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夕張市は他人事ではない
自治体財政ワースト・ランキング
C経常収支比率(2年間分比較)


青山貞一 
武蔵工業大学環境情報学部
掲載日:2007年1月3日
転載禁


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 ここでは、2005年度の経常収支比率と最新の2006年度の経常収支比率の比較を行う。都道府県平均は05,06年度ともに92.6%で変わらず、政令指定都市は1%改善、市町村は0.1%悪化しており、全体として改善の兆しは見えない。

 いずれにしても、財政構造の弾力性に関し、経常収支比率である程度妥当といえる75%〜80%には都道府県(平均で92.6%)、政令指定都市(06が93.3%)、全市町村(06年度が90.3%)とほど遠い状態にある。

 ※本論は筆者が大学の学部で行っている講義「公共政策論」
   の自治体財政問題の一部をなすものである。


経常収支比率でみる自治体財政

 経常収支比率は財政構造の弾力性を判断する指標であり、比率が低いほど弾力性が大きいことを示す。すなわち、人件費・扶助費・公債費等の経常的経費に地方税・普通交付税等を中心とする経常的一般財源がどの程度充当されているかを表す比率である。

経常収支比率(%)
経常経費に充当される経常一般財源

経常一般財源の額

 経常収支比率で見た自治体財政の健全度を以下に示す。75%から80%未満は妥当な数値だが、80%を超えると財政構造の弾力性を失いつつ、おそらく100%を超すと財政構造が硬直化してくる。

都市では、 75%〜80%未満 ………妥当である。
  80%以上 ………弾力性を失いつつある。

経常収支比率比率で見た都道府県、財政ワーストランキング 

 都道府県の経常収支比率は、05年度、06年度ともに平均で92;6%であり、財政構造の弾力性に乏しい。北海道は05年度は、99.9%でワーストワンであったが、06年度は93.8%と6.1%と大幅に改善し、05年度のワースト2の大阪府が98.6%から06年度に96.6%と2%改善している。

 しかし、以下の記事にあるように大阪府が04年度以降、財政赤字を実態より少なく見せかけていたことが分かっており、表13、表14の数値は偽装されたものとなり、結果的に100%を超す可能性が否定できない。

大阪府が「赤字隠し」 3年間で2600億円
2007年12月30日

 大阪府が2004年度以降、府債(借金)の返済を一部先送りして3年間で総額約2600億円の資金を捻出(ねん・しゅつ)、財政赤字を実態より少なく見せかけていたことが朝日新聞社の調べで分かった。こうした操作をしなければ、府は今年度にも財政再建団体へ転落する恐れがあったが、捻出資金を一般会計に繰り入れることで転落を回避した。事実上の「赤字隠し」とも言える手法で、府はこうした実態を議会や金融機関、投資家に情報開示していなかった。府幹部は「違法ではないが、適切なやり方ではなかった」と説明している。

 以下略

大阪府が「赤字隠し」 3年間で2600億円 朝日新聞

表12 経常収支比率で見た財政ワースト・ランキング
     (都道府県:
平均により悪い都道府県)
2005年度
都道府県名 経常収支比率
北海道 99.9
大阪府 98.6
山形県 96.7
栃木県 96.4
高知県 96.3
鹿児島県 96.2
福岡県 95.6
長崎県 95.5
神奈川県 95.3
愛知県 95.3
青森県 95.2
千葉県 95.0
徳島県 95.0
埼玉県 94.9
宮城県 94.4
茨城県 94.1
兵庫県 94.0
熊本県 94.0
沖縄県 93.7
奈良県 93.1
岩手県 93.0
石川県 92.9
香川県 92.8
秋田県 92.7
群馬県 92.7
富山県 92.6
都道府県平均 92.6
2006年度
都道府県名 経常収支比率
鹿児島県 97.9
岡山県 97.8
千葉県 97.4
高知県 97.4
大阪府 96.6
京都府 96.5
兵庫県 96.4
徳島県 96.4
長崎県 96.3
青森県 95.6
岩手県 95.6
山形県 95.5
茨城県 95.5
福岡県 94.7
三重県 94.6
富山県 94.5
香川県 94.3
島根県 94.1
北海道 93.8
秋田県 93.8
福島県 93.8
宮城県 93.6
神奈川県 93.5
大分県 93.5
愛知県 93.3
栃木県 93.2
熊本県 93.1
沖縄県 93.0
石川県 92.8
鳥取県 92.8
福井県 92.7
埼玉県 92.6
奈良県 92.6
都道府県平均 92.6
(注) 平均欄の比率及び指数のうち、経常収支比率、実質公債費比率及び起債制限比率は加重平均であり、財政力指数は単純平均である。


