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●無目的ダム:事業の目的がなくなっている 図1は群馬県長野原町、東吾妻町で行われている八ッ場ダム事業の計画対象図である。現状ではダム本体は現在できていない。 図1 八ッ場ダム事業の計画対象地域の全体図 次に、八ッ場ダムがもつ問題点である。 ダム事業の建設目的である。八ッ場ダムは利水、治水の両面とも目的たりえなくなっている。以下、八ッ場ダムを考える会の公式Web及び住民訴訟の訴状、準備書面などから課題について示してみたい。 ●利水 利水については、東京都はじめ多くの関連自治体で水需要は大幅に減少している。これは@節水意識が進んでいること、A産業構造の省水資源化が進んでいること、B長期的的にも少子化が進み、全体の人口が減少に向かっていることなどがある。 事実、@首都圏の水需要をめぐる状況が大きく変化している。A人口減少、工業用水の需要減により横ばいから減少傾向となっている。B東京の場合、一日最大給水量は最近10年間に100万m3/日も減少して、約530万m3程度になっているため、現在は約170万m3という大量の水源があり余っている。
図2は東京都が過去作成してきた複数の長期水需要予測計画を示したものだ。実線が実際の水需要、点線が中期計画に示された水需要予測値である。いずれの計画も右肩上がりの過大な需要を予測していたことが分かる。現在の実際の水需要は1970年の予測値の1/3にも達していないことが分かる。 図2 東京都の過去の水需要予測と実際の水需要 図3は東京都の一人当たりの吸水量の変化である。見て分かるように最大給水量、平均給水量ともに年次を追って減少していることが分かる。 図3 東京都の一人当たりの吸水量の変化 さらに図4は6都県の水需要の推移。1990年以降、ほぼ需要は横ばいであることが分かる。 図3 6都県における水需要の推移 ●治水 治水についても、国土交通省は1947年に起きたカスリン台風時の利根川流域での被害をことさら繰り返し強調している。 だが、この半世紀超のなかで利根川水系の治水は多くの支流、流域を含めに総合的に考慮され、群馬県内には多数の巨大ダムを建設することを含め対応されてきた。何も吾妻川の上流に八ッ場ダムを建設しなくとも下流域での総合治水は問題なくなっている。 大型台風を想定しているが、実際は群馬県伊勢崎市以北、八ッ場 ダム付近の水量はそれほど大きくない。 図4 1947年のカスリン台風工事における地点別の流量推定 利根川の治水計画は、1万7000m3/sの洪水流量とされたカスリン台風を経て1949年、1万7000m3/sに改訂された。 さらに1980年、流域の開発が進んだことを理由に2万2000m3/sとされ。 しかし戦後、森林の生長と共に洪水の出方は小さくなり、図5に見るように1950年以降、洪水規模が1万m3/sを超える記録はない。 図5 利根川・八斗島地点の年間最大流量 八ッ場ダムは、かなり以前から「ためにする」ダム建設事業となっている。八ッ場ダムは、多目的ダムどころか、すでに公共工事が目的の無目的ダムとなっているのである。 これらは首都圏で、群馬、栃木、茨城、千葉、埼玉、東京にて、ここ数年繰り広げられている6つの住民訴訟の訴状、準備書面に詳細に示されている。また東京都多摩地区自治体の市議会が八ッ場ダム計画の中止、廃止を求める意見書をつぎつぎ採択していることからも分かる。 つづく |