| シルクロードの今を征く Now on the Silk Road 甕城（おうじょう） 西安（Xi'an, 中国） 青山貞一 Teiichi Aoyama 池田こみち Komichi Ikeda 共編 掲載月日：２０１5年１月22日 更新：２０１９年４月～６月 更新：２０２０年４月１日 独立系メディア Ｅ－ｗａｖｅ Tokyo 無断転載禁 |
| 総合メニュー 甕城（おうじょう） 城壁門の全体（１８門） 朱雀門 文昌門 和平門 建国門 小南門（勿幕門） 含光門 尚德門 解放門 尚勤門 尚武門 尚倹門 朝陽門 本稿の解説文は、現地調査や現地入手資料、パンフなどに基づく解説に加え、百度百科中国版から日本への翻訳、Wikipedia 日本語版を使用しています。また写真は現地撮影以外に百度百科、Wikimedlia Commons、トリップアドバイザーさらに地図はグーグルマップ、グーグルストリートビュー、百度地図などを使用しています。その他の引用に際しては、その都度引用名を記しています ◆ 甕城（おうじょう）  甕城（おうじょう）は、中国の城郭や関所で、正規の城門外（まれに城門内側）に防御用の城門を二重（もしくは三重以上）にかけた半円形あるいは方形の小堡をいいます。 甕城は蘇州、南京、西安などの都市城壁に付属して見られます。  甕城の模式図 Source:Wikimedia Commons user:wikiwikiyarou - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる 概要  西安城の甕城 Source:Wikimedia Commons CC 表示-継承 1.0, リンク 甕城は城門の両側に城壁を半円（四方）に配し、城門には城楼を設営する。城壁の天面は兵員の往来が可能となっており、女墻（じょしょう、ひめがき）という低い防御壁で防備されています。破城槌の攻撃を避けるため、甕城の城門と正規の城門は同一列上からずらされた配置がなされていました。 甕城がいつ頃に現れたのかは未だ確証がありませんが、五胡十六国時代に匈奴の建てた統万城にその原型が見られます。前漢から北魏の時代には、城門に壮麗な外観が求められ、三層の門楼や門前の城闕が設置される一方で、甕城は顧みられませんでした。隋唐においても長安、洛陽の門前に甕城は建設されていません。 五代と北宋では半円形の甕城が盛んに造られるようになります。 曾公亮の『武経総要』では最初の甕城に関する記述が現れます。「城外には半円形あるいは方形の甕城を置く。地形を観測し、城壁は厚く、高くして、門を一つ開け、門の左右から城壁を連結させる」。この記述に従った城は北宋東京城に現れます。 『東京夢華録・巻一』には「南薰門、新鄭門、新宋門、封丘門、4つの城門がすべて甕城と三層楼閣を持ち、屈曲させた門を開けている」とあります。北宋諸州府の城壁も多くはこれに倣い、平江府（蘇州）と襄陽はその代表であったと言えます。 南宋の臨安、遼と金の首都上京には甕城を建設したという記録は残っていません。しかし南宋の静江府（桂林）では複雑かつ完璧な甕城の設営が見られました。金の中都も東京城を倣って甕城を設けました。元代には漢人の反乱を警戒し、また北方異民族侵入の心配もなかったため、多くの都市で甕城は破却され、新たに設営されることもなかったのです。元朝末期には農民の蜂起が勃発したため、天順帝は大都に甕城を修築、復元させました。 明朝では再び城壁の強化が重視され、南京応天府、中都鳳陽府、北京順天府から西安、帰徳（現在の河南省商丘）、平遥などの府、州、県レベル地方都市、および万里の長城の山海関、嘉峪関などの関所に至るまで甕城が設けられました。その中でも南京の聚寶門（今日の中華門）の甕城が最も大規模で複雑でした。 中国以外 李氏朝鮮でも漢城、水原といった主要都市には城外に甕城が建設されました。ただし、多くの朝鮮の甕城は片側の城壁だけが本城と連結し、もう一方は通常、出入り口として開放されているところが中国のものと異なっています。  水原城の甕城 Source:Wikimedia Commons Johannes Barre (iGEL (talk)) - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる 日本の城郭では、外枡形虎口や馬出が機能的に似ています。いずれも迫り来る敵との緩衝地帯の役目を果たし、射撃によって防衛します。形のうえでは、門前に付属する曲輪とそれに伴う櫓門が中国の甕城と箭楼に似ています。 西洋の「barbican」も甕城に似ていますが、むしろ城門両脇の門塔や防塞を指すことが多いようです。  バービカン（カルカソンヌ城） Source:Wikimedia Commons パブリック・ドメイン, リンク 関連項目 万里の長城 南京城 西安 山海関 城門 虎口 櫓門 城壁門の全体（１８門）へつづく |