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サンディエゴ 山林火災のその後 〜サン・オノフレ地域〜 青山貞一 武蔵工業大学環境情報学部 2008.4.21 転載禁 |
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昨年(2007年)11月、米国カリフォルニア州サンディエゴ郡で起きた大規模山林火災の現地調査に出かけた。 このサンオノフレ地域には原子力発電所もあり、当時、山林火災の影響が心配された。現地調査報告は以下を参照して欲しい。 ■青山貞一:サンディエゴ山林火災@速報・巨大山林火災の爪痕 サンディエゴ郡の中部から北部、東部にかけ山林はもとより、住宅地も山林火災により大きな被害が受けた。そのうちのひとつ、サンディエゴ郡北部の太平洋岸にあるサン・オノフレ地域の現状について、知人の天田氏から今朝(2008年4月21日)連絡が来た。 昨日ロサンゼルスへ行った時、車内からサンオノフレの原子力発電所近郊の写真を撮りましたのでお送り致します。火災で焼けた地域はもうすっかり回復しており、改めて自然の回復力の凄さを感じました。天田 以下の2名の写真は、サン・オノフレ地域のものである。写真を見れば明らかなように、黒こげとなり丸焼けとなっていたサン・オノフレ地域の山林に植生がすっかり戻ってきた。おそらくサンディエゴの他の山林地域の植生も回復していると推察される。 植生が回復したサンディエゴ郡サン・オノフレ地域 天田芳穂氏が現地で2008年4月19日に撮影 植生が回復したサンディエゴ郡サン・オノフレ地域 天田芳穂氏が現地で2008年4月19日に撮影 以下は、昨年現地調査帰国時の報告! <青山貞一:サンディエゴ山林火災の現地報告 アーカイブ> @:山林火災の爪痕 A:サンオノフレ原発との関係 B:サンディエゴの概要 C:火災の時間的経過 2007年11月22日、大韓航空KE001便で成田からロサンゼルスに入り、向かいに来られた知人(サンディエゴ市在住の天田芳穂氏)とその足でサンディエゴ(San Diego)に向かった。 サンディエゴへ行ったひとつの目的は、10月20日から始まり27日頃まで燃えさかった前代未聞の山林火災の爪痕を現地踏査することであった。 ロサンゼルス郡からオレンジ郡に入り、さらにサンディエゴ郡に入った。サンディエゴ郡に入ってすぐのところに、2つの半球型をした軽水炉型の原子力発電所があった。 天田芳穂氏に伺うと、一基100万キロワット、2期で200万キロワットの能力を持つ南カリフォルニア・エディソン社の古い原発である。この原発はサン・オノフレ(San Onofre)原発といい軽水炉型原発の出力はそのまま送電線を通してサンディエゴ郡に電力を供給されているという。 州際道路5号線(Inter-State Freeway No.5)から原発に近づくため州道1号線に移る。現地に行って分ったのだが、州道1号線はこのサン・オノフレ原発のところで終わっていて、そこから先は海岸線沿いにあるキャンプ場に行く乗用車やキャンピングカーしかゲートがあり入れなくなっている。監視人の指導で戻る。 ところでオレンジ郡からサンディエゴ郡に入るとわかるのだが、以下の写真にあるように、海岸線と平行してそれほど高くない山が連なっている。 地図1 サンオノフレと海兵隊Camp Prendleton、さらに州際道路5号線との位置関係 山の南側には海兵隊の巨大な訓練場(Camp Prendleton Marine Corps Bases)があり、海から各種の陸海両用装甲車などを陸揚げしたり、逆に山側にある訓練場にある装甲車を太平洋側の海にある船に上げている。 今回のサンディエゴの山林火災は前代未聞の規模であったが、オレンジ郡からサンディエゴ郡に入った直後の山林でも10月24日に山林火災が起きている。 事実、それほど高くないがサンディエゴ南部に連なる山を見ると(写真1)、真っ黒になっている。3月に池田さんとモンテネグロにでかけたが、モンテネグロはイタリア語で「黒い山」を意味する。