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辺野古アセスを徹底検証!

②沖縄県浦添市でシンポ開催

青山貞一 7 June 2009

独立系メディア「今日のコラム」

辺野古アセスを徹底検証
 ①代替施設移設予定地の概要

 ②沖縄県浦添市でシンポ開催
 ③差し止め請求を問題提起

辺野古アセス徹底検討、パネル討議当

 当日の2009年5月30日は午後2時10分に主催者挨拶などに続き、青山貞一(東京都市大学)が約1時間にわたり基調講演を行い日米の環境アセス制度、関連手続の概要と主に日本の環境アセス制度の本質的欠陥、課題について述べた後、本件の方法書、環境影響評価準備書について具体的に問題点を指摘した。

 環境影響評価の準備書は要約だけで20本、本札は198本のURLとなっている。本報告書は5000頁を超え、厚さは40cm以上ある。

 ※普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価準備書(要約書)(PDF)
 ※環境影響評価準備書本文(PDF198本)




 具体的には「辺野古アセスの徹底検証を!」と題し、まず日米の環境アセスの制度と実態の相違を以下の12項目について仔細に解説した。

 ①アセスの適用時期、②他の諸計画との整合性、③アセスの適用の方法、④アセスの対象行為、⑤複数行為による累積的・複合的影響、⑥代替案の分析、⑦評価のあり方、方法、⑧審査主体、⑨住民との合意形成、コミュニケーション、⑩住民、NPOへの専門的サポート、⑪アセス業者の選定、⑫行政訴訟の可能性。

 日本アセス法やアセス条例では、とくに

①アセスの適用時期が遅く、計画がほぼ固まった整備計画の段階で適用されるため問題があっても実質的に後戻りできない。米国の国家環境政策法(NEPA)によるアセスでは、より早期段階(earlier stage)に適用すべきとされている。

②アセスの対象が個別事業に限定されているため、ひとつひとつは比較的小さな影響であっても、まとまると累積的な影響をもたらす複合事業が対象とならない。米国のNEPAでは個別事業だけでなく、複合事業、土地利用、総合計画、広域計画なども対象となる。

③環境面から見た代替案の比較評価ができず、事業を実施しないという代替案が含まれないため、事業実施を対象にアセスを行っている。米国のNEPAでは代替案の存在が大前提となっているため、代替案毎の相対評価、訂正評価が重要なものとなっている。

④代替案分析がないため、調査、予測結果の評価がどうしても絶対評価、定量評価に限られ、その結果、いわゆるアワセメントが横行している。米国のNEPAでは、代替案の存在とそれに対応した環境分析、相対評価が義務づけられている。また代替案にはNo Action、すなわち事業を行い場合も含まれている。

⑤審査が法的責任がない学識経験者に丸投げされており、しかもそれらの学識経験者を沖縄県が選定している。米国のNEPAなどでは、日本で言う審査会はない。日本では、そもそも有識者などの委員には何ら法的権限、責任もなく、行政の隠れ蓑となっている。NEPAでは、大気汚染、水質汚濁などの環境負荷、有害物質、廃棄物などについては環境保護庁(EPA)の付置研究所が、自然環境系については内務省系の付置研修所がEISの審査に当たっている。

⑥米国のように行政手続法としてのアセスで不備があっても行政訴訟が提起しづらい。米国のNEPAでは、このアセスメント実施に関連する各種の司法審査がアセスス制度を機能させる上で極めて重要な役割を担っている。他方、日本では、従来、原告的確性や処分性の観点からアセス手続に関連して行政訴訟を起こすことは困難であった

など多くの具体的課題があることをを指摘した。

 次に那覇防衛施設局が出した5000頁を超すアセス準備書(目次だけで20頁ある。アセス業者は、いであ。この会社は新日本気象海洋→国土環境→いであと会社名を頻繁に変えている)の内容もさることながら、当初、事業者が「方法書」を出した後、何と150頁にもわたり大幅に事業内容を追加、修正したにもかかわらず、これを「軽微な変更」として方法書に戻りアセスをやり直さない事実を13項目にわたり検証し、批判した。以下のパワーポイントはその一部。これら13項目の指摘は桜井沖縄大学学長が提出した意見書に沿って行った。小さな字の部分は桜井国俊学長が出した意見書の一部。










 

熱心にメモをとりながら聞き入る150名に及ぶ参加者

 それに引き続き沖縄大学の桜井国俊学長が今後はじまる沖縄県環境影響評価条例にもとづき設置される環境影響評価審査会の委員に環境アセス制度の専門家がいないことなどを指摘した。桜井学長によれば、沖縄県が日本の返還されてこの方、沖縄県では基地が日本に返還されることはあっても、基地が新設されることはなかったことを力説した。


問題点を指摘し、審査会に環境法制度の専門家を
入れる必要性を指摘する沖縄大学の桜井学長

 さらに桜井学長は、本来、事業者と住民との間でのコミュニケーション、合意形成の手続きあるはずの環境影響評価の準備書が5000頁を超え、閲覧すらままならず、ホームページにPDFがリンクされてもURLが198本にも及ぶなど、およそ読む側の立場を理解しないものとなっていると述べた。


5000頁を超えるアセス準備書

 次に報告に立ったのは世界野生生物基金(WWF)の花輪伸一さん。

 花輪氏は下のパワーポイントにあるように、もとより宜野湾市にある普天間基地を県内に移設することについて県民の68%が反対していること、また環境アセスメントにおいて環境への影響は軽微であるという記述には80%が納得できないと認識してていると述べた。

普天間代替施設の県内移設に関する世論調査結果


報告する花輪氏(WWF)


 さらに東京から沖縄県の基地問題、環境問題を支援するために沖縄県に移り住んだという辺野古弁護団事務局長の弁護士、金高望さんが関連する訴訟の経過と今後の展望について報告された。


報告する金高氏(弁護士、辺野古弁護団事務局長)

 さらに当該環境アセスメントにおける大きな争点となっているジュゴン保護の観点から今回の環境アセスの関連調査との関連で、ジュゴンNPO、ジュゴンキャンペーンの吉川英樹さんがジュゴンの生息状況、発見地点などの調査内容を報告した。


 吉川さんのジュゴン報告


③差し止め請求を問題提起へつづく