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(1) (2) (3) (4) 福島第一原発事故による各種の放射性物質の放出、漏洩に関連して、移流、拡散、沈降、付着による大気、公共用水域水、飲料水、地下水、土壌、底質、野菜、植物、魚介類、肉類、乳製品などの汚染を判断する上での基本的事項を順次まとめておきます。 ●放射線、放射能、放射性物質の違い 「放射線」は物質を透過する力を持った光線に似たもので、アルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線、中性子線などがあります。 放射線を出す能力を「放射能」といいます。 さらに、この放射線を出す能力をもった物質のことを「放射性物質」といいます。 放射線は受けた量によって、身体への影響は異なります。放射線を受けることによって人体が受けた影響は「シーベルト」という単位で表されます。 1シーベルト(Sv)= 1,000ミリシーベルト(mSv)= 1,000,000マイクロシーベルト(μSv) 注)放射線の吸収線量の強さを表わす単位をグレイ(Gy)といいます。グレイに放射線の種類の違いによる生体への影響を加味して係数を掛け合わせた単位をシーベルト(Sv)といいます。 ●放射線による物を通り抜ける力の違い 放射線は種類によって物を通り抜ける力が違い、それぞれ異なる物質で遮ることができるとされています。 たとえば アルファ(α)線 : 紙により遮られ、 ベータ(β)線 : アルミなどの雨水金属板で遮られ、 ガンマ(γ)線やX線: 鉛や厚い鉄の板で遮られ、 中性子線 : 水が入った壁やコンクリート壁によって遮られる とされています。 そしてアルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線、X線、中性子線の順序で後の放射線になればなるほど通り抜ける力が強くなります。 注)アルファ線は不安定核のアルファ崩壊にともなって放出され、+2の電荷を帯びており、ローレンツ力によって電場や磁場で屈曲されます。電離作用が強いので透過力は小さく、紙や数cmの空気層で止められるが、その電離作用の強さのため、アルファ線を出す物質を体内に取り込んだ場合の内部被曝には十分注意しなければならない ●<シーベルト>と<ベクレル> 通常、原発や原発事故で放射性物質から放出されるアルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線などの放射線を計る単位として上述のシーベルトが使われていますが、飲料水、土壌、底質、野菜、植物、魚介、肉類、肉類などについては、主にベクレルが使われています。 上述のように、放射線を受けることによって人体が受けた影響は「シーベルト」という単位で表されますが、ベクレル(becquerel, Bq)は、放射能の量を表す単位であり、単位は(Bq)です。 1 秒間に1つの原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量が1 Bq(ベクレル)となります。 たとえば、370 Bqの放射性セシウムは、毎秒ごとに370 個の原子核が崩壊し放射線を発していることになります。 通常、食品なら1kg当たりのベクレル(Bq/kg)、水なら1リットル当たりのベクレル(Bq/L)、広域の土地の表面なら平方km当たりのベクレル(Bq/km2)で表記されます。 ●核種とは 核種(かくしゅ、Nuclide)は、陽子と中性子の数により決定される原子核の種類です。ほぼすべての原子核は陽子と中性子から構成されています。核種は原子核の同位体やその他の性質を区別するために利用されています。 ●放射性核種の半減期 放射性核種は、種類により半減期が異なります。 以下に主な放射性核種の半減期を示します。 ちなみに、日本では、今のところヨウ素131とセシウム137ばかりが問題視されていますが、以下にあるようにヨウ素、セシウムにもその他の放射性同位元素があり、土壌などではストロンチウム90が重要なものとなります。 ヨウ素 129 1870万年間 ヨウ素 131 8日間 ヨウ素 133 20.8時間 セシウム 134 2年間 セシウム 136 13.1日間 セシウム 137 30年間 ストロンチウム 90 28.6年間 プルトニウム 238 87.7年間 プルトニウム 239 2.41万年間 プルトニウム 240 6564年間 放射性核種は数100に及ぶので、上記はごく一部といえます。 以下に、緊急時に考慮すべき放射性核種がありますが、それでも合計で54種類にすぎません。京都大学原子炉実験所の小出助教によれば、放射線の程度こそあれ、数100種類の放射性核種が放出されるとされています。 緊急時に考慮すべき放射性核種に対する実効線量係数 フリージャーナリスト岩上氏による小出助教インタビュー(Ustream) <解説> これも政府や東電、さらにテレビなどに出ている学者は国民に伝えていませんが、現実には上記の放射性核種が同時に放出される可能性があることです。ヨウ素131とセシウム137だけでなく、他の放射性核種による被曝も同時に受ける可能性があることです。場合によってはプルトニウムからの被曝もあり得ます。 さらに言えば、以下に示される放射性核種からの複合的、累積的な影響を同時に考慮しなければなりません。 福島原発事故による放射性物質の放出では、測定分析の難しさや測定分析にかかる所要時間などからヨウ素131とセシウム137が問題となっているだけであり、ストロンチウムや猛毒のプルトニウム系の放射性物質も炉の周辺の土壌などで測定すれば検出されるはずです。 とくに福島第一原発の3号機ではプルサーマルと言い使用済み核燃料(MOX:ウラン238とプルトニウムの混合酸化物(Mixed Oxideを燃料として使用)が使用されており、プルトニウムが外部に放出される可能性はあります。 事実、東京電力は3月28日、福島第1原発の敷地内5カ所で21、22両日に採取した土壌から、微量のプルトニウム238と同239、240を検出したと発表しています。 ちなみに、プルサーマルとは、プルトニウムで燃料を作り、従来の熱中性子炉で燃料の一部として使うことを言います。なお、プルサーマルという名称は、プルトニウムのプルとサーマルニュートロン・リアクター(熱中性子炉)のサーマルを繋げた和製英語(plutonium thermal use)です。 つづく |