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環境総合研究所 
自主調査研究 30年間の軌跡


ゴミ弁連(100人の環境弁護士)との連携
Collaboration with Gomibenren (100 environmental lawyers)
概要、論考、論文、報告、記事、文献

掲載月日:2017年6月10日
独立系メディア E−wave Tokyo
無断転載禁

<概要>

 環境総合研究所は、1998年以降、全国各地で高まる廃棄物焼却炉、廃棄物最終処分場の立地を巡る地域紛争に、環境アドボカシーの立場で関与する活動を積極的に展開しました。

 日本は世界一ゴミ(廃棄物)を焼却し、埋め立てている国です。ゴミを燃やせば、必ず有害化学物質が大気、水、土壌、底質などの環境に排出されます。このようやゴミ焼却主義は、一般廃棄物焼却施設につしては、国から地方自治体への巨額な補助金により推進され、産業廃棄物は産廃業者による施設の設置許可を自治体が下すことにより全国津々浦々で建設され稼働しています。また焼却後の焼却灰は最終処分場に処分されます。

 これら一般廃棄物、産業廃棄物の焼却炉建設、処分場の建設では、大部分の場合、事業者と利地域周辺の住民の間での地域紛争となります。廃棄物処理法に生活環境影響調査、また条例による環境影響評価手続きがありますが、これらの手続は多くの場合、紛争解決にはいわば有名無実となることが多くなっています。

 地域紛争は、両者の話し合いにより和解となることも稀にあります。しかし、圧倒的多くの場合、民事、行政をとわず訴訟に発展します。訴訟の類型も建設近畿などの差し止めから損害賠償まで多様です。


2002年11月24日、福島県いわき市で開催されたゴミ弁連シンポジウム
「ゴミと地方自治」」のパネル討議風景。左から司会の広田次男弁護士、
田中康夫知事(当時)、梶山正三弁護士(会長)、青山貞一環境総研所長

 ゴミ弁連の会長、梶山正三氏は、もともと東京都公害研究所で環境研究をされてきた研究者です。その梶山氏は後に自学により司法試験に合格し弁護士登録をされています。もともと環境科学分野の理学博士であり、それに加え弁護士として全国各地のf紛争に関わっています。 

 その梶山氏はじめゴミ弁連の事務局長、坂本博之弁護士らも、NPO環境行政改革フォーラムの司法担当幹事を併任しており、EFORUMにおいても日常的に市民団体などからの相談に応じています。

 環境総合研究所は、上記の100人の環境弁護士で組織された通称ゴミ弁連と2002年以来連携をもち、訴訟となった事件はもとより、訴訟にならない問題でも、各種の環境、廃棄物、有害物質、2011年以降は放射性物質などに関わる調査分析、評価、予測、事後調査を実施し、鑑定、証拠、意見書などとして提出するとともに、訴訟に証人として出廷してきました。

 さらにゴミ弁連では、ごみの脱焼却、脱埋立をめざす政策研究も行っており、この間、先進国でいち早く脱焼却、脱埋立を実現したカナダ東部のノバスコシア州、ハリファックス市への現地視察を2003年2月に青山貞一、池田こみち、広田次男(ゴミ弁連副会長)の3人で敢行するとともに、その後、青山、池田はゴミ弁連の15人の弁護士をノバスコシア州、ハリファックス市の現場にお連れし、視察とともに現地の人々との交流を行っています。

 さらにその後、ノバスコシア州、ハリファックス市における州全体の脱焼却、脱埋立を考案し実現した2名を日本にお呼びし北海道、福島、長野、東京から九州まで講演会を環境行政改革フォーラムと共催で行っています。これらに政策研究、現地視察、全国縦断講演会についても環境総合研究所は、積極的に関与、協力してきました。

