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激しい火炎が住宅地を襲った サンディエゴ 山林火災の現地報告@ 青山貞一 武蔵工業大学環境情報学部 2007.11.27 転載禁 |
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<青山貞一:サンディエゴ山林火災の現地報告 アーカイブ> @:山林火災の爪痕 A:サンオノフレ原発との関係 B:サンディエゴの概要 C:火災の時間的経過 2007年11月22日から26日、ロサンゼルス経由でカリフォルニア州最南端のサンディエゴに入った。今回米国に行った目的は環境政策に関する現地調査であったが、それとは別に、2007年10月下旬にサンディエゴ郡で起こった想像を絶する巨大山林火災の現場を踏査した。それは第三者立場で前代未聞の山林火災と住宅地火災の原因究明及び大気汚染の健康影響を含めた総合的な研究の一助とすることでもあった。 ※青山は2007年11月27日夜に日本に帰国。 成田→ロスアンゼルス経由でサンディエゴに到着した当日の22日から、被害がもっとも大きかったと想定されるホッジ湖(Lake Hodges)の周辺地域を現地に住まわれている知人と現場踏査した。この場所は、サンディエゴ市北部、米国有数の超がつく高級住宅地である。 ◆Southern California on fire(1). (2) (3) (4) ところで、調べれば2003年にもサンディエゴでは大山林火災が起きている。しかし、今回の山林火災はカリフォルニア州において歴史上最大級と推察される火災といえるほど大規模なものであった。 ◆2003年のサンディエゴ大山林火災写真 10月22日から10月28日に渡る前代民の山林火災では、最終的に約90万人のサンディエゴ郡住民に避難勧告が出されている。 周知のように、90万人と言えば、日本の千葉市、さいたま市、仙台市など政令指定都市の全市民に相当する。しかも、15分前に緊急避難の命令が出された多くの世帯では、何と家財道具はおろか預金通帳などを取り出すのにやっと、というありさまであったという。まるで、かつてのイラク、サラエボ、コソボなど戦時の惨状、ありさまでそのものある。 参考1:サンディエゴ市の人口・面積・人口密度
参考2:サンディエゴ郡の人口・面積・人口密度
注釈:表は人口に2006年度カリフォルニア州概算及び地域並びに密度に2000年国勢調査を使用 カリフォルニア州におけるサンディエゴ郡の位置 図1 サンディエゴ山林火災の全体図 火災及び避難勧告地域は時々刻々変化したその途中の図。その後の地域は含まれず。 図中、赤い部分が火災が発生した地域。紫が避難勧告が出た地域。 住宅全焼などの被害が顕著だったのは、ホッジ湖周辺の図中、白○の地域。 現地調査もホッジ湖周辺を中心に実施した。 図2 ホッジ湖流域図。 図2は図1の白○の中心部を表示している。 図中みどりとなっている部分の多くは2007年10月の山林火災で焼失している。 地図中央東西に流れるのがホッジ湖。 Source:NASA, Googl Earth 図3 ホッジ湖南のランチョ・バーナード地区の住宅. 地図中上部がホッジ湖。 Source:NASA, Googl Earth 住宅被害は想像を絶するものがあるが、それでも人身被害が少なかったのは、「リバース911」という緊急逆通報用の携帯電話(メール)により、行政当局から市民への連絡通報ネットワークの存在により、大きなパニックとなることがなかったからだいう。 ※「リバース911」(Reverse 911)は市民が行政当局に携帯の番号やアドレスを 登録することで実現する緊急災害時の通信ネットワーク機能。通常の使用は 110番同様、市民が警察など行政当局に緊急通報する際に使う。 この「リバース911」は音声メッセージと耳の不自由な方向けにテキストメッセ ージ(TTY/TDD)の両方がある。FAQ(よくある質問)からはメッセージの言語 も選べるようになっていること、サンディエゴの場合、メキシコから流入した住民 が多く、スペイン語が重要な言語となっている。 