経常収支比率で見た政令指定都市、財政ワーストランキング 

 政令指定都市の経常収支比率は、05年度から06年度にかけ平均で1%改善されたが、もともと80%未満の妥当指標値にほど遠く、財政構造の弾力性は低い。とくに大阪市は、05、06年度ともにワーストワンとなっており、財政構造はきわめて硬直化している。これは神戸市についても同様である。特に神戸市は他の財政指標いずれも指標からみて最悪の状態にある。

表13 経常収支比率で見た財政ワースト・ランキング
     (政令指定都市:
全数)
 
2005年度
団体名 経常収支比率
大阪市 101.7
神戸市 97.5
札幌市 96.5
広島市 96.0
仙台市 95.9
名古屋市 95.3
千葉市 94.8
横浜市 93.6
京都市 93.5
川崎市 85.8
さいたま市 84.9
静岡市 81.1
政令指定
都市平均
94.3
2006年度
団体名 経常収支比率
大阪市 99.7
神戸市 96.6
広島市 95.8
京都市 95.2
名古屋市 94.7
札幌市 94.3
北九州市 94.2
千葉市 93.2
仙台市 93.2
堺市 93.1
横浜市 91.4
福岡市 89.0
川崎市 85.5
さいたま市 84.2
静岡市 83.5
政令指定
都市平均
93.3
(注) 平均欄の比率及び指数のうち、経常収支比率、実質公債費比率及び起債制限比率は加重平均であり、財政力指数は単純平均である。


経常収支比率で見た全市町村、財政ワーストランキング 

 全市町村の経常収支比率は、05年度から06年度にかけ平均で0.1悪化し90.3%となっているが、もともと80%未満というの経常収支比率の妥当値にはほど遠い状態ある。

 市町村の中には、夕張市など100%を大幅に超す市町村もある。これらの市町村は他の指標でもワースト20に入っているものもあり、今後、夕張市並みの経営破綻は時間の問題であると思われる。

表14 経常収支比率で見た財政ワースト・ランキング
     (全国市町村:
指数(100以上)
都道府県名 団体名 経常収支比率
北海道 夕張市 125.6
京都府 笠置町 122.4
新潟県 粟島浦村 116.7
滋賀県 高月町 112.4
奈良県 三宅町 111.7
沖縄県 渡名喜村 111.6
福岡県 嘉麻市 111.3
京都府 大山崎町 110.9
北海道 歌志内市 110.2
大阪府 摂津市 110.0
和歌山県 有田市 109.8
和歌山県 湯浅町 109.1
北海道 上砂川町 108.5
沖縄県 北大東村 108.0
奈良県 宇陀市 107.7
奈良県 黒滝村 107.6
北海道 赤平市 107.5
山梨県 芦川村 106.7
奈良県 御所市 106.5
奈良県 曽爾村 106.1
福岡県 添田町 105.9
鹿児島県 大和村 105.9
福岡県 芦屋町 105.6
奈良県 五條市 105.5
大阪府 四條畷市 105.3
鹿児島県 南さつま市 105.3
鹿児島県 天城町 105.1
石川県 能登町 104.7
福岡県 宮若市 104.7
京都府 南山城村 104.4
北海道 三笠市 104.3
徳島県 つるぎ町 104.3
大阪府 忠岡町 104.2
奈良県 上北山村 104.1
福岡県 みやこ町 103.2
大阪府 池田市 103.0
沖縄県 南大東村 103.0
青森県 今別町 102.9
奈良県 東吉野村 102.9
群馬県 みなかみ町 102.8
福岡県 東峰村 102.8
長崎県 平戸市 102.8
鹿児島県 長島町 102.8
奈良県 山添村 102.5
大阪府 泉佐野市 102.3
和歌山県 御坊市 102.3
高知県 大川村 102.3
群馬県 富岡市 102.2
奈良県 天理市 102.2
石川県 七尾市 102.1
和歌山県 新宮市 102.1
大阪府 門真市 102.0
奈良県 大和高田市 101.9
奈良県 吉野町 101.9
福岡県 飯塚市 101.8
大阪府 大阪市 101.7
福岡県 大任町 101.7
青森県 蓬田村 101.5
奈良県 上牧町 101.5
福岡県 福智町 101.5
高知県 室戸市 101.3
大分県 竹田市 101.3
沖縄県 糸満市 101.3
大阪府 守口市 101.2
大分県 由布市 101.2
大分県 国東市 101.2
福岡県 上陽町 101.1
鹿児島県 知名町 101.0
青森県 西目屋村 100.9
京都府 和束町 100.9
京都府 井手町 100.8
群馬県 草津町 100.7
高知県 日高村 100.7
福岡県 糸田町 100.7
鹿児島県 宇検村 100.7
京都府 八幡市 100.6
京都府 加茂町 100.5
大阪府 松原市 100.5
群馬県 長野原町 100.4
鹿児島県 さつま町 100.4
宮城県 多賀城市 100.3
北海道 岩内町 100.2
東京都 狛江市 100.2
青森県 黒石市 100.1
長崎県 南島原市 100.1
鹿児島県 指宿市 100.1
青森県 七戸町 100.0
群馬県 南牧村 100.0
神奈川県 三浦市 100.0
大阪府 太子町 100.0
徳島県 三好市 100.0
全市町村 平均 90.2
(注)1 平均欄の比率及び指数のうち、経常収支比率、実質公債費比率及び起債制限比率は加重平均であり、財政力指数は単純平均である。ただし、経常収支比率及び財政力指数の全国市町村平均については、特別区を含まない。
2 特別区の財政力指数については、特別区財政調整交付金の算定に要した基準財政需要額と基準財政収入額によって算出したものである。
3 特別区の経常収支比率については、「普通交付税」を「特別区財政調整交付金」に読み替えたうえ、算出したものである。
出典:国の平成17年度データ、平成17年度 地方公共団体の主要財政指標一覧より筆者が作成


