鷹取 敦 |
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広島県福山市の鞆の浦港に計画されている埋め立て架橋問題について、これまで独立系メディアで繰り返し取り上げてきた。 ■鞆の浦埋め立て架橋計画の必要性に疑問(2007/12)この計画は自民党政権時代から金子国土交通大臣が反対の意向を明確に示していたが、昨年10月の広島地裁の免許差し止めの判決を受けて、2009年11月に当選したばかりの湯崎英彦広島県知事も、事業の見直しに向けて大きく舵を切った。 湯崎知事(44歳)は元通産相官僚ではあるが、2000年にはインターネットADSLプロバイダの草分けの1つであるアッカ・ネットワークスの創業に加わった官僚出身者の知事としては少し変わった経歴を持っている。 知事は就任会見で「橋を架ける架けないの前提を一度置いて、地域のために何をするのがベストか、早急に議論を進めたい」(朝日新聞12月1日)と話しており、その後、成、反対両派の住民が参加する対話集会を提案し「地元にしこりを残したくない。対話集会である程度の結果が出るまで事業を進めるわけにはいかない」(中国新聞12月22日)と住民の納得を得られる結論が出るまでは事業を推進しない方針を明らかにした。 埋め立て架橋事業は広島県と福山市の事業だが、県知事と会談した福山市長は、あくまでも事業推進の立場をくずしていない。 1月11日に広島県知事は現場を視察して推進、反対双方の住民と対話し、住民は双方とも対話集会に前向きな姿勢を見せ、知事の指導力に期待を見せた。(読売新聞1月12日、下記に引用) 知事は裁判については控訴しているものの、埋め立て免許の交付については対話集会での結論が出るまで保留するとしている。 本コラムでも指摘してきたように、本事業の必要性は「交通渋滞」解消の観点からの必要性には極めて乏しい。せいぜい数分の時間を短縮出来る程度だからである。他に事業の理由とされている下水道工事のための迂回路としてはあまりにもコストが高すぎるし他に技術的な解決策はあるという。埋め立て架橋を作れば観光になるとか若い人が戻ってくるなどという理由はどれだけの人が信じているだろうか。 したがって本来不要、もしくは多額の税金を投入に見合わない事業であり即座に中止の判断をしても政策的には問題ないと思われるが、一旦、始まった公共事業を止めることが容易ではないのは八ッ場ダムの前原国交大臣の対応に対する地元の反発をみれば明らかであろう。 事業を始める時に地元の真の要望をくみ取るための民主的な手続きが不十分だったのは問題であるが、止める際にも同様に丁寧な合意形成のプロセスが必要とされている、ということである。鞆の浦の場合には立ち退きなどの問題が発生しているわけではないので、せいぜい工事受注への期待への対応というところだろうか。 この問題については、2月6日(土)、2月7日(日)に東京都市大学・横浜キャンパスを会場の開催される「環境行政改革フォーラム研究発表大会」で、地元から報告もあるので、関心のある方は是非ご参加いただきたい。 ■環境行政改革フォーラム http://www.eforum.jp/ ■環境行政改革フォーラム研究発表大会 http://www.eforum.jp/2009soukai1.html
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