以下は、現地住民でもある天田芳穂氏から青山への報告(2007.11.28)。 今回、「リバース911」は録音された音声で緊急避難するよう指示がありました。 強制避難を命じられた地域の家の全ての電話にかかってきます。携帯電話は、 予め、インターネットや電話で住所氏名と電話番号を登録しておくと、住所が強 制避難地域の場合に録音された音声で緊急避難するよう指示があります。 ロサンゼルス郡同様、もとも砂漠だった広大な地に300万人以上が住むサンディエゴ郡の山林火災は多くの爪痕をあちこちに遺している。私たちが現地調査に入る少し前までは、消火と被災者の救済に地元及び州、連邦の政府機関が全力をあげていた。 その結果、ごく最近になるまで被害の実態はまだしも、原因の究明は十分に行われたとは言えなかった。というのも、広大な被災地の全域が立ち入り禁止となっていたからである。 今回の現地調査では、住宅地火災の被害が大きかったサンディエゴ市のランチョバーナードなどホッジ湖周辺地域、サンディエゴ市の西隣のパウエイ市を中心とししつも、山林火災の発火の火元と想定されるウィッチ地区、さらに私が考える仮説、すなわち広域的な気象、地形的な影響を考察するため、サンディエゴ郡東部の砂漠地帯に至る地域を視察の対象した。 最終的に調査報告、学術研究論文を執筆するつもりでいるが、ここでは立ち入り禁止がとかれた最も被害が大きかったホッジス湖周辺に足を踏み入れ、撮影した写真の一部をもとに速報したい。 また現時点で性急な結論は差し控えたい。しかし、 原因は通常の山林火災、放火、火遊びではなく、もともと砂漠だった地域でもあり、近年の気候変動による地域全体の気温上昇、湿度の低下(現在でも10%前後)によるさらなる砂漠化や表土・植生・水象の変化、また東部から西部に向かって秒速30mの風にのって火炎が高速で走ったという情報もある。当然のこととして地形と温度による気象(風向、風速、大気安定度など)影響も大いに考えれる。 もし、気候変動によるさらなる砂漠化が一因であるとなると、ロスアンゼルス北部のマリブなど、米国西海岸の海沿い地域の住宅地域の火災リスクが高まる可能性もでてくるかも知れない。現に11月24日の朝、マリブの住宅地が火災となっている模様がライブでサンディエゴにも中継されていた。 なお、本現地調査は、現地住民である天田芳穂氏及びご家族の献身的かつ全面的な協力により実現している。ここに深く感謝の意を表したい。 サンディエゴ市ランチョバーナード北部、火災被害が最も大きかった地域。 大地が火炎放射器で焼き尽くされ焦土と化している。 撮影:天田芳穂氏(サンディエゴ・ランチョ・バーナード在住)、2007.11.18 サンディエゴ市ランチョバーナード北部、火災被害が最も大きかった地域。 まるで空襲で攻撃されたかのように焦土と化している。 撮影:青山貞一(Nikon Cool Pix S10)、2007.11.24 サンディエゴ市ランチョバーナード北部、火災被害が最も大きかった地域。 まるでピンポイント爆撃を受けたかのように焦土と化している。 撮影:青山貞一(Nikon Cool Pix S10)、2007.11.24 サンディエゴ市ランチョバーナード北部、火災被害が最も大きかった地域で 難を逃れた住宅。この地域は米国有数の超高級住宅。 撮影:青山貞一(Nikon Cool Pix S10)、2007.11.24 サンディエゴ市ランチョバーナード北部、火災被害が最も大きかった地域で 難を逃れた住宅。この地域は米国有数の超高級住宅。 撮影:青山貞一(Nikon Cool Pix S10)、2007.11.24 パウエイ市で火災被害が大きかった地域。火炎が谷を燃やし尽くした。 撮影:青山貞一(Nikon Cool Pix S10)、2007.11.24 以下は、現地調査、踏査時に撮影した筆者らのスナップ写真である。いずれも2007年11月24日に撮影したものである。撮影は一部を除き、いずれもサンディエゴ市ランチョバーナード在住の天田芳穂氏である。
つづく |