 以下は、ゴミ弁連の公式ホームページです。

 ゴミ弁連の公式ホームページ
 http://gomibenren.jp/


出典:ゴミ弁連公式Web

 以下は現在の役員一覧です。

ゴミ弁連役員 2017.6現在
会 長 梶山 正三(弁護士、理学博士、山梨)
副会長 広田 次男(弁護士、福島)
池田 直樹(弁護士、大阪)
事務局長 坂本 博之(弁護士、茨城)
幹 事 村田 正人(弁護士、三重)
幹 事 高橋 謙一(弁護士、福岡)
幹 事 長倉 智弘(弁護士、山梨)
顧 問 青山 貞一(東京都市大学名誉教授)
出典:ゴミ弁連公式Web

 環境総合研究所は、調査として廃棄物、土壌、底質、水、排水、進出水、大気(松葉)などに含まれる各種有害化学物質、汚染物質の濃度分析、また焼却施設から大気中に移流、拡散する有害化学物質の予測、地域の地形を考慮した3次元流体シミュレーション、さらに最終処分施設から飛散する有害化学物質の地形を考慮した3次元流体シミュレーション、またリスク評価などを実費で行ってきました。

 すでに、北海道、東北、関東(東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木など)、中部、北陸、近畿、四国・中国、九州、沖縄等全国各地において上記の各種調査を行い、証拠を裁判所や公害調停などに提供しています。また全国各地の裁判所に証人として出廷し証言しております。


執筆担当:青山貞一


<関連する論文・論考・動画>
タイトル 主担当 掲載媒体
田中康夫長野県知事を迎え「ゴミと地方自治シンポジウム」 主催ゴミ弁連 2002 ゴミ弁連 ゴミ弁連公式Web
焼却炉入札談合、次々に高額返還判決 2006 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
全国初、管理型最終処分場設置許可の取り消し〜問われる産廃処理処分〜 2007 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
読谷村産廃処分場問題 シンポジウム 2009 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
ゴミ弁連福島県二本松 シンポジウム+総会 2009 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
ゴミ弁連シンポジウム in 夕張市 (1)夕張を知る 2010 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
ゴミ弁連シンポジウム in 夕張市 (2)夕張を知る(夕張炭鉱) 2010 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
ゴミ弁連シンポジウム in 夕張市(3)夕張を知る(財政破綻) 2010 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
ゴミ弁連シンポジウム in 夕張市 (4)産廃処分場問題 2010 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
ゴミ弁連シンポジウム in 夕張市 (5)産廃処分場問題シンポ 2010 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
ゴミ弁連シンポジウム in 夕張市(6)夕張現地視察 2010 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
福島県川俣町山木屋の産廃問題シンポ参加記 2010 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
東北地方の産廃問題から見える「政官業」利権の構造 2010 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
山形・上山事務組合による巨大ガス化溶融炉計画勉強会 2010 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
義務づけ行政訴訟で福岡県逆転敗訴(福岡高裁)〜飯塚市の産廃訴訟〜 2011 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
福島県被災地首長及び住民との徹底議論 2011 青山、池田、鷹取 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
福島原発と放射性物質汚染 東海村シンポ講演 2012 青山貞一 YouTube
上山市民団体がガス化溶融炉建設見直しを求め講演会開催 2013 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
南相馬産廃処理設置許可取消訴訟仙台高裁控訴審も勝訴 2013 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
妥当性・正当性なき川越市新斎場建設問題解決への提言@ 2013 青山、池田、鷹取 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
妥当性・正当性なき川越市新斎場建設問題解決への提言A 2013 青山、池田、鷹取 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
妥当性・正当性なき川越市新斎場建設問題解決への提言B 2013 青山、池田、鷹取 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
800人集まった筑紫野・産廃焼却炉問題講演会その1 2013 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
00人集まった筑紫野・産廃焼却炉問題講演会その2 2013 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
福島県田村市の除染廃棄物不法投棄事件の今後について 2014 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
岡山市北区の火葬場問題 @高齢化社会と火葬場建設 2014 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
岡山市北区の火葬場建設問題 A火葬と有害化学物質発生 2014 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
岡山市北区の火葬場建設問題 B産廃処分場跡地に火葬場建設 2014 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
岡山市北区の火葬場建設問題 C処分場跡周辺の汚染状況 2014 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
岡山市北区の火葬場建設問題 D処分場跡地に石綿埋設の事実  2014 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
岡山市北区の火葬場建設問題 E異常な処分場跡地買収価格 2014 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
岡山市北区の火葬場建設問題 F不透明で正当性なき立地選定 2014 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
岡山市北区の火葬場建設問題 G産廃業者の許可取消処分 2014 青山貞一 独立系メディア E-Wave Tokkyo Web
2014年度ゴミ弁連 徳島県美馬市総会 参加記 2014 池田こみち ゴミ弁連公式Web

