東南アジア最後の秘境 ミャンマー なぜ、多くのパゴダができたか? Why are many of pagoda was built? 青山貞一 Teiichi Aoyama 池田こみち Komichi Ikeda 掲載月日:2016年6月24日 独立系メディア E−wave Tokyo 無断転載禁 |
(83) パゴダの構造と仏教の宇宙観の表現 (84) なぜ、多くのパゴダができたのか (85) 格差を是正するバガンの社会の仕組み NHKスペシャル「アジア巨大遺跡 バガン」では、次の謎として、バガンにはなぜ、かくもたくさんのパゴダがあるのか?について言及しています。 バガンにある多数のパゴダや寺院について調べると、初代のアノーヤター王など王が創建したパゴダは、3000近くのパゴダのうちわずか30しかないことが分かりました。下は初代から11代までの王が建てたパゴダや寺院です。 出典:NHKスペシャル「アジア巨大遺跡 バガン」 では、一体誰がその他の多数のパゴダをつくったのでしょうか? この謎を解くための地道な研究が近年積極的に進められ、少しづつその謎が明らかになってきたというのです。 これに関連してバガン研究の柱として注目されてきたことがあります。そのヒントは、バガン遺跡から発掘され、現在、バガンの考古学博物館に展示されている石板の碑文にありました。 出典:NHKスペシャル「アジア巨大遺跡 バガン」 以下はバガン遺跡から発見された石碑です。場所は私達が滞在したホテルのすぐ隣にあるバガンの考古学楽博物館です。 出典:NHKスペシャル「アジア巨大遺跡 バガン」 石碑はパゴダや寺院がつくられたときに奉納されたもので、パゴダや寺院の創健者の名前、肩書、年代などが記されています。 出典:NHKスペシャル「アジア巨大遺跡 バガン」 バガンの考古学博物館にある石碑の中に、名前だけで肩書のない石碑が多数あることが分かったのです。 これがなにを意味するかといえば、それはパゴダや寺院をつくったのが「一般庶民」であることを意味します。 出典:NHKスペシャル「アジア巨大遺跡 バガン」 しかし、寺院やパゴダの建設には、仮に小規模なものであっても、まとまったお金が必要なはずです。 一般庶民はこれをどこから調達したのでしょうか? この謎を解き明かそうとしている日本人の研究者がいます。 愛知大学の伊東利勝教授です。伊東さんは。バガンには庶民がパゴダや寺院の建設を可能とする社会的仕組みがあったと主張しています。 出典:NHKスペシャル「アジア巨大遺跡 バガン」 伊東さんによれば、ある王族が建立したパゴダの碑文から、実際に工事にかかわった一般庶民にさまざまな形で物を支払ったことを指摘しています。さらに鍛冶、絵師、煉瓦づくり、仏像作りなどに関わった者に銀などで賃金を支払ったことも記されていました。 出典:NHKスペシャル「アジア巨大遺跡 バガン」 出典:NHKスペシャル「アジア巨大遺跡 バガン」 これは強制労働によってパゴダや寺院をつくったのではなく、あくまでも対価(賃金)を支払ってつくってもらったことを意味しています。 当時、西洋、東洋は封建社会であり、奴隷や下層階級の人々が無給で働かされていた時代です。しかし、バガンでは、王が庶民から得た一種の税をもとに、寺院やパゴダを建設する際に、対価を賃金として支払っていたのです。 出典:NHKスペシャル「アジア巨大遺跡 バガン」 そのため、庶民の中に富を蓄えることができる人が出てきたのです。 伊東教授は庶民が蓄積した富を寺院やパゴダを建設するために使うことができたと考えています。 その結果、国家的事業ではなく、一人の人が財産を寄進してパゴダをつくることができるようになったと考えられます。 つづく |