まさにモンテネグロの再現である。天田さんによると、この山火事もかなり激しく燃えさかり、ピーク時には100mほどの幅員がある州際道路5号線が通行止めとなったとのことだ。 写真1 オレンジ郡からサンディエゴ郡に入ってすぐにある山。この山一体が海兵隊基地 今回の山林火災で山は「真っ黒」になっていた。 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10 2007.11.22 以下は、その山の一番北側、すなわちオレンジ郡側を撮影した写真である。見てわかるように山の裾野は何とサン・オノフレ原発に近接している。距離にして数100mである。 写真2 山林火災現場とサン・オノフレ原発の位置関係 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10 2007.11.22 州際道路5号線はカリフォルニア州を南北に走る幹線中の幹線であるから、長引けば物資輸送にも影響が出る。この道路が閉鎖されたのは比較的短期間であったらしいが、その道路を隔てた海側に上記のサン・オノフレ原発がある。 両者の距離は一番近いところ数100mであり、また原発施設から州際道路をまたいで送電線が山側に供給され、山林火災があった山の上に高い送電鉄塔が南に向けてのびている。 衛星画像1 グーグルアースで見たサン・オノフレ原発と海岸線、州1号線、州際道路5号線、 アムトラック鉄道軌道、火災があった山の裾野相互の位置関係
サン・オノフレ原発近くで起きた山林火災だが、カリフォルニア州及びサンディエゴ郡の行政当局によるサンディエゴ山林火災の地理情報システム(GIS)情報によると、同地の山林火災は10月23日時点では発生していないが、10月24日に一気に発火し、その後、26日まで続いたことが分る。 以下はその経過を示す地理情報システム(GIS)による山林火災情報である。下に示した凡例では、赤色が「火災地域」、濃い紫色が「強制的に退去しなければならない地域」を示している。 2007年10月23日時点 2007年10月24日時点 海兵隊基地がある山林火災写真(10月23日火曜夜に撮影) The Camp Pendleton Fire raged on Tuesday evening. 出典:現地関係者 2007年10月25日時点 2007年10月26日時点 2007年10月27日時点 凡例 ここで考えることとして、もし、サンディエゴ郡における前代未聞の山林火災が続けば、風向き次第で原発を火焔がおそうことも十分ありうる距離であることだ。 結果的に山林火災の火焔や火の粉が原発に到達することはなく、11月22日現地を視察した際、原発は稼働していたようだが、私からしてみれば何ともリスク管理上大きな課題が見て取れる。 おそらく近くにある海兵隊のヘリなどが総動員され山林火災を早めに鎮火させたに違いない。しかし、両者の位置関係を思うとぞっとする。 結局、今回は事なきを得たようだが、山林火災の原発立地への影響はあらかじめ考慮されていたとは思えない。万一、山林火災の激しい火焔が原発を直撃した場合、上昇する温度で原発の設備や機能がどうなったのか、想像するに難くない。
現にこのサン・オノフレ原発は、過去に電流遮断機の故障により電気系統の火災が発生し、電力供給が緊急停止した事故が起き一号機は操業停止となっている。 当該地域では道路を通過する自動車以外は、住宅地はなく原発関係者と海兵隊関係者しかいないこともあり、ほとんど関係情報が公表されることがなかったようだ。 天田さんに伺うと、この件はほとんど現地サンディエゴや米国内でも報道されたなかったそうだが、よく調べてみると以下の記事などいくつかの記事があった。以下は地元のテレビ局の報道である。山林火災はサン・オノフレ原発からサンディエゴ市内に向かう送電線の近くにまで燃え広がっていると報道されている。 日本では残念ながらサン・オノフレ原発に関連するサンディエゴ山林火災記事は皆無である! つづく
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