◆関連新聞・雑誌記事


徳島新聞 2914-7-14 


◆山形・新ごみ焼却場:反対派がごみ問題勉強会
 毎日新聞
 2010.2.29

 上山市柏木地区のごみ焼却場建設計画に反対する山形、上山両市の住民3団体が28日、ごみ処理問題に詳しい弁護士や大学教授を招いた学習会を山形市内で開いた。焼却場建設の差し止めを求めた訴訟で勝利した例や、焼却に頼らない欧米諸国のごみ処理方法などが報告された。

 福島県の広田次男弁護士は、郡山市三穂田町の焼却場建設差し止め訴訟で、市民33万人中22万人分の反対署名を集め、「建設取りやめ」の和解を勝ち取った例を説明。「ごみ問題では地域における民主主義が問われている」と呼びかけた。

 ごみ処理問題に詳しい東京都市大環境情報学部の青山貞一教授(環境科学)は「日本の年間ごみ焼却量は、人口が3倍弱の米国を上回る。たい肥化や資源化により脱焼却を進めるべきだ」と持論を紹介した。

 「柏木新清掃工場の再考を求める会」(上山市)の川口俊雄代表は「住民がごみ処理について正しい知識を共有することが大切」と学習会の狙いを話した。

【細田元彰】




西日本新聞 2013-5-12朝刊


◆シンポジウム:産廃処分場反対 各地の住民団体など報告
  〜二本松 /福島〜


 産廃処分場問題に関するシンポジウム「これからのゴミ問題を考える」が26日、二本松市の男女県共生センターで開かれ、約350人が出席した。

 同市と本宮市にまたがって建設計画中の産廃処分場に反対している住民団体「水を守る住民の会」が主催。

 同会事務局の渡辺浩行さんが「計画場所の周りには井戸水があり、有害物質が流れ出ると住民に被害が出かねない」と訴えた。シンポには同じく産廃問題を抱える南相馬市や小野町などの住民団体の代表も参加し、それぞれの現状などについて報告した。

 全国の産廃処分場建設反対運動の弁護活動に取り組む「闘う住民とともにゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡会」副会長の広田次男弁護士(63)=いわき市平=が講演。「完成してしまった処分場をひっくり返すのは難しい。

 早期に反対運動をするのが大切。多くの世論と専門家の見解をうまくかみ合わせて環境を守っていくことが必要」と呼びかけた。【蓬田正志】

毎日新聞 2009.4.27福島県版朝刊


◆産業廃棄物:安定型最終処分場で処分外木くず23トン 読谷村

 読谷村の産業廃棄物安定型最終処分場で環境省の基準を超える木くずが検出された問題で、県の改善命令を受けて改善措置履行中の処分場から、4月から6月までに掘り出された木くずが約23トンになることが3日、分かった。処分場を運営する民間業者による県や村への報告で明らかになった。

 業者の営業継続に反対している地元読谷村都屋の阿波根直則区長は「こんなに多いのは、不法投棄ではないか」と指摘し、訴訟を提起する方針を示した。

 県などによると、安定型処分場は通常、金属やプラスチック、がれきなど性質が変化しない廃棄物を埋め立てる処分場で、木くずは当該品目ではない。 木くずが検出された場所から高濃度のメタンガスが発生していたことから、運営業者は今年2月、県から廃棄物処理法に基づく改善命令を受けていた。9月25日を期限に、埋め立てた廃棄物を掘り起こして木くずの除去作業を進めている。

