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若狭湾岸原発銀座視察

もんじゅ2
青山貞一
Teiichi Aoyama
池田こみち Komichi Ikeda

掲載月日:2018年8月
独立系メディア E−wave Tokyo
無断転載禁


 施設・訴訟概要  敦賀原子力館  ふげん  三方五湖
 美浜原子力PRセンター  もんじゅ1  もんじゅ2  もんじゅ3

 温度計破損によるナトリウム漏れ問題をひととおりみた後、次に「もんじゅ」の全体構成を25分の1の模型でみる展示室に入った。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900



ナトリウム配管系統図
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900 


50メガワット 5万KW 蒸気発生器過熱器 試験沈下部の一部
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900


50メガワット 5万KW 蒸気発生器・過熱器 試験沈下部の一部
撮影:池田こみち  Nikon Coolpix S9900


2次冷却系過熱器
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900


蒸気の出入り口
撮影:池田こみち Nikon Coolpix S9900


 以下は「もんじゅ」の全体像を示す模型である。模型を作るだけで数10億円かかっているのではないかと思える代物だ。

 下は「もんじゅ」の全体模型。

 左側のドームが原子炉である。その右側が蒸気発生器であり、右側がタービンである。


もんじゅの全体模型
撮影:池田こみち  Nikon Coolpix S9900

 もんじゅの全体構成型。原子炉格納庫の右側に1次のアルゴンガス系と熱交換器があり、その右に金属ナトリウムを使う2次主冷却系と過熱器と蒸発器が、さらに右側はタービンと発電機がある。


もんじゅの全体構成型
出典:動力炉・核燃料事業団

 以下は上の写真のドーム下側の原子炉部分を拡大したものである。


もんじゅの原子炉部分の模型
撮影:池田こみち  Nikon Coolpix S9900

 下は「もんじゅ」の縮尺25分の1の模型である。6階立ての建屋には膨大な数の配管がある。この配管の複雑さは相当なものである。唖然とした。「配管の化物」と揶揄されているそうだ。たかが電気、ここまでしないとできないのかと、呆然自若である。


撮影:池田こみち  Nikon Coolpix S9900


撮影:青山貞一  Nikon Coolpix S9900

 以下は、「配管の化物」の拡大模型。


撮影:池田こみち  Nikon Coolpix S9900


撮影:池田こみち  Nikon Coolpix S9900


撮影:池田こみち  Nikon Coolix S9900


撮影:池田こみち  Nikon Coolpix S9900

 以下は地震、津波などで全電源を喪失した場合の構造的対応である。


「もんじゅ」の特徴(全電源喪失時)
撮影:池田こみち  Nikon Coolpix S9900

 しかし、地震、津波などで全電源を喪失など以前に、これだけ多くの配管が入り乱れていれば、いつ何時、ちょっとした地震や流体のダウンウォッシュ、ダウンドラフトなど「流体力」によって配管がズレたり、肉厚が減ることによる事故が起きないとはいえないだろう。それが配管が直線的につづく場合はもとより、90度曲がるような場合、生ずる可能性が高まるだろう。

<参考資料>
「もんじゅ」ナトリウム漏洩事故原因究明 流体力による温度計の振動について
  動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターシステム開発推進部・技術管理室

 なんと言っても、これほど複雑な配管だ。全体を常に点検するのはまさに神業で有り、ほとんど無理と思えた。高が、と言っては元も子もないかも知れないが、水を沸騰させてタービンを回して電気をつくるのに、ここまで複雑なことをしなければならない技術は、とうていSmart Technology とは言えない代物である。模型がそれを物語っていた。

 日本には「神業」(かみわざ)という誉め言葉がある。しかし、巨大化、複雑化をたどる技術には、「神業」などありえない。これについては、「もんじゅ3」の最後でまとめたい。


 なお、もんじゅのナトリウム漏れ事故以降の点検漏れはすさまじかった。以下に点検漏れ関連の当時の新聞記事をいくつか示しておこう。

核燃サイクル行き詰まり もんじゅ点検漏れ、理事長辞任
   日経新聞2013/5/18付

 速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の点検漏れ問題は、運営する日本原子力研究開発機構の鈴木篤之理事長の辞任に発展した。核燃料を繰り返し使う核燃料サイクル政策を堅持する政府がトップ交代で事態収拾を図った形だが、相次ぐ不祥事でもんじゅ再稼働はさらに遠のいた。国の原子力政策は抜本的な修正を迫られている。

 鈴木理事長の辞任は、下村博文文部科学相が17日、明らかにした。もんじゅで約1万点の点検漏れが発覚し、原子力規制委員会が15日に運転再開の準備を認めない処分を決めた責任を取った。

