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独立系メディアでは、過去20回以上の現地調査をもとに、国土交通省によって本体を除く八ッ場ダム工事が着々と進んでおり、民主党政権となってから一段と、その速度が速くなっている事実を指摘してきた。 青山貞一:急ピッチで進む八ッ場ダム関連工事 ◆青山貞一:八ッ場ダム、本体工事復活は時間の問題か? ◆青山貞一:民主党政権下でも止まらないダム・道路建設 ◆青山貞一:八ッ場ダムB 官僚主導土建国家の象徴 ◆青山貞一:八ッ場ダムC 進む関連工事と破壊される自然環境 言うまでもなく八ッ場ダム工事の中止は、民主党の政権マニフェストにおける最重要公約のひとつであり、政権交代後、国土交通大臣となった前原元大臣は、はやばやと中止を宣言した。 しかし、既得権益の積み重ねで当初予算の2倍以上の4600億円を関連道路や鉄道建設、河川改修、砂防ダム建設事業に使ってきた国土交通省は、前原氏が大臣就任中も八ッ場ダム建設の妥当性の検証として八ッ場ダムに関する有識者会議を設置してきた。 もともと、民主党が政権公約とした八ッ場ダム建設の中止について、政権奪取後に大臣が中止を明言したにもかかわらず、その種の有識者会議を設置すること自体おかしなことだが、実は有識者会議の委員選定にも多くの疑義があった。 その後、前原国土交通大臣が辞めたあと、何人も国土交通大臣が着任したが、国土交通省は着々と、現場で工事を推進するとともに、上記の有識者会議とは別に、利根川流域の都県知事らによる検討会を設置し、外堀を埋めてきた。 周知のように、民主党が政権奪取する前から八ッ場ダム問題では、関連する群馬県、栃木県、茨城県、千葉県、東京都などの都県自治体に対し行政訴訟(地方自治法にある住民訴訟)が提起されてきた。被告は各自治体の知事である。 これらの都県は、いずれも国土交通省による国直轄の八ッ場ダム事業でありながら、巨額の資金投入を国から押しつけられてきた。表向きは利水、治水などが理由だが、現実には東京都はじめ各地自体の利水は頭打ちから減少に向かっており、治水についても、利根川水系には群馬県内を中心に、すでに膨大なダムが建設されており、吾妻川の長野原町に八ッ場ダムを建設する必要性と妥当性はないと各裁判で原告側は多くのデータをもとに主張してきたのである。 今回の八ッ場ダム事業評価は、行政訴訟で被告となってきた各都県が八ッ場ダムの必要性を検討する会合に参加し従来通り必要であると述べただけのことである。それをことさら大きく報道するメディアもどうかしている。 当然、その背景には民主党政権下で着々と巨額の公金を使い、政権が中止と宣言したダムの関連事業を強行してきた国土交通省が描いた事業推進のシナリオが見え隠れする。 大メディアは、民主党政権が中止宣言したときに、大々的に八ッ場ダム問題を報道したが、そのあとは、すっかりなりをひそめていた。現場で毎日着々と進む工事については何ら取材も報道もしてこなかったのである。 これは原発なしで電力が足りているのに、原発建設を強行してきた経産官僚の構図と似ている。すでに利水の水需要は足りており、基本高水など治水論理も破綻しているのに、ひとたび進めた土建事業はテコでも辞めず、あれこれへりくつをこね公金を浪費して国土や自然を破壊しているのである。 にもかかわらず、地元自治体である群馬県やいわば事業当事者となっている都県が自作自演の評価結果を出しただけなのに、過去の背景、経緯、事実そっちのけで、八ッ場ダム評価“建設が優位”などと報道するのはきわめて不見識と言わざるを得ない。そもそも、国と一緒になって事業を強引に進めてきた都県の知事が八ッ場ダム事業が必要ないなどという結論など出すわけはない。 今後、この自作自演の評価結果を、国土交通省が人選した国の有識者会議で説明し、八ッ場ダム建設やむなしの結論に導こうとしているのは、間違いがないところであろう。 民主党政見のふがいなさが大問題ではあるものの、「政官業学報」、すなわちもともとこの不要な巨大ダム建設を推し進めてきた自民党(政)と国土交通省(官)、それに中央、地元を含めた土建業者(業)、とともに御用学者(学)と大メディア(報)が連携し、民主党の公約を骨抜きにしてきたことは間違いないだろう。また民主党内に第二自民党というか自民党予備軍がいて、それを誘導してきたふしもある。 いずれにせよ、結果として大メディアが八ッ場ダムやむなしの流れをつくっているのは、とんでもないことである。 またいつものことであるが、大メディアはこの種の報道で国、自治体など事業者の言い分ばかりをそのまま報道し、脱ダム系の識者らのコメントを一切掲載しないのはきわめて異常である。以下のNHKの報道でも自作事件の知事、背後で誘導する国土交通省さらに地元の首長のコメントのみを掲載している。
つづく |