 3日に開かれた県議会の文教厚生委員会(赤嶺昇委員長)で県環境整備課の下地岳芳課長は業者が同処分場内の廃棄物7086トンのうち1656トンを掘り返し、23トンが木くずだったとする報告を明らかにした。

琉球新報 2009-7-4


◆県の更新許可批判 読谷村で産廃シンポ

 産業廃棄物安定型最終処分場問題をめぐり開かれたシンポジウム=読谷村文化センター

 【読谷】読谷村の産業廃棄物安定型最終処分場問題で、環境省の基準を超える多量の木くずが検出されたものの県が運営業者に更新を許可したことを受け、産廃建設反対実行委員会は5日、村文化センターでシンポジウムを開いた。

 シンポジウムには青山貞一東京都市大学教授、たたかう住民とともにゴミ問題の解決をめざす100人の弁護士の連絡会(ゴミ弁連)事務局長の坂本博之弁護士、池田こみち環境総合研究所副所長の3人が登壇した。

 青山氏は1970年に制定された廃棄物処理法について言及。「同法はザル法で産廃処分場は全国で周辺住民に生活・健康に大きな被害を与えている」と指摘した。さらに、「読谷村の住民があれだけ被害を受ける中、更新許可を下す県はとんでもない」と県の姿勢を痛烈に批判した。

 坂本氏は同業者が計画する管理型の産廃について「安定型産廃より地下水の汚染や住民の健康被害の可能性が高く、村は業者と県に対して損害賠償請求すべき」と話した。ただ、「裁判は非常に多くの時間を費やす。住民にはきれいな読谷を守る決意で臨んでほしい」と呼び掛けた。

 池田氏は「産廃は地下水汚染のほか粉じんや騒音など周辺住民への影響が大きい。読谷村は海が近いため海洋汚染も懸念される」と述べ、県の業者に対する指導強化の必要性を訴えた。

琉球新報 2009年7月14日 09:49


◆弁護士・専門家ら招き住民集会 
 安定型処分場危険性学ぶ 古見方地区対策協


 奄美市名瀬崎原の田雲川上流の山林で、民間業者が産業廃棄物の安定型埋め立て処分場の建設を計画し、同町内会の住民らが強く反対している問題で、古見方地区産業廃棄物対策協議会(会長・瀧田龍也崎原町内会長)は18日、「産廃処分場建設阻止住民集会」を同市名瀬の大川小中学校体育館で開いた。同地区を中心に約250人が参加し、産廃処分場建設の阻止へ気勢をあげたほか、専門家による講演を通して「安定型処分場の危険性」について理解を深めた。

 今年10月に同問題が浮上して以降では、11月6日に続き今回が2度目の集会。市内住民のほか奄美市議や、住民運動をサポートする弁護団として福岡県から高橋謙一弁護士、市橋康之弁護士も参加した。

 瀧田会長は「約1カ月で署名も初期目標を上回る5千筆が集まった。年明けにも県に提出したい。私たちの活動が多くの人の理解を得て、『処分場をつくらせてはいけない』との機運が広がりつつある」と主張。「一人でも多く仲間を増やし、今後も反対運動の機運を絶やさないでほしい。長い闘いになるがご支援ご協力を」と訴えた。

 集会に出席した住民3人がマイクを握り、仮に島外から災害ゴミ等が処分場に持ち込まれた場合の危険性や、古見方地区をはじめとした奄美大島の自然の豊かさなどについて訴えた。その後、同市の田中孝次郎さんが「奄美の自然遺産の動きに逆行する産廃処分場建設。一個人の利益のためにこれは許されることではない。今ある自然は先人が残してくれたかけがえのない財産で、これを次の世代に残すことは今を生きる私たちの使命。産廃処分場(建設)に断固として反対する」などと産廃阻止の声明文を力強く読み上げた。

