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施設・訴訟概要 敦賀原子力館 ふげん 三方五湖 美浜原子力PRセンター もんじゅ1 もんじゅ2 もんじゅ3 下図は福井県の若狭湾岸地域を示したものである。 「若狭湾岸原発銀座」における原子力関連施設立地図 出典:グーグルマップをベースに青山が作成 関西電力の美浜原子力PRセンターを後に、私たちはアポイントメントをとっている「もんじゅ」に向かった。美浜原子力PRセンターから日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(以降、ただ「もんじゅ」と略)には、以下のグーグルマップにあるように、敦賀半島にあってわずか4.7km、約14分の近さにある。 出典:グーグルマップ 以下は衛星写真で上空から見た「もんじゅ」である。西側は若狭湾に面している。 出典:グーグルマップ 本稿の最初で紹介したが、再度「高速増殖炉もんじゅ」の概要を以下に示す。
私たちは関西電力美浜原子力PRセンターを防風の中出発し、時間通りに「もんじゅ」の事務所棟に到着した。ポーチに副所長が迎えにこられていた。「ふげん」同様、「もんじゅ」でも、最初に動画を見せられた。 副所長によれば、「もんじゅ」には国会議員や原子力専門のNPOなどが過去数回視察にきているとのこと、今回、池田が見学のアポイントメントをとった後、青山貞一、池田こみちのプロフィールなどをホームページなどで検索されたと、正直に話された。 それにしても、国会議員や行政幹部(おそらく大臣、副大臣、政務官ら)らが何度もきているのに、その報告がまったくWeb上にないのは不思議である。この種の情報は、私蔵しても何の意味も価値もない。 私達の方からは、来所まえに、「もんじゅ」について知人の海渡雄一弁護士が直前の9月2日に青森県民ホールで行った「もんじゅ」訴訟の全容についての講演動画を入手し、それを一枚一枚のパワーポイントに変換し、ナトリウム漏れ問題はじめ「もんじゅ」訴訟全般について学習してきたことを伝えた。いうまでもなく、海渡雄一弁護士は「もんじゅ」裁判の中心、しかも訴えた側のにいた弁護士である。 ※<参考文献> 海渡雄一弁護士が直前に青森県民ホールで 市民相手に行った「もんじゅ」訴訟の全容についての講演(主要部分) さて、事務所棟での 「もんじゅ」の動画上映と概括的な質疑の後、副所長が先導し、「もんじゅ」のナトリウム漏れに関連する展示物をみながら説明を受けた。その間、こちらからの質問は随時OKとのことであった。これは関西電力美浜原子力PRセンターの所長の前代未聞の対応があった直後だけに、その真摯さに恐縮した。 下は「もんじゅ」の事務棟の入口での池田そして青山である。 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900 撮影:池田こみち Nikon Coolpix S9900 先に述べたように、私達の「もんじゅ」訪問の3カ月後、国会で「もんじゅ」の閉鎖が決まっている。そのような時期に時間をかけ隅々まで説明し、質疑に対応してくれたことに感謝の意を最初に表したい。全体の時間は2時間半である。 展示の中で最も時間をかけ説明されたのは、ナトリウム漏洩事件 に関連した部分であった。なお、「もんじゅ」では「ふげん」と異なり、同じ日本原子力研究開発機構の関連施設でありながら、写真撮影、動画撮影などはOKであった。もともと巨額な税金、 Wikipedia では5933億6565万円(うち政府支出4504億円)とあったが、海渡弁護士のスライドでは、人件費を含まず1超3300円を支出しているとある。これは日本の公共事業の大きな特徴である小さく生んで大きく育てるを地で言っているプロジェクトである。 なお、廃炉が決まっても、以下の福井新聞の気ぞを読めば、廃炉費用が実に1兆円超えもありうること、また使用済み燃料処理に数千億円以上がかかるという。呆然とする!
