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放射性物質・放射線に関する
基本的事項について(3)
version 0.4
青山貞一 Teiichi Aoyama
東京都市大学環境情報学部教授
環境総合研究所所長
掲載月日:2011年4月5日
 独立系メディア E−wave


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被曝の実効線量と影響・被害との関係について

 以下はとかく誤解されやすい事項なので、注意深く解説しましょう!

 ここでは、先に述べたように、被曝がいっときなのか、5〜10分なのか、1時間なのか、1日累積値なのか、年間累積値なのかが、問題となります。

 また、人体が被曝を受ける場合、外部被曝なのか内部被曝なのかが重要です。さらに被曝を受ける部位が体の一部なのか、全身なのかも重要となります。

 たとえば、一般公衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度(ICRPの勧告の1ミリシーベルト(1mSv))は年間累積値であり、これを1時間単位の被曝値に換算すると0.114マイクロシーベルト(μSv)となります。

 したがって、仮に福島原発からの放出が今後長期化すると、東京などでの1時間当たりの被曝が0.1マイクロシーベルト(μSv)程度であっても、1年間継続的に被曝を受ける場合には、ICRPの勧告値である1ミリシーベルト(mSv)近くになる可能性があります(1マイクロシーベルト/h×8760h)。

 またひとたび経口摂取で体内に入った高いベクレルの放射性物質が体内に残留する場合には、外部からの被曝がおさまった場合でも、体内にある放射性物質の内部被曝により年間累積値が大きくなる可能性があります。

 これも基本的事項(1)に示したベクレル、シーベルト換算により計算が可能です。

 たとえば、半減期が8日の放射性物質(ヨウ素131)に汚染された2000ベクレル(Bq)/kgの食品、たとえば葉菜をサラダとして10日間で1kg食べた場合、すなわち一日に100gづつ10日間食べ続けた場合、累積で2000ベクレル(Bq)が体内に入った(経口摂取)ことになります。ちなみに2000ベクレル(Bq)/kgは、日本政府(厚生労働省)が2011年3月17日に泥縄的に決めた野菜の暫定基準です。これをシーベルトに換算すると、40マイクロシーベルト(μSv)/kgに相当します。ただし、この計算では半減期を考慮していません。

 一方、政府などはよくレントゲン撮影による被曝との比較をしています。

 レントゲン撮影では、一度にまとめて、すなわち数秒間で0.1〜4mSvとなます。値が大きく異なるのは、胸のレントゲンでは少なく、バリウムを使った胃のレントゲン検査では大きくなります。またCTでは一度にまとめて6−20mSVを被曝するとされています。

 たとえば1回のCT撮影では、おおよそですが1時間当たり5−22マイクロシーベルト(μSv)の被曝を一年間受け続けるのと同じ量となります。

 ちなみに、私は、昨年11月11日に階段から落ちて頸椎を骨折し、慈恵医科大学病院に入院しました。11月11日から2月30日までの間にCTを5回、頸部のX線を3回受けています。部位は首まわりです。

 1回のCT撮影を10mSv、1回のレントゲン撮影を0.3mSvとした場合、11月11日から2月30日までの間の累積では10mSv×5回+0.3mSv×3回=50.9mSvの被曝を受けていることになります。

 これは、以下の表にある放射線業務従事者が1年間にさらされてよい放射線の限度に近い値であり、かなりの被曝を受けていることが分かります。これを指示している脳神経外科医にどれだけ被曝についての知見があるかどうかは不明ですが、明らかに不要と思われるCT撮影はしないにこしたことはありません。

◆放射線量の大きさに対する人体の影響

 以下の表における被曝の単位はミリシーベルト (mSv)です。
 1ミリシーベルト=1000マイクロシーベルト(μSv)。

実効線量 内訳

0.05    原子力発電所の事業所境界での1年間の線量。

0.1 - 0.3 胸部X線撮影。

1  一般公衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度
  (ICRPの勧告)。#被曝の対策を参照。
  放射線業務につく人(放射線業務従事者)(妊娠中の
  女子に限る)が妊娠を知ったときから出産までにさらされ
  てよい放射線の限度。


2  放射線業務従事者(妊娠中の女子に限る)が妊娠を知
  ったときから出産までにさらされてよい腹部表面の放射
  線の限度。

2.4 一年間に自然環境から人が受ける放射線の世界平均。

4   のX線撮影。

5   放射線業務従事者(妊娠可能な女子に限る)が法定の
   3か月間にさらされてよい放射線の限度。

7 - 20   X線CTによる撮像。

50   放射線業務従事者(妊娠可能な女子を除く)が1年間に
    さらされてよい放射線の限度。

100  放射線業務従事者(妊娠可能な女子を除く)が法定の
    5年間にさらされてよい放射線の限度。
    放射線業務従事者(妊娠可能な女子を除く)が1回の
    緊急作業でさらされてよい放射線の限度。妊娠可能な
    女子には緊急作業が認められていない。

250   白血球の減少。(一度にまとめて受けた場合、以下同じ)

500    リンパ球の減少。

1,000   急性放射線障害。悪心(吐き気)、嘔吐など。
      水晶体混濁。

2,000   出血、脱毛など。5%の人が死亡する。

3,000 - 5,000
      50%の人が死亡する。(人体局所の被曝については
      3,000 : 脱毛、4,000 : 永久不妊、5,000 : 白内障、
      皮膚の紅斑)

7,000 - 10,000
      99%の人が死亡する。

10,001以上

注)
 放射線の人体に対する影響は、被曝した体の部分などにより異なる。

 上記の表ではX線撮影、X線CTおよび注記されているもの
  以外は全身に対するものである。

 X線検査の数値は調査年代(検査装置の性能)や報告(調
  査対象となった医療機関による使用方法)によってばらつ
  きがあるため、目安である。

 放射線の線量限度には、自然放射線被曝と自己の診療
  に関わる医療被曝は含まれない。

 一度に大きな線量を被曝した場合の線量単位にはシー
  ベルトではなくグレイが用いられるが、X線とガンマ線に
  よる被曝に関しては数値に違いがない。

つづく