表15 経常収支比率で見た2006年度財政ワースト・ランキング
     (全国市町村:
指数(100以上)
都道府県名 団体名 経常収支比率
沖縄県 渡名喜村 126.7
京都府 笠置町 123.2
北海道 夕張市 119.9
新潟県 粟島浦村 119.4
奈良県 三宅町 113.0
東京都 日の出町 111.1
奈良県 黒滝村 109.4
奈良県 宇陀市 107.0
沖縄県 北大東村 106.5
和歌山県 湯浅町 106.5
奈良県 天理市 106.3
北海道 赤平市 106.3
和歌山県 御坊市 106.3
鹿児島県 天城町 106.0
福岡県 嘉麻市 105.9
島根県 知夫村 105.9
奈良県 曽爾村 105.9
奈良県 川西町 105.8
鹿児島県 大和村 105.7
沖縄県 伊是名村 105.7
奈良県 大和高田市 105.7
奈良県 御所市 105.6
大阪府 高石市 105.4
青森県 西目屋村 105.2
福岡県 築上町 105.0
奈良県 五條市 104.8
大阪府 島本町 104.8
群馬県 沼田市 104.7
京都府 南山城村 104.5
福岡県 添田町 104.5
奈良県 桜井市 104.1
大阪府 大東市 104.1
奈良県 高取町 103.5
大阪府 門真市 103.1
大阪府 忠岡町 103.1
福岡県 みやこ町 103.1
徳島県 つるぎ町 102.9
青森県 むつ市 102.8
佐賀県 有田町 102.8
鹿児島県 阿久根市 102.8
奈良県 安堵町 102.7
鹿児島県 西之表市 102.5
大阪府 四條畷市 102.5
大阪府 松原市 102.4
高知県 奈半利町 102.3
福岡県 中間市 102.2
熊本県 人吉市 102.1
石川県 七尾市 101.9
北海道 三笠市 101.9
北海道 白老町 101.8
鹿児島県 南さつま市 101.8
福岡県 東峰村 101.7
鹿児島県 宇検村 101.7
大阪府 千早赤阪村 101.6
徳島県 小松島市 101.6
北海道 小樽市 101.6
北海道 歌志内市 101.6
群馬県 桐生市 101.5
石川県 羽咋市 101.5
福岡県 大牟田市 101.5
大阪府 池田市 101.3
奈良県 上牧町 101.3
奈良県 明日香村 101.2
福岡県 桂川町 101.1
京都府 井手町 101.0
大分県 姫島村 101.0
奈良県 下市町 100.9
福岡県 太宰府市 100.9
福岡県 福智町 100.7
和歌山県 北山村 100.7
和歌山県 紀美野町 100.6
大阪府 守口市 100.6
長崎県 松浦市 100.4
鹿児島県 指宿市 100.3
大阪府 阪南市 100.3
熊本県 錦町 100.3
佐賀県 伊万里市 100.2
福岡県 小竹町 100.2
広島県 安芸太田町 100.2
鹿児島県 奄美市 100.1
青森県 深浦町 100.1
奈良県 下北山村 100.0
宮城県 多賀城市 100.0
群馬県 南牧村 100.0
和歌山県 新宮市 100.0
全市町村 平均 90.3
(注)1 平均欄の比率及び指数のうち、経常収支比率、実質公債費比率及び起債制限比率は加重平均であり、財政力指数は単純平均である。ただし、経常収支比率及び財政力指数の全国市町村平均については、特別区を含まない。
2 特別区の財政力指数については、特別区財政調整交付金の算定に要した基準財政需要額と基準財政収入額によって算出したものである。
3 特別区の経常収支比率については、「普通交付税」を「特別区財政調整交付金」に読み替えたうえ、算出したものである。
出典:国の平成17年度データ、平成17年度 地方公共団体の主要財政指標一覧より筆者が作成

つづく