ナトリウム漏洩は、温度計が壊れ外れたあと、差し込んでいた穴から実に200時間以上ナトリウムが廊下に漏れ出たことが原因だが、問題はナトリウム漏洩がアラームが鳴るまでの間、所員誰にも発見されず放置されていたことがだ。しかも、フル運転のわずか15日分の稼働時点での事故である。 建設費だけで6000憶円、その他を入れれば1兆円を超す巨大プロジェクトでありながら、なんともお粗末、リスク管理そして研究所全体のガバナンスがまるでなっていないことこそ、最大の問題だったはずだ。 もちろん、世界各国※が錬金術そして夢のようなFBR(高速増殖炉)について、それぞれ資金と人材を投入したものの、日本とフランス以外は撤退している。一度始めたら止まらない大日本帝国軍、関東軍が犯した愚を地で行くような巨大プロジェクトである。 以下は、高速増殖炉を手掛けながら中止した国々である。 ※アメリカ合衆国、フランス・イギリス・ドイツ・イタリア・ベルギーの 国際プロジェクト、イギリス、ドイツ、イタリア、ロシア(旧ソ連)、 カザフスタン(旧ソ連)、インド、中国、韓国 ※継続国 日本(もんじゅ)、フランス(スーパーフェニックス) シアター型のプレゼンテーションルームで、もんじゅの研究開発の背景、経緯、技術的特徴などを30分ほど上映。その後、その場で質疑を20分ほど行った。そのあと、展示室に移って、副所長の説明により展示物を視察した。その場での質問にも大変丁寧に回答してくれた。 展示物を見る前に、2次冷却系におけるナトリウム漏れに関連する経緯、対応なおを見てみたい。出典は、動力炉・核燃料事業団所轄時代の事故の原因究明と、安全争点系の全容である。 1. 事故の原因究明等 (1) 事故の概要 試運転中の高速増殖原型炉もんじゅで、1995年12月8日19時47分、2次冷却系配管(Cループ中間熱交換器出口配管)からナトリウムが漏えいする事故が発生した。 「もんじゅ」は、1994年4月初臨界達成後、原子炉の特性を確認し、1995年2月より 原子炉出力を段階的に上げる試運転を進めた。ナトリウム漏えい事故は、原子炉出力約45%での試験のため原子炉出力を徐々に上昇させる操作を行っている時に発生した。 この操作を行っていた8日19時47分、中央制御室に「中間熱交換器C2次側出口ナトリウム温度高」という警報、また、同時に火災検知器(煙感知器)も発報した。さらに1分後、「C2次主冷却系ナトリウム漏えい」という警報が出した。これは、2次主冷却系Cループの配管室でナトリウムが漏れたことを示している。 このため、直ちに中央制御室に居た運転員が駆けつけCループ配管室の扉を開け、煙が発生していることを確めた。これによりナトリウム漏えいが起きていることを確認したが、漏えい量を確かめる<指示計に、すぐに判るような変化がなかったので小規模な漏えいと判断し、20時に原子炉を手動で通常の手順で停止する操作に入った。この操作を行っている20時50分頃火災検知器の発報した部屋の数が急に多くなったことに気付いたので、運転員が再度配管室の扉を少し開け内部を確認したところ白煙の増加が認められた。このため21時20分に原子炉を手動で緊急停止した。原子炉停止後、22時55分より配管内のナトリウムの抜き取り操作を行い、24時15分に抜き取りを完了した。換気系の運転は23時13分に停止した。> 現場調査により、ナトリウム漏えいは2次主冷却系Cループ中間熱交換器出口配管に取り付けられている温度計から漏れ出たもので、漏えい箇所の下に配置された換気ダクト、鉄製足場に穴があいていた。漏れ出たナトリウムは、床鉄板の上にナトリウムの化合物として堆積するとともに、空気中で燃える際にできる煙となって、2次冷却系Cループの各部屋に拡がりこれらの部屋の床や壁に付着していた。また、この煙の一部は、換気系から屋外へ放出された。 (2) 原因究明 大別すると次の3つの調査を実施し、終了した。その結果は次の通り。 1)ナトリウム漏えい発生原因の調査 温度計の破損原因は配管内の流れによって温度計の細管部に振動が発生し、このため温度計の段付部が高サイクルの疲労を受け破損したことが分かった。温度計の設計について調査した結果、温度計の形状を設計する際に参考とした米国機械学会の基準を正確に理解しないまま適用したこと、温度計の段付部に丸みを付けなかったことが分かり、設計が不適切であり、また、動燃における設計の審査においてその問題点を指摘できなかったことが分かった。温度センサを曲がった状態で温度計のさやに挿入すると流れによる振動を抑える働きが弱くなることが分かり、温度センサが曲がって挿入されたことから当該温度計のみが早期に破損したとの評価が得られた。 2)漏えい時の運転操作に関する調査 漏えいが発生した時の運転操作は、漏えいの確認、原子炉停止、ナトリウムの抜き取り、換気系の停止などの手順を定めた運転手順書に従って行われたが、その際の運転操作や関連する装置について、漏えい量を少なくし、発生した煙の拡散を抑える観点より次の点で不適切であることが分かった。小規模漏えい時は原子炉を手動にて通常の手順で停止することとしていたが、直ちに原子炉を停止すべきであった。配管や機器内のナトリウム温度が下がるのを待ってナトリウムの抜き取りを行うこととしていたが、原子炉停止後、早期に抜き取りを開始すべきであった。換気系の停止は、ナトリウムの抜き取り操作開始後行うこととしていたが、原子炉停止後、早期に行うべきであった。 3)漏えいナトリウムの影響調査 漏れたナトリウム量は約640kgとの結果を得た。このうち、約410kg分は屋内で回収された。残りの約230kg分は屋外に放出されまが、環境への影響は認められなかったた。床鉄板の局部的な最高温度は700〜750℃と評価され、一部に、1.5mm程度の板厚の減少が確認されたが、漏れたナトリウムが床コンクリートと接触して反応すことを防止する床鉄板の機能は十分維持された。