 「将来のエネルギー安全保障を考えれば、高速増殖炉は究極の選択肢に変わりはない」。文科省幹部は消費した以上の燃料生産が可能なもんじゅ研究の意義を強調する。

 使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して燃やす高速増殖炉は核燃料サイク
ルの主軸を担う。もんじゅは実験炉、原型炉、実証炉、商用炉と進む開発の第2段階に当たる。もし放棄すれば核燃料サイクルは最終目標を失い、「日本の原子力政策が論理破綻する」(政府関係者)。プルトニウムの最終的な行き場を失うからだ。

 プルトニウムを普通の原発で燃やすプルサーマルは大幅に遅れ、今回の不祥事でもんじゅの再稼働時期はさらに不透明になった。英独はすでに高速増殖炉計画を放棄、米仏も中断している。

 前民主党政権は核のごみを燃やすための焼却炉に改造する案などを示した。ただ、こうした用途転換は核燃料サイクル政策の修正につながる。原子力委員会の大庭三枝前委員は「エネルギー安保だけでは高速増殖炉の意義は説明できない」と指摘する。過去のしがらみにとらわれず、原子力政策を見直す必要がある。



もんじゅ点検漏れ 相次ぎ7回 機構の運営 規制委不安視
  東京新聞 2015年10月19日
  http://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/89

 日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)で、機器の点検漏れが三年前に発覚して以来、新たに七回も漏れが見つかっている。こうした事態に、原子力規制委員会では「このまま機構にもんじゅを委ねていていいのか」との声まで上がり始めている。(大野孝志)

図−「もんじゅ」つぎつぎ見つかる点検漏れ


原子炉心臓部でも不適切な点検
 点検漏れが初めて発覚したのは2012年10月。一万点近くの機器で、定められた点検を怠っていた。機構の鈴木篤之理事長(当時)が規制委事務局に「形式的ミスが出るのはやむを得ない」と、安全軽視と受け取れる発言をしていたことも判明。理事長は引責辞任し、規制委は事実上の運転禁止命令を出した。

 点検漏れはその後も次々に発覚。今年3月の保安検査では、原子炉の心臓部にある最重要な冷却系の配管まで適切に点検していなかったことも判明した。  9月には、三千点の機器の重要性の分類が間違っていたことも分かったが、この際は規制委の担当者が検査内容を事前に通知していたにもかかわらず、機構はどれくらい分類ミスがあるのか答えられなかった。このため規制委は適切に事実関係を調べて報告するよう異例の命令を出した。

 疑念は、所管する文部科学省のあり方にも向けられた。同省は規制委に対し二度、再発防止に向け「最大限の対応をする」と回答したものの、一向に点検漏れは止まらない。規制委は月内に担当局長を呼び、どんな指導をしているのか聴取する予定だ。

 田中俊一委員長は14日の規制委定例会合で「もんじゅを機構に委ねているのが妥当なのかを含め、文科省に認識を聴きたい」と発言した。

 ただ、研究段階で特殊な構造のもんじゅは、度重なる事故でほとんど動いたこともない。機構以外に扱える組織があるのかという現実問題もある。同日の記者会見で、田中氏に他に委ねる組織があるのか問うと、「申し上げる立場になく、分からない」と答えるにとどまった。

 政府はもんじゅを存続させる方針。規制委がどこまで毅然(きぜん)とした姿勢で対応できるのか、真価が問われる場面もありそうだ。



また点検漏れ 警告、3カ月見過ごし
  毎日新聞2016年7月23日 01時19分(最終更新 7月23日 01時19分)
  https://mainichi.jp/articles/20160723/k00/00m/040/132000c

 多数の機器点検漏れなどの不祥事が発覚した日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で、今年3月末までに行う予定だった機器の点検が実施されず、3カ月間にわたり、未点検であることを知らせる警告を見過ごしていたことが22日発覚した。警告システムは一連の不祥事発覚後に導入されたが、結果的にはミス防止につながっておらず、原子力規制委員会は原因を調べるよう原子力機構に指示した。

  原子力機構によると、点検漏れがあったのは冷却材のナトリウムの温度を管理する「1次補助系余熱制御盤」。規定では5月末が点検期限だったが、余裕をみて3月末までに点検する計画を立てていた。2月末ごろ、未点検を通知する保守管理システムの警告がパソコン画面に表示されたが、5月27日までの3カ月間見過ごしていた。点検は同31日までに終えたとしている。

  もんじゅでは多数の点検漏れなどが相次いだため、規制委から事実上の運転禁止命令を受けている。規制委は文部科学省に対し、原子力機構の交代を勧告しており、文科省が新運営主体の検討を進めている。【阿部周一】


つづく