 講演では元千葉工業大学教授で、産廃処分場等の問題に詳しい八尋信英氏が「安定型処分場の危険性」をテーマに講話。有害物質の発生や、違反物の搬入など福岡をはじめ、各地の産廃処分場で起こった問題などについて具体的な事例をもとに説明した。八尋氏は「反対するには反対するだけの根拠をつきつけないといけない。処分場の問題や、自然環境に対する認識についても学んでいってほしい」と呼びかけた。

 高橋、市橋両弁護士は「いったん破壊されると(自然は)もう戻らない。とにかく始めさせないこと」「業者も残念ながら行政も、(産廃処分場を)つくるためには何でもしてくる。大事なことはあきらめないこと」などと述べた。また来年2月に全国でゴミ問題・環境問題等に取り組む弁護士らでつくる「たたかう住民とともにゴミ問題の解決を目指す弁護士の連絡会(ゴミ弁連)」の緊急集会を、奄美市で開催すると明かした。

 同産廃処分場建設計画は、1999年に鹿児島県が且O宝開発(指宿健一郎社長)に対し出した廃棄物処理法に基づく施設設置許可等に基づき、行おうとしているもの。計画によれば埋立地面積は4万2650平方b、埋立容量は39万7140立方b。瀧田会長によると業者側から10月下旬に、「11月7日に工事に入る」と同町内会へ連絡があり、その後すぐに『延期』を伝えられて以降、連絡はないという。

奄美新聞 2016-12-19


福島県南相馬市の産廃処分場めぐり――設置許可を取り消さない県
 (週刊金曜日) 

 福島第一原発から二〇キロに位置する福島県南相馬市大甕に建設予定の産業廃棄物最終処分場をめぐり、県(佐藤雄平知事)に設置許可取消し命令を出した昨年四月の一審判決(福島地裁・潮見直之裁判長)を不服とし、産廃業者が提起した控訴審の判決が一月二四日に出される。

 県(当時・佐藤栄佐久知事)が一九九八年に設置許可した「原町共栄クリーン」の最終処分場をめぐっては、周辺住民らが建設差し止めなどを求め一〇件以上の訴訟を提起。最高裁で係属中の訴訟もある。処分場は建設がストップし稼働していない。

住民側が勝訴した一審では共栄クリーンの元訴訟代理人弁護士の所得税法違反事件や経理的基盤の脆弱さなど問題企業ぶりが明るみに。過去の裁判では暴力団の関与も指摘されている。

 処分場反対運動には同市の櫻井勝延市長も参加。叔父の櫻井文雄さん(七一歳)は「許可取消しを聞いた時、嬉しくて涙が出た。裁判中に多くの産廃反対の住民らが高齢そして津波で死んだ。悔しかったな」と涙ぐむ。県は一審判決を受け入れて控訴を見送ったが、県側の補助参加人だった共栄クリーンが控訴。

 その後、控訴人という立場になった県が共栄クリーンの行なった控訴を取り下げた。昨年一二月六日に第一回弁論が仙台高裁で開かれ、県の控訴取り下げの有効性が争点に。「二四日の判決で、県の控訴取り下げが有効だったら裁判は終了。しかし無効だったら結果によっては業者と住民側の闘いになるだろう」と住民側の坂本博之弁護士は話す。

 一方、県は控訴を断念しながらもまだ設置許可を取り消していない。同県産廃課の山田耕一郎課長は「取消し判決と言ってもまだ一審の状態。裁判の推移を見守りたい」と話す。これに対して坂本弁護士は「県は取り消そうと思ったら取り消すことができる。

 県の本心は、あの産廃施設の場所がほしいのだ」と指摘する。福島県内の放射性廃棄物が手付かず状態の中、二〇キロ圏の同産廃施設は県にとっておあつらえ向きの立地だ。設置許可から一五年。長引く裁判に「われわれにまだ重荷を背負わせたいのか」と、原告の鈴木烝さん(七三歳)や反対運動の会長・大留隆雄さん(七五歳)らは県の姿勢に憤慨している。

(瀬川牧子・ジャーナリスト)
  週刊金曜日 2013年2月1日(金)17時42分配信


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