漏えいした近くの床コンクリート表面の温度は一時580℃程度、壁コンクリート表面の温度は400℃程度となったと推定されたが、コンクリート床や壁の強度、放射線遮へい性能に影響はなかった。 空調ダクト、鉄製足場の損傷は、材料分析や腐食実験の結果、ナトリウム化合物による腐食が原因であることが分かった。「もんじゅ」事故で実際にどのようにナトリウムが漏れ出て燃えたか、また、換気ダクト、鉄製足場、床鉄板などにどのように影響を与えるかを調べるために大洗工学センターの実験室でナトリウム漏えい燃焼実験を行ったた。その結果、ナトリウムが温度計から漏れ出て換気ダクトや鉄製足場に当たりながら床鉄板上に落下していく様子や、これらの部分の温度変化などが分かった。 なお、この実験の一部において、「もんじゅ」事故では見られなかった床鉄板に穴のあく腐食が起こった。床鉄板の分析や腐食実験などによりこの腐食については、実験した部屋が「もんじゅ」事故の発生した部屋に比べ1/13と小さかったことなどにより、腐食を起こす環境が「もんじゅ」事故の場合とは異なっていたためとの結果が得られた。 一方、技術的な観点の他、事故時の対外対応の体制が不十分であり、現場の状況が正しく外部の機関に提供されず、速やかな公表もされなかったという問題点があったた。この点については、動燃において情報の流通を円滑にし、事故時の通報連絡体制の強化を進めている。また「開かれた動燃」をめざし、分かり易い情報の提供をより速やかに、より適切に行ってゆく。 2. 安全総点検について (1) 安全総点検の考え方 ナトリウムが漏れた原因やナトリウムが漏れたことによる影響の調査などの結果、問題点や教訓が明らかになった。安全総点検は、これらを踏まえ、「もんじゅ」の安全性、信頼性のより一層の向上を図るために行うものである。 具体的には、次の五つの項目を定め点検を行い、それぞれの点検で摘出された改善点については、改善方法についても検討することとした。 1)今回の事故では温度計からナトリウムの漏えいが起きたが、それ以外の配管や機器からのナトリウムの漏えい防止対策、さらに漏えい時の早期検出や拡大を防止し影響を小さくする対策に見落としがないか点検する。(ナトリウム漏えい関連設備を中心とした点検) 2)もんじゅ設備全体について設計当初の基本的考え方に基づいて、その後の詳細設計、製作、試験・検査が一貫性をもって実施されているか、また、ナトリウムに係わる技術については設計の考え方まで遡って点検を行う。 さらに、運転性や保守性の面で、これまで行ってきた試運転の経験が反映されているか点検する。(設備の設計から運用に至るまでの点検) 3)保安規定や運転手順書類が事故の防止、早期収束の観点から運転員にとって分かり易く適切なものとなっているかを点検する。また教育訓練についても、「もんじゅ」の特徴を踏まえてその内容が適切であるかを点検する。(運転手順書等の点検) 4)高速増殖炉の研究開発の成果、常陽を含む国内外の原子力プラントの運転経験などが適切に反映されているか、また、最新の技術基準などに照らして適合しているか点検する。(研究開発成果、技術情報の反映の点検) 5)設計、製作・据付、試験・検査及び試運転に係る品質保証体系、活動が適切であるか点検する。(品質保証体系・活動の点検) (2) 総点検の実施状況 総点検を具体的に進めるための実施計画を科学技術庁原子力安全局に設置された安全性総点検チームや地元自治体などの意見を取り入れて取りまとめた。これに基づき1996年12月に総点検作業を開始した。総点検は、計画や内容についてこれまで同チームの6回のレビューを受け、主に、流れによる振動で壊れるものはないか、2次系ナトリウム配管が健全であるかなどの事例を基に内容を確認しながら進めている。 出典:動力炉・核燃料事業団 出典:動力炉・核燃料事業団 出典:動力炉・核燃料事業団 出典:動力炉・核燃料事業団 出典:高速増殖原型炉もんじゅのナトリウム漏えい事故について 出典:高速増殖原型炉もんじゅのナトリウム漏えい事故について 出典:動力炉・核燃料事業団 <参考資料> ※「もんじゅ」ナトリウム漏洩事故原因究明 流体力による温度計の振動について 動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターシステム開発推進部・技術管理室 以下は展示室で展示物を見ながらの説明である。 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900 下は金属ナトリウムが流れる管のうち、温度計が差し込まれていた部分のレプリカである。管の直径は45cmもある。 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900 下はその拡大写真である。 中央にある穴に温度計が差し込まれていた。温度計が破壊し落下したため、温度計が差し込まれていた穴から冷却剤のナトリウムが長時間にわたり、フロアーに流れ落ちた。その量、640kg±42kg(推定)で、その後火災となった。 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900 以下は「もんじゅ」で使われていた温度計の部分展示である。つなげると相当の長さになるが、これがどう支えられていたかも問題である。 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900 以下は「もんじゅ」2次ナトリウム系温度計である。 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900 下は副所長の説明に聞き入る池田こみち。 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900 つづく |