。

 移動中、担当の職員の方が大学で環境倫理を研究されたというお話を伺った。大変熱心で優秀な職員の方であったので、なるほど、この情熱の源泉は環境倫理だったかと合点がいった。

 筆者が学生の頃環境倫理の書籍を読み漁っていたときに考えていたことは、正論がまかり通らない世の中でこそ、環境倫理が必要とされるということだ。誤解を恐れず言えば、普通の感覚では当然のことが環境倫理の根本であるので、教科書で学ぶようなことではない。たとえば「他者を尊重すること」。他者の中には他の生物や無生物も入ることがある。

 当然であるべきことが当然でない世の中、正論がまかり通らない、もしくは複数の正論が競合するいまこそ、環境倫理の出番なのかもしれない。よく考えると、ニセコ・メソッドには環境倫理に通じるものが感じらる。

 最後に、傍聴に際し、温かく迎えてくださった片山町長をはじめ副町長、ご担当の職員の方々には大変にお世話になりました、御礼申し上げます。そして、ニセコ町の状況を適宜お教え下さり、同行を快諾してくださった青山貞一先生にも心よりの感謝を申し上げます。ありがとうございました。

(終わり)

 ◆斎藤真実(Saito Mami) プロフィール

 立教大学物理学科卒
 東京農工大学大学院農学研究科卒
 環境総合研究所非常勤研究員
 環境行政改革フォーラム国際担当幹事
 千葉商科大学非常勤講師
 千葉県市川市生まれ、在住

 専門:原子力と環境哲